峯岸みなみさん「”アイドル”という枠を取っ払えた気がします」 憧れた舞台『ロッキー・ホラー・ショー』出演

1973年に上演された狂宴を描いた人気ロックミュージカルのリメイク、パルコ・プロデュース2022『ロッキー・ホラー・ショー』の公演が12日から、東京・PARCO劇場で始まりました。妖艶な城の主フランク・フルター(古田新太さん)の使用人・コロンビアを演じるのは、昨年AKB48を卒業したタレントの峯岸みなみさん。この作品をどのように演じているのか、どんな見どころがあるのか、峯岸さんに聞きました。
【画像】峯岸みなみさん 峯岸みなみさんの原動力は“コンプレックス”「この顔だからこそ、頑張れたことがたくさんあった」

AKB48時代の感覚が役に立っている

――恩師に結婚報告をしに行く道中で嵐に遭い、近くにあった古城を訪ねるブラッド(小池徹平さん)とジャネット(昆夏美さん)。そこで目の当たりにするのが、ボンテージ姿のフランク・フルターという城の主と、召使たちがパーティーをしている様子。パーティーでは、人造人間のロッキーがお披露目されたり、城の主・フルターがブラッドとジャネット双方に性的な関係迫ったりする――。物語は混沌としています。

峯岸みなみさん: 私、たまたま2017年の『ロッキー・ホラー・ショー』を観ていたんです。古田さんのビジュアルを見て、面白そうだなと思って。これまで様々なお芝居を観てきましたが、ここまでお客さんと一体になってライブのように楽しめる演劇ってなかなかないと思います。

とにかく音楽が、印象的なものばかりなんですよね。コロナ下だから歓声は禁止されていますが、曲のイントロで会場が熱気に包まれたり、拍手が湧いたりするんですよ。映画版と同じ音楽を使っているし、今までの舞台を観られているリピーターの方も多いので、アドリブを楽しみにしてくださっている感じが客席から伝わってくるんです。声を出せなくても、笑い声が漏れ聞こえてくるのがうれしくて。本番が始まって、とても楽しめています。

――これまでの舞台とは違うのですね。

峯岸: 舞台はライブと違って“一方的に見せる・表現する”ものだと思っていました。だから「完成されたものを見せなきゃいけない」というプレッシャーがあったんです。
でも、今回の作品はお客さんと一体になれるような“ライブ感”がすごくあって。
AKB48時代のコンサートや秋葉原の劇場に立っていた時の感覚が役に立っている気がします。この作品は今までに体感したことがない、お芝居とライブの間のエンタメですね。

「峯岸みなみ、どれ?」が最大のほめ言葉

――峯岸さんは2017年に観劇した際、ご自身のInstagramに「私もいつか、あんなかっこいい大人の一員になりたいなぁ」と綴っていました。

峯岸: 当時は25歳で、自分に自信が持てていなかったし、今後の人生について悩んでいた時期。そんな時に『ロッキー・ホラー・ショー』を観て、第一線で活躍されている俳優さんたちがディープな世界の中で、とにかく楽しそうに歌って踊っている姿に「本気で楽しんでる人って、なんてかっこいいんだ」ってしびれました。

だから5年後の今、自分が演者側に立っていることがすごくうれしいんです。特に今、コロナ禍で気分が落ちることがあるじゃないですか。悩んでいる方に対して、楽しい刺激を届けられるなんて感慨深い。あの時の葛藤も、無駄じゃなかったんだなって。

――峯岸さんは16年間AKB48に所属し、昨年5月に卒業されました。今回の舞台は性的な表現も多く、イメージとは真逆の方向に振り切っています。

峯岸: 人間なら誰しもが持っている性的な欲望や汚い部分を、アイドルという立場で表現することってないじゃないですか。

だから、そういったものを表現する今回の舞台では、稽古の段階で「私、半年前まではアイドルだったのに、ここまでして大丈夫かな?」って不安になることもありました(笑)。でも「恥を捨て、全てをさらけ出せ」みたいな稽古場の空気感に段々と慣れてきて。今までやってきた”アイドル”という枠を取っ払えた気がします。

これまでの自分とはあまりにもかけ離れているから、「そういえば峯岸みなみ出てたらしいけど、どれ?」って言ってもらえるのが、最大のほめ言葉ですね。

意味がわからなくても、ただ楽しんでほしい

――映画版は「伝説のカルト映画」などと表現されるほど有名です。

峯岸: 映画を見たのは最近なんです。2017年に観劇した当時は「すごい変な作品だな」って感覚があって、映画を見たときにも「ちゃんと変だな」って思ったことを覚えています(笑)。

ストーリーはめちゃくちゃだけど、かっこいい音楽があるからまとまっている。今回の舞台はキャストもスタッフも映画愛が強い人が多いので、映画版のファンも心から楽しめる作品になっているはずです。

ただ、私が演じるコロンビアに関しては、映画と結構違うかもしれません。舞台のコロンビアはキャラクターっぽくて、より“おバカ”な感じ。これまでの流れを受け継ぎつつも、自分なりのコロンビアを演じています。映画のファンの方々に受け入れてもらえるか、少しだけ不安もありますね。

――主役のフランク・フルターは、「トランスセクシャル星(性別のない星)」から来た「トランスヴェスタイト(異性装者)」という設定。登場人物が性別に関わらず網タイツをはいたり、性に奔放になっていったりします。この作品からどんなメッセージを受け取ってほしいですか?

峯岸: 現代って、多様性の時代じゃないですか。互いに尊重して誰もが暮らしやすい世界になっていくのは、とってもいいこと。でも、敏感になりすぎて、腫れ物に触るような感覚になってしまっている場面も少なからずあると思っていて。

この作品には、時代にそぐわないような表現もたくさん出てきますが、セクシャリティに関してすごくポジティブ。本当の意味で性別に囚われない世界って、こうなのかもしれないな、と。男も女もそうじゃない人も、自分らしく好きなように生きちゃおう!これに尽きると思います。

――解釈や考察をするというよりは、感じるままに楽しむのがよさそうですね。

峯岸: 私、結構エゴサーチしていて、公演が終わったらすぐにSNSを見ちゃうんです。すると、「まったく意味が分からなかったけど、楽しかった」っていう感想がたくさんあって。他の作品だったら「伝わらなかったんだな」とか「真剣に芝居してるのにな」って落ち込んだかもしれませんが、この作品に関しては、その感想が一番うれしいんですよね。何も分からなくても、ただただ楽しければ、それでいいかなって。

【画像】峯岸みなみさん 峯岸みなみさんの原動力は“コンプレックス”「この顔だからこそ、頑張れたことがたくさんあった」

●峯岸みなみさんのプロフィール

1992年、東京都生まれ。2005年「AKB48オープニングメンバーオーディション」に合格し、13歳で1期生としてデビュー。21年5月にAKB48を卒業した。主な出演はバラエティー番組のほか、映画「女子高」(16年)や舞台「三文オペラ」(18年)など。

パルコ・プロデュース2022『ロッキー・ホラー・ショー』

公演:PARCO劇場で、2月12日(土)~28日(月)
脚本・作詞・作曲:リチャード・オブライエン
演出:河原雅彦
訳詞・音楽監督:ROLLY
振付:MIKEY(from 東京ゲゲゲイ)
出演:古田新太、小池徹平、ISSA、昆夏美、フランク莉奈、峯岸みなみ、東京ゲゲゲイ、TACCHI、GENTA、P→★、UFO、武田真治、ROLLY、岡本健一

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。

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