自然派スイーツにこだわる「ショウダイビオナチュール」の哲学
●わたしと未来のつなぎ方 19
オーガニック素材の使用率まできちんと表示
パッと心が華やぐ、花びらのようなチョコレート。カラフルでありながら、人工色素や人工香料、人工甘味料、トランス脂肪酸、保存料は一切不使用。安心して口にできるのがうれしい。そんな「ミルティペタル」シリーズをはじめとするさまざまなスイーツを、オーガニック素材や自然由来素材、フェアトレード素材にこだわりながらつくり続けているのが、福岡を拠点に全国に7店舗を展開する「ショウダイビオナチュール」。それぞれのお菓子のプライスカード(値札)には、アレルギー情報だけでなく、「bio80%」といった具合にオーガニック素材の使用率までオリジナルのアイコンで表示されていて、食の安全やトレーサビリティ(栽培から流通までの過程をさかのぼって追跡できること)への配慮が徹底されている。
「どのお菓子がどのくらいオーガニックなのかをきちんと明示したうえで、お客さまに選んでいただけたらいいかなと。オーガニックでありながら特に認定は受けていない素材を使用することも多いので、実際のオーガニック使用率は、ここに書かれているパーセンテージより少し高いです」
そう教えてくれたのは、「ショウダイビオナチュール」の生みの親である、シェフパティシエの小代智紀さん。フランスで研鑽(けんさん)を積み、KIHACHI創業者の熊谷喜八さんに師事するなど、さまざまな経験をへて、2017年12月に「ショウダイビオナチュール」をオープンした。
身体に優しい素材を選ぶのは、食を提供する人の責任
今でこそ自然派の素材にこだわる小代さんだけれど、キャリアをスタートした頃は、生産者も消費者も、食にまつわる意識がそこまで高くなかった時代。小代さん自身、添加物などを気にかけることもなかったそう。考え方が変わるに至ったきっかけのひとつが、お子さんのアトピー性皮膚炎だった。
「症状がかなりひどかったのですが、アレルギー検査をしても、特にひっかかるものがなくて。原因を探りながら、日々の食事を素材から見直していったら、半年くらいでよくなったんですよ。その頃から、遺伝子組み換え作物やトランス脂肪酸、添加物のことなどが気になるようになりました」
また、今から10年ほど前にジェラート専門店を開いた頃は、フルーツや野菜の生産者のもとを自ら視察するようになり、その経験も背中を押すことに。
「多くの方は、農薬や化学肥料を収穫までに何度も使うわけです。やっぱり完全に薬品を使わない栽培って本当に手間がかかるし、大変ですから。でも、自分はできるだけ無農薬で有機肥料のものを使いたいなと思うようになりました。結局のところ、人間は自分が食べたものでできている。ならば、身体に優しい素材を選ぶのは、食を提供する者の責任なんじゃないかと感じたんですよね」
開発まで10年! こだわりの看板商品
それからオーガニックやフェアトレードについて本腰を入れて学び始め、安心・安全にこだわったスイーツづくりのノウハウを研究。看板アイテムの「ミルティペタル」は、なんと完成までに10年もの月日を要した。
「以前、フランスの友人のシェフがつくっているのを見て、衝撃を受けて。自分もつくってみたい!と思ったものの、理想の形にたどり着くまでには試行錯誤が必要でした。しかも、人工的な色素や香料を使わずに天然素材にこだわるとなると、なかなか思うような色や味わいにならなくて、大変でしたね」
そんな苦労のかいあって、「ミルティペタル」は大ヒット。ほぼ毎月種類が変わる「パウンドケイク」やカラフルな季節の「マカロン」など、小代さんのスイーツはどれももちろん自然派でありながら、華やかなルックスとしっかりエッジの効いた美味しさで、多くのファンの心をとりこにしている。
安心・安全な食への一票が、やがては地球環境を救う
福岡の本店ではこうしたスイーツのほか、無農薬野菜や厳選した調味料、飲料などを販売している。ときには、地元のお母さんたち向けに食の安全について語る教室も開いているそう。「食の安全について、より多くの人に意識してほしい」という小代さんのまっすぐな思いが伝わってくる。
毎日の食事にできるだけ安心、安全なものを選びたいと思う気持ちは、私たち消費者全員にとっても同じこと。今すぐ気軽に始められることについて質問してみると、こんな答えが返ってきた。
「買い物をするときは、原材料表示をチェックして、自分が安心できるものを選ぶといいと思います。買い物ってね、投票なんですよ。私たち一人ひとりが身体に優しいものを選ぶようになれば、おのずと安心・安全なものを生み出す企業だけが残り、食にまつわる有害物質で土壌や海が汚れることもなくなっていくから、結果的に地球環境もよくなっていくんです」
とはいえ、無理をすることはないですよ、と笑顔で続ける。
「頑張りすぎると疲れてしまって続かなくなるし、できなかったときに自分を責めるようになってしまう。でも、そんな必要はまったくないんです。なぜなら、食事は楽しむものだから。週に1回だけオーガニックなものを取り入れてみるとか、余裕があるときだけとか、自分なりのやり方でいいと思いますよ」
いつもの食事のなかでちょっとだけいいものを選ぶのは、気分がいいし、何より美味しくてうれしいものだ。自分の目で見て、よく考えて、「一票」を投じる。あなたも、そんなライフスタイルを意識してみてはいかがだろうか。
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Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi