のんさん「幸せは多様化してる。脳内に相談役をつくって“おひとりさま”をエンジョイするのもいい」

31歳独身“おひとりさま”女性を描いた映画『私をくいとめて』が12月18日から、ヒューマントラストシネマ渋谷など全国で公開されます。脳内に相談役「A」が存在する会社員・黒田みつ子(31)を演じるのは、女優で「創作あーちすと」のんさん。おひとりさまライフに慣れすぎてAと会話ばかりしているみつ子が、林遣都さん演じる年下の営業マン・多田くんに思いを寄せる物語です。のんさんが考える「幸せ」とは?

どんな選択も、自分が幸せならいい

――のんさんは27歳になられました。30歳前後の女性は、結婚や出産などライフステージの変化も多いと思います。

のんさん(以下、のん) :世の中の幸せって、多様化していると感じます。「おひとりさま」も、一つの生き方として普通になってきている気がするんです。日々を楽しくできるのなら、自分の脳内に相談相手をつくってみるのも、いいですよね。もちろん、パートナーがいることも、また違った幸せがある。だから、「おひとりさま」をエンジョイすることも、思い切って恋に踏み込むことも、あり。どんな選択でも自分が幸せなら、それでいいのだと、私は思いますね。

――映画の中には、結婚してイタリアで暮らす親友・皐月をうらやましく思っているようなシーンがありました。のんさんは、他人と自分を比較して「うらやましい」と感じることはありますか?

のん :あります、あります。友達に大事な人ができて嫉妬心が生まれる、というのも、すごくある。
最近、同志だと思っている2歳下のモデルの友達に、子どもができたんです。久しぶりに会ったときに子どもの写真を見せてもらったら、その子にめちゃくちゃ似てて。「こんなに自分に似ているかわいい子が産まれたら、子どもが一番になっちゃうよな」と思って、正直、子どもに嫉妬しちゃいましたね。私の大好きな友達に一番にかわいがられて、うらやましいなって(笑)。

役者のお仕事は、人間の“だめなところ”を生かせる

――「のん」として活動を始めて4年。ご自身にとって、今作はどのような作品になったと思いますか?

のん :主役なので、がっつり演技させてもらって、のんの力を出し切りました。いまののんを、たくさんの方に目撃してほしい。素敵な作品になったと思います。

――みつ子役のオファーがあったときは、どんな気持ちでしたか?

のん :こういう役でお話を頂けたことが、とっても嬉しかったです。みつ子って、ちょっと面白くて、でも自分の中で拭えない痛みを抱えてて。すったもんだしながらデートを乗り越えたり、どんよりした感情に包まれたり…考えすぎて行き詰まってしまう時もあるけど、すごく健康的だなって思います。その姿をチャーミングに見せていて、すべてが愛おしく思える作品。そういうところが、グッときました。

――最近は、声の仕事や歌など、幅広く活躍されています。そんな中、演じることとは?

のん :人間の“だめなところ”を生かせたり、愛おしく感じたりすることは、役者のお仕事ならではだと思うんです。だから、演じることが本当に好き。セリフも登場シーンもたくさんあって、主役としてずっと演技をしていられる作品は、私にとって特別なもの。理想が結構高いので、落ち込むときもあるけれど、手応えがあると「こんなにうれしいことはない!」って思えて。演技をしていられるのは、すごく幸せです。

●のんさんのプロフィール
1993年生まれ。兵庫県出身。肩書は「創作あーちすと」。アニメ映画「この世界の片隅に」で主人公・すず役で声の出演。2017年には音楽レーベル「KAIWA (RE) CORD」を発足。歌手、芸術家など女優業以外の活動にも力を入れている。

『私をくいとめて』

原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督・脚本: 大九明子
出演: のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり/橋本愛
配給:日活
12月18日(金)公開

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。