『婚活1000本ノック』

女性の最優先事項は結婚? 「自分なりの幸せのカタチ」を追い求めるドラマ『婚活1000本ノック』 1話

ドラマ『婚活1000本ノック』(フジ系)は、お笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴が主演し、ダンスボーカルグループ「FANTASTICS from EXILE TRIBE」の八木勇征がバディ役を務める、婚活ラブコメディー。33歳独身・南綾子(福田)の婚活を、幽霊になってしまった山田クソ男(八木)がサポートする。第1話では、「自分自身の幸せとは何か?」を考えた綾子が、本気で婚活に向けて舵を切る様子が描かれた。
【イラストで見る】ドラマ『婚活1000本ノック』 相手に求めるのは「外見」か「中身」か。恋愛と結婚の尺度は違う? 『婚活1000本ノック』2話

この世にはさまざまな“クソ男”がいる?

マッチングアプリをとおして出会ったということは、お互いに恋愛に対して真剣だということ。少なくとも、付き合ったり結婚したりする相手を探している最中なのは間違いない。それでも、思わず“クソ男”と呼んでしまいたくなるような相手に出会うことがある――。

本作の主人公・綾子も、本気の婚活をとおしてさまざまな“クソ男”に遭遇するのだろうか。綾子が婚活に踏み切った理由。それは、彼女の中で「2023年のクソ男・オブ・ザ・イヤー」に輝いた山田に捨てられたことがきっかけだった。

クリスマスパーティーで知り合った年下のイケメン医師・山田功宗(クソ男)。国立大を卒業し、整形外科医である山田を前に、売れない小説家でアルバイトもしている綾子は、判断力も洞察力も自制心も半分以下になった。その結果、早々に身体の関係をもったものの、年明けを前に連絡が返ってこなくなってしまう。

彼は綾子のほかにも女性と関係していて、かつ、そのルーズさゆえに「裏切られた」と刺され、帰らぬ人となっていたのだ。

1年以内に、綾子と交わした約束である「彼氏と温泉旅行にいく!」を果たさないと、山田は成仏できない。それどころか、虫に転生してしまうらしい。売れっ子作家・九本凛(関水渚)に、いい年をして真剣に好きだと言ってくれる人がいない時点で「見た目に関係なくブス確定!」と人格否定されたことも、綾子の婚活魂に火をつけた。自分の幸せを追い求めるため、ともに愛し合える人を見つけるため、綾子は婚活に精を出し始める。

綾子から“クソ男”を見極める婚活サポート役に任命された山田。最初こそ「絶対めんどくさいじゃん!」と駄々をこねていたが、せっせと出会いを探す綾子のために、男性側の情報収集をしているシーンもみられた。名婚活コンビの誕生か?

恋愛価値観の正解・不正解

本気の婚活に踏み出した綾子のため、友人の韓国料理屋店長・鳥羽(中越典子)は、とあるイベントを紹介する。独身の男女がパンを食べながらおしゃべりをする会だ。そこで、綾子は24歳で飲食店を経営している“ハト男”こと野村(白濱亜嵐)と知り合った。

初対面から、冷静さのなかにも熱が垣間見えるようなアピールをしてきた野村。しかし、彼が経営しているカフェに呼ばれて足を運んだ綾子の前には、野村の“ほかのパートナーたち”が……。いわゆるポリアモリー(複数恋愛主義)の考えのもと、野村は世代別に複数の女性と関係を築いていたのだ。綾子にも、“30代前半担当”のパートナーになってほしい、と打診する。

「恋愛で競い合ったり、誰かを蹴落としたり、そういうのでメンタルやられるのって建設的じゃないなあって思ってて……」。野村は、そう口にする。当の女性側も、全員が野村と同じ考えだった。「固定概念にとらわれない恋愛のカタチがあってもいい」「結婚願望はないけど、一人はさみしいし、でも束縛もされたくない」などと、それぞれの恋愛観がつまびらかにされる。

あなたは、どう思うだろう? 私だけを愛してくれないなんて、それは恋愛ではない、と思うだろうか。それとも、従来の価値観にとらわれない自由さを、魅力に感じるだろうか。

ここで、野村のことを“クソ男”に分類するのは、まだ早い。ポリアモリーの考え方は、おそらく少数派だと思う。頭では理解できても受け入れられない、と考える人もいるだろう。

しかし、数の多い・少ないが、そのまま正解・不正解に繋がるとは限らない。時代によっては「互いに一人の人を愛し続ける」という恋愛観のほうが、間違っているとされる可能性もあるのだから。

山田も「いろんな愛のカタチがあってよくて、彼は勇気を出して自分の恋愛論を打ち明けてくれたんだと思うよ」とフラットな見方を示している。「けど、あれは私の幸せじゃない」と再確認した綾子も含めて、恋愛には正解も不正解もないのかもしれない。

「生き方」を見極め、スタートした婚活

本作は「婚活ラブコメディー」だ。やはり女性にとっての最優先事項は結婚で、人生における幸せは「最期まで添い遂げる人を見つけ、ともに暮らすこと」であると、打ち出すドラマなのかもしれない……。正直に言って、1話の視聴前はそんなふうに考えていた。

しかし、一人では生きていきたくない、誰かと一緒にいたい、と願う綾子は、「自分にとっての幸せとは何なのか?」を見極めたうえで婚活を始めている。綾子の友人であるおけけ(橋本マナミ)も「私は私の意思で、恋愛のない生き方を選んだの」と言っているとおり、恋愛や結婚にとらわれない、「推し活」という彼女なりの幸せの満たし方をハッキリさせている。

本作は、単なる婚活万歳ドラマではない。自分なりの幸せのカタチを追い求めるドラマだ。

一人寂しく生きている主人公が、恋愛によって救済されるストーリーに、私たちは飽きているはず。どうか「婚活」をとおして、恋愛や結婚だけに重きを置かない幸せのカタチを、そして、それを追いかける過程を見せてほしい。

【イラストで見る】ドラマ『婚活1000本ノック』 相手に求めるのは「外見」か「中身」か。恋愛と結婚の尺度は違う? 『婚活1000本ノック』2話

『婚活1000本ノック』

フジ系水曜22時~
出演:福田麻貴(3時のヒロイン)、八木勇征、関水渚、野村周平、白河れい、橋本マナミ、中越典子ほか
原作:南綾子
脚本:ニシオカ・ト・ニール、松本美弥子、山岡潤平、藤平久子
主題歌:水曜日のカンパネラ『幽霊と作家』
プロデュース:羽鳥健一、矢ノ口真実、髙石明彦
演出:田中亮、西岡和宏、 吉野主

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。
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