芳根京子さん「想像以上につらい撮影、演じていて自然と涙」11日公開『ファーストラヴ』

女子大生による父親殺しの謎を描いた映画『ファーストラヴ』(堤幸彦監督)が11日、TOHOシネマズ新宿などで全国公開されます。容疑者の聖山環菜を演じたのは芳根京子さん(23)。北川景子さん演じる主人公の公認心理士・真壁由紀との交流を通じて、環菜の過去が解き明かされていく物語です。環菜への思いや、久々の共演となった北川さんとの撮影時のエピソードなどについて、芳根さんに聞きました。

重要な役に、プレッシャー感じた

――脚本を読んで、どのように感じましたか。

芳根京子さん(以下、芳根) :最初は、こんなに素敵なキャストの皆さんの中で、重要な役として堤さんの作品に出演させてもらえるのが嬉しくて、「やったー!」と思いました。
でも、2回目に脚本を読んだときに、「この役、自分がやるのか」って感じました。さらに原作を読んで、「どうしよう」と(笑)。
もちろん主人公は真壁先生だけど、環菜をどう演じるかによって、作品の色が決まる。すごくプレッシャーを感じましたね。

――幼い頃に両親によって、つらい経験をさせられた環菜。父への殺害容疑で逮捕された後、環菜を取材する公認心理師の真壁と面会を重ねる中で、供述を二転三転させます。環菜の人物像はどう捉えていますか?

芳根 :堤監督とは「ちょっと怖くて、違和感があって、人をゾクッとさせるような子にしよう」と話していて。相談しながら、撮影に臨みました。
環菜の“素”というか、本当の感情が出ているシーンを探したり、「幼少期、もしも親から愛情をもらっていたら、どういう子になっていたんだろう」と考えてみたりしました。でも、彼女のことは、最後まで本当にわからなかった。その「わからなさ」に、みんなが翻弄されるわけだから、「その感覚は正しいのかな」とも思いました。

自分の中から感情があふれて

――芳根さんはお母さんとすごく仲が良いそうですが、環菜との共通点はありましたか?

芳根 :いつも自分がやる役との共通点を探すのですが、今回は全然見つからなかったですね。環菜は親からの愛情を十分にもらえていなかったので、育った環境が違いすぎて…。「こういう家庭もあるんだな」って思いながら演じていました。
でも、お芝居をしているときに、自分の中から、あふれてくるような感情があったんです。環菜の気持ちがわかるような感覚と言うか…そのとき、「どこか重なる部分があるんだな」って気づきました。彼女が抱えているものが、自分の心のどこかにも存在する。「前世で何かあったのかな」っていうくらいに、深いつながりみたいなものを感じました。

――環菜を演じる中で、「つらい」と感じたことはありましたか。

芳根 :台本を読んだ時点で苦しかったし、「つらいだろうな」って覚悟して現場に行きましたが…想像以上でした。環菜に心が持っていかれてしまうような感覚がありましたね。映画の中では環菜が泣き出すシーンが多いのですが、台本には涙が出る場面は1回しかないんです。演じているときに、自然と涙があふれてきて。それだけ心が動かされました。
撮影が終わってからも、しばらく役が抜けなくて、今までで一番引きずりましたね。普段は撮影後、母と外食したり、お出かけしたりすることで、その役を終えられるけど、今回は何をしていても、私の中に環菜がずっといるような気がしました。

「北川さんを困らせたい」という思いも

――環菜と真壁が最後に面会するシーンが印象的でした。

芳根 :正直、あんなに涙が出ると思っていませんでした。本番を撮る前、お芝居を固める「段取り」のときに、机に水たまりができていて。「こんなに泣いたんだ」って驚きました。堤監督は普段何度も段取りするのですが、最後の面会シーンは1回でOKが出て。
私、「泣いてください」って言われると、泣けなくなっちゃうんです。だから「本番で、いまと全く同じことができる自信がないです」って言ったのですが、堤監督からやるように言われました。監督に言われたことをやるのは私たちの使命なので、「やるしかないんだ」ってドキドキしましたね…。
だけど、本番の北川さんを前にしたら、「やらなきゃ」も何もなくて、自然と涙が出てきて。多分、何回やっても泣いたんじゃないかな。だからあのシーンは、北川さんと一緒じゃないとできなかった。真壁先生と環菜だけれど、北川さんと芳根京子になった瞬間があったようにも感じます。それくらい、お芝居って言うよりもリアルな感情でした。北川さんに引き出してもらったことに、感謝しています。

――役づくりについて、北川さんと相談しましたか?

芳根 :北川さんとの共演は、2015年のドラマ『探偵の探偵』ぶりで、2回目だったんです。「大きくなったね」って声をかけてくださりました。
「ちゃんと経験積んで来たんだな」って感じてほしかったから、環菜として真壁先生を翻弄するっていうのは大前提で、「北川さんを困らせたい」という思いもありました。撮影中は、あえて、お話しないようにしていましたね。
終わってからは、頻繁に連絡を取らせて頂いてます。

――映画に対する思いを、改めて教えてください。

芳根 :完成した映画を観て思ったのは、「人に関心を持たれない孤独」ほど切ないものはない、ということ。環菜はみんなを振り回したけれど、だからこそ彼女に「よかったね」「みんな見てるよ、大丈夫だよ」って声をかけてあげたい。
自分が想像していなかったところで感情が突き動かされるのは、お芝居の醍醐味でもあります。すごくつらい撮影だったけど、「お芝居って楽しい」と感じさせてくれた。環菜に出会えて良かったです。

●芳根京子さんのプロフィール
1997年、東京都生まれ。2013年、ドラマ『ラスト・シンデレラ』(フジ系)で女優デビュー。映画『物置のピアノ』(14年)やドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系、15年)の主演を経て、16年のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』のヒロインを演じた。土屋太鳳とダブル主演を務めた『累 -かさね-』と、『散り椿』(ともに18年)で、第42回日本アカデミー賞・新人俳優賞。

●『ファーストラヴ』
原作:島本理生「ファーストラヴ」(文春文庫刊)
監督:堤幸彦
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、板尾創路、石田法嗣、清原翔、高岡早紀、木村佳乃
配給:KADOKAWA
2月11日(木)公開

1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。