ノートで学ぶマネーの「常識」

FP fumicoの“Live colorfully”#25 キャッシュフローで将来を“見える化”

「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で、20~30代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさん。お金に対する苦手意識を克服する方法や、ちょっとした工夫などをfumicoさんのインスタでお馴染みの手書きのノートでお届けする、25回目です。2022年も後半に突入しました。月日が経つのは早いからこそ、将来を“見える化”する必要があります。
FP fumicoの“Live colorfully”#24 作ってみよう! あなたのB/S&P/L

価値観と生き方は多様化、だからこそ…

かつては○○歳までに結婚し、●●歳で子どもを授かり、その数年後にマイホームを購入する――といったライフイベントの“モデル”が共有されていました。
しかし現在は、価値観の多様化や社会構造の変化などで、働き方も、結婚や家族の在り方についての考えも人によって異なります。それぞれが様々な選択肢から生き方を選ぶようになったからこそ、ご自身のキャッシュフロー表(C/F)を作る必要があると私は考えています。

しかも10年後であれば、ご自身の将来について想像することは容易いですが、20年後、30年後となれば……。その時点で働いているかリタイアしているか、といった漠然としたイメージはあっても、ご自身のお金(資産)について考えておられる方は少ないでしょう。だからこそC/F。これを作れば、少なくとも将来のお金に関しては“見える化”できます。
先のお金の状態が把握できれば、毎月の貯金の目標額やマイカーなどの購入の計画を立てることが可能になります。一方、現在の状態を続ければ、お金が底を突くことが早期に把握できる場合も。

そのC/Fは、Excelやスプレッドシートなどの表計算ソフトで作れば便利です。

金融資産残高がマイナスはNG!

続いて実際のC/Fの見方です。大事なのは単年度赤字を過度に気にしないこと。単年度赤字であっても、金融資産残高がプラスなら心配はいりません。
マイホームやマイカーの購入の頭金などの大きな支出や、住宅ローンの繰り上げ返済をした年に赤字になり、金融資産残高から取り崩すのは致し方ない。しかし、金融資産残高がマイナスになるのは絶対にNG。お金が底を突く、つまり家計が破綻寸前ということを意味しますから。

「さすがに家計が破綻寸前になる状態は、察知できるのでは?」と思う方がいらっしゃるかと思いますが、無計画にライフイベントを行えば簡単に危険水域に達します。たとえば都心で新築のタワーマンションを買った上に、新車に乗り換えたりなどしたら10年後のキャッシュフロー表で、金融資産残高がマイナスになることは十分に有り得ます。
逆に言えばC/Fを作ることで「マイナスになるから、車の買い替えを〇年遅らせよう」とか「都心ではなく郊外の一戸建てを買おう」といった計画的な選択が行えるようにもなるのです。

収入を増やすか、支出を減らすか

赤字が続くことや、金融資産残高がマイナスになることを避けるためには、収入を増やしたり、支出を減らしたりすることも有効です。

ただ、日本経済が右肩上がりの時代が終わり、企業も人件費は抑制傾向。定期的な昇給で必ずしも収入が増えるとは限りません。

収入増のために、ご自身でできる方策は転職や副業をしたり、退職時期をずらしたりすることなどです。後者は、たとえば子どもを産んだら会社を辞めようと思っているけど、仕事を続けたい気持ちも少しはある、という場合の退職時期。即断はせず、産休や育休を取得し、その期間にゆっくり考えればいいと私は思います。

支出減については前回、詳しくご説明しましたので、そちらを参考にしてくださいね。

ざっくりでいい、大事なのは“始めること”

C/Fも、前回のB/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)同様、しっかりしたモノでなくていいので、作ってみることが大事。完璧を目指すと、それぞれに正確な金額を算出することに手間がかかり、途中で「やめた」となりかねない。だから、最初はざっくりでいいのです。
給料はとりあえず現状維持にしたり、既に半年分のP/Lを作っているなら、それをざっくり倍にして1年分にしてみたりといったように――。そして状況に応じてブラッシュアップしていけば、問題はありません。
注意を1点だけ。人はつい明るい未来を想像しがち。過度に楽観的に作らないようにはしてくださいね。

しかもC/Fは、ご自身の将来をイメージするためのものなので一度、作れば定期的かつ頻繁に更新する必要はありません。見直すのは長期に影響を及ぼす病気やケガ、転職、あるいは結婚・離婚といった大きなライフイベントが起きた時で構いません。

私自身、まだCFPの資格を取得していなかった10年前、マンションを購入するにあたって「何となく心配」な状態になり、FPさんにExcelでC/Fを作ってもらったことがあります。担当の方に働き方や日々の生活を伝えると、退職金の目安や、給与の推移、そして将来とその過程の私と家族の金融資産残高などを示してもらったのです。結果、お金の流れが悪くなったり、すっからかんになったりするのでは、との懸念を払拭できました。

C/Fは非常に重要ですので、まずはご自身で簡易的に作ってみてください。そのうえで、困ったり心配になったりしたら専門家に相談したらいいですよ。

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FP fumicoの“Live colorfully”は、第2・第4金曜に公開の予定です。

FP fumicoの“Live colorfully”#24 作ってみよう! あなたのB/S&P/L
CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。