Charaさん、久しぶりの演技も「勝手に役になれるような空間づくりをしてくださっていた」

9月14日(水)にディズニープラス「スター」で独占配信が開始されたドラマ『すべて忘れてしまうから』で、ミュージシャンのCharaさんが、26年ぶりの演技に挑戦します。久しぶりの撮影現場で感じた思いなどについて聞きました。
Charaさん、「私の仕事はCharaでいること」 【画像】Charaさんの撮り下ろし写真

――映画「スワロウテイル」(1996年)以来、26年ぶりの俳優活動となります。なぜ、この作品に出演しようと思ったのですか?

Chara: 「いつものCharaさんのままでいい」と監督やプロデューサーに言われまして、軽い気持ちで参加できるニュアンスを感じたし、音楽の扱われ方も特殊なようだったし。

クリエイティブな仕事という意味では同じ

――原作は燃え殻さんの同名エッセイです。

Chara: 実は撮影が始まる前に、原作はちょっとだけしか読まなかった。それは脚本と全然違ってたから、読まなくていいかなと勝手に思ったんですよ。監督は脚本も担当していて、私のスタンスは映画とかだと、とにかく監督の指示に従いたいっていう、それが割と絶対。今回のドラマも、そんな感じで参加させてもらいました。
読まない方がいいというのは、脚本と原作が大きく違うと、意識しちゃうから。以前の岩井俊二監督のときの経験があって、彼は絵コンテがすごい。漫画になってて、明確に意識するしかなかった。だから、意識するものがない方がいいかなと。現場で台詞が変更になることもあるしね。

――今回は主人公行きつけの「Bar 灯台」のオーナーのカオル役です。実際の出演までに葛藤などありましたか?

Chara: ないない。そんなストレスあったらできないよ。音楽畑と映像畑で違うとはいえ、私は日々、色んな人と共演や共作をしていて、クリエイティブな仕事という意味では同じだから。ドラマは今回、初だったんだけど、映画とどう違うかはわからなかった。今回はフィルム使っての撮影だったので、「映画的じゃん」って感じてはいたんですけど。

こだわりのセットも素晴らしいよね。私はほとんどBar灯台のカウンターの中にしかいない人だから。事前に「Bar灯台のセットできたんで、見ますか?」って言ってくださって見たら、重々しいちゃんとした木が素敵で。アンティークっていうほどではないけどテイストもいいと感じて、店内にはステージもあるし。役を演じるのではなくて、セットの中に入るだけで、オーナー・カオルに勝手になれるような空間づくりをしてくださっていた。

余計なことはやんない方がいい

――今回のドラマは、Bar灯台に姿を見せたミステリー作家“M”の恋人“F”が突然、失踪。“F”を探し始める“M”ですが、“F”の交友関係や仕事上の悩みなどを知らず、なぜ突然、消えてしまったのか皆目わからないという内容です。主人公のミステリー作家“M”を演じたのは阿部寛さんです。印象はいかがですか。

Chara: 阿部寛さんは人気の作品にたくさん出てらして、世代がまあまあ近くて、かっこいい。事前に友達の女優さんに聞いてみても「いい人だよ、すてきな人だよ」って感じで。だから、もう安心していました。ほかも経験のあるプロの方々ばかりだから、迷惑かけられないなと思ったりして、Charaは新人に近いというか、久しぶりだから。
でも「そのままでいいよ」って言われたから、特に意識することもなく――。監督や編集とか音声さんとか色々なプロの方々がいて、上手くできるようにしてくれるのよ。だから私は余計なことはやんない方がいいんです。

――今作の監督・脚本は岨手由貴子、沖田修一、大江崇允という映画界注目の3人。中でも岨手監督は、映画『あのこは貴族』で、見えにくい日本社会の階層や格差を描いて話題になりました。

Chara: 岨手監督は自分の撮りたいイメージが、明確に頭にある。私も音楽では「フレーズ、これが絶対いい」「この音、やりたい」っていうのがあるときは、ちゃんとお伝えするから。私のそんな感覚に近いのかな。わからないところは聞いたり、逆にドラマ内での音楽的なことには「私はこう思う」って意見を言わせてもらったりして。
現場がスムーズにいくようにも意識が向いたんだけど、それってミュージシャンとしての自分が参加しているという側面が強く出たからですかね。

声が小さくても…

――Charaさんは今回、ナレーションも担当されています

Chara: そうなんですよ。最初にナレーションのお話があって。そういうの好きで、やりたいけど、声が先方の思っている声かどうかわからなかった。だから「結構、声小さいですよ」とか言ったのだけど、「舞台じゃないから、そんなに必要ないです」って返ってきました。

このドラマ自体が独特のミステリアスな設定もあるけど、単純なラブストーリーではない展開もあって……。原作のファンは「これ、どういう風に映像にするんだろう」って思うだろうけど、それは見てくださいっていうことで。

Charaさん、「私の仕事はCharaでいること」 【画像】Charaさんの撮り下ろし写真

●Charaさんのプロフィール

1991年、シングル「Heaven」でミュージシャンとしてデビュー。95年、『PICNIC』で、初の映画出演。96年公開の映画『スワロウテイル』では、日本アカデミー賞主演女優優秀賞を受け、テーマソングの「Swallowtail Butterfly〜あいのうた」は大ヒット。2022年11月1日にニューシングル「A・O・U」をリリースする。
◆ヘアメイク:杉田和人(POOL)
◆スタイリスト:山本マナ

『すべて忘れてしまうから』

原作:燃え殻『すべて忘れてしまうから』(扶桑社刊、新潮文庫刊)
配信:ディズニープラス「スター」で独占配信中
監督・脚本:岨手由貴子、沖田修一、大江崇允
出演:阿部寛、尾野真千子、宮藤官九郎、酒井美紀、渡辺大知、見栄晴、鳴海唯、青木柚、大島優子、渡辺いっけい、Chara
©Moegara,FUSOSHA 2020

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。