三浦透子さん、「悩む時間ってすごくいい。確実に先に進んでいるから」
30歳という年齢に思うことは…
──映画で演じられた佳純は30歳でした。三浦さんは26歳のいま、30歳という年齢をどう見ていますか。
三浦透子さん(以下、三浦): 意識していないというのが正直なところですね。30歳になるのがどういうことか、まだわからないんです。
「30歳までに結婚した方がいい」や「子どもがいないと遅い」などと言われることもあるのかもしれません。でも私は、女性にも男性にも「あなたの属性だと、“普通”こうですよね」みたいな考えは持ちたくないし、持たれたくもありません。
そんな私ですが、26歳の誕生日から5年日記を書き始めたんですよ。書き終えたときは、ちょうど30歳。30歳が何なのかを私はわかっていませんが、「30歳まで書けるんだ」と思ったことで、日記を始めるきっかけになりました。30歳って、そう思うような年齢ではあるんですよね。
ただ、いままで日記を一回も続けられたことがないので、書き終えられるかはわかりませんが(笑)。
恋愛はすてきなもの?
──恋愛に対するさまざまな価値観が描かれた本作で、アセクシャル(無性愛者)の役を演じられました。
三浦: 撮影前に、アセクシャルの方のお話を聞く機会を設けていただいて。そのときに印象的だったのが、「とにかく信じてもらえない」と、おっしゃっていたこと。
恋愛感情がないとカミングアウトをしても、「まだ好きな人に出会っていないだけ」とか「これから恋愛できるようになるよ」と言われてしまう。わかっていたつもりでも、実際にお話を聞いて、その切実さを知ることができました。
──恋愛に何よりも重きを置く恋愛至上主義については、どう思われますか。
三浦: “恋愛はすてきなもので、人生が豊かになる”と思っている人のことを、否定するつもりはもちろんありません。でも私は違う考え方もあると思う。だから私は恋愛を重視していない人たちのことをすごく自然に受け入れられると思います。演じた佳純が悩んだり葛藤したりしていることに、共感できました。
属性から紐解こうとしない!
──演じるうえで大切にされていることがあれば、教えてください。
三浦: ラベルを貼って捉えないことです。例えば、アセクシャルであることは、その人の一部ではあるけれど、すべてではない。だから、どんな役柄であっても属性から紐解こうとせずに、その人自身をちゃんと見ようと思っています。
結局、大事なのはコミュニケーションだなって。その人の言葉を聞いたり、知ったりすることでしかわからない部分がありますから。対面でも脚本の文章からでも、コミュニケーションという意味では、大きな違いはないように思います。
──まっすぐにフラットに日々を邁進している三浦さん。20代後半から40代前半のtelling,読者の中には、「やりたいことがあるけど、一歩踏み出せない」「好きなことが見つからない」という悩みを抱えた人もいます。
三浦: 私は、悩む時間ってすごくいいと思っているんです。悩めるっていうのは、悩んでいないときよりも確実に先に進んでいますから。
悩んでいるときは苦しいから、「そんな風に言われても」と思うかもしれませんが、せっかくなので、悩んでいるときにしか考えられないことを、たくさん考えてみるのはどうでしょうか。私はそう思うようにしていますね。
●三浦透子(みうら・とうこ)さんのプロフィール
1996年生まれ、北海道出身。5歳の時にSUNTORY「なっちゃん」のCMでデビュー。その後、映画やドラマなどで女優として活躍。ヒロインを務めた映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)はアカデミー賞国際長編映画賞に選ばれ、話題を呼んだ。その後もNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(2021)や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「エルピス−希望、あるいは災い−」(カンテレ制作・フジ系)など話題作へ出演。
■そばかす
監督:玉田真也
企画・原作・脚本:アサダアツシ
出演:三浦透子、前田敦子、伊藤万理華、伊島空、前原滉、前原瑞樹、浅野千鶴、北村匠海(友情出演)、田島令子、坂井真紀、三宅弘城ほか
©2022「そばかす」製作委員会