女子アナの立ち位置。

女子アナ流のおしゃべり術。「口下手」なら「聞き上手」を目指してもいい【古谷有美】

ミレニアル世代ど真ん中のTBSアナウンサー古谷有美さんによる、テレビとは一味違う本音トーク。今回は、口下手な人へ。言いたいことを整理して、人に伝えるのって難しいですよね。「伝える」を仕事にしている古谷さんが教える、上手におしゃべりするポイントとは?

●女子アナの立ち位置。

<りかさんからのご質問>
私はものすごーく口下手です。 思った事を相手に伝える事が下手で整理して喋っても練習していても支離滅裂になり自己嫌悪に陥ります。飲み会など大勢の前となるとなおさらでいつも行くのが億劫になります。断る事も多いです。 古谷さんは喋る事をお仕事とされていますが元々伝えること、また人前で喋る事は得意でしたか? 何かアドバイスがあれば是非教えてほしいです。 古谷さんの喋り方、テンポ感はとても心地よく大好きです。

おしゃべり、気負わずに楽しみませんか

りかさん、コメントありがとうございます。
アナウンサーという仕事は、限られた時間のなかで、適切な情報を届けていかなくてはいけません。なので、仕事モードのときは、まずなんでも簡潔に言い切ることを心掛けています。最初に「話の着地点を決めておく」という作業も、とても大切です。

ただ、私もプライベートのおしゃべりは、全然上手ではありません(笑)。だらだら話しているうちに「で、なんの話だったっけ?」となることだって、しばしば。だから、普段の私しか知らない方は、仕事ぶりを見ると驚くことがあるみたいです。

でも、普通のおしゃべりでも簡潔に言い切ってばかり、脱線しないようにしてばかりいると、あまり会話が楽しめません。相手も疲れてしまいそう。だからそもそも、毎日そんなにきっちり話さなくたっていい、と思うんです。

それでも日ごろから心掛けていることがあるとすれば、言葉遣いでしょうか。
新人のころ、先輩に「普段つかっている言葉は、仕事中のふとしたときについ出てしまう。だから、日ごろから正しい言葉をつかうようにしたほうがいいよ」と言われたのです。

たとえば、とても細かいことだけれど「ほんとに」ではなく「本当に」。「すごいかわいい」ではなく「すごくかわいい」。「すごい」は形容詞なので、同じ形容詞である「かわいい」につけることはできないんですね。

話すことがうまくまとまらなかったとしても。普段から美しい言葉をつかうようにするだけで、ぐっと印象が変わります。気持ちひとつですぐに取り入れられるので、ぜひお試しください!

「どう思われてもいい」「誰も聞いていない」で肩の力を抜く

りかさんは、ご自身のことを「ものすごーく口下手」だと思っていらっしゃるんですね。そう思うと余計に緊張したり、少しでもうまく喋ろうと考えて、ちぢこまってしまうのではないかと感じます。

自分の言葉を相手がどんなふうに受け止めるか、ということばかりを考えるのも、話すことを難しくしてしまいます。だって、誤解が生じないように表現を選んだり、相手を思いやるあまりにいろんなエクスキューズを入れたり……しちゃいませんか? そうすると、会話はどんどん本題がわかりにくく、重たくなってしまうんです。

もちろんその気遣いも素敵だけれど、ときには「この人にどう思われたっていい!」という開き直りも◎。家族に話すような感覚で「これは楽しいね」「ちょっとやだな」なんて、ラフなトークを展開してみてください。相手にどう思われるかを先回りしないぶん、余計な補足が要らなくなると思います。

あとは「別に誰も私のおしゃべりに期待してない」と考えること。だって、普通にしゃべっているはずなのにめちゃくちゃ面白い方って、いらっしゃるでしょう。間合いやトーン、エピソードの濃さなど、どれをとっても一級品の方。そんな方々の前で自分の話をするのは、気が引けてしまいますよね。

そんなときは無理に話さなくてもいいし、それでも話さなければいけないなら、肩の力を抜きましょう。いい意味で、自分に期待しない。人と比べてプレッシャーをかけない。上手に話そうなんて思わなければ、落ち込むことも減るはずです。

ゆったりした相づちと逆質問も便利

言葉がなかなか出てこないなら、ゆったり話すのもおすすめ。
なにかを尋ねられたとき、すぐに返そうとせず、まずは落ち着いて「そうですねぇ……」と言ってみてください。そのあいだに、話す内容をゆっくり考えます。

それだけじゃ時間が足りないときは「ちょっと考えてみますね」でOK。順番に話していくような場なら、自分のターンを最後に回してもらいましょう。誰も悪い気はしないはずです。

質問されたときにもうひとつ使えるのは、内容を明確にしてもらうこと。
たとえば「おすすめの海外旅行先は?」と聞かれても、幅が広すぎて、うまく答えが出せないかもしれません。そんなときはまず「誰といつ行くの?」と逆質問。「父の還暦祝いに家族で行きたい」などと情報がもらえたら、聞かれていることが明確になって、ぐっと答えやすくなります。ついでに「還暦祝いなんて素敵だね」と添えれば、会話のキャッチボールも完成です!

そもそも、話すスキルを無理に磨かなくたっていいんですよね。会話で大切なのは、お互い心地よい時間を過ごすこと。相手が気持ちよく話せるように、相づちのバリエーションを磨いたりしたっていいんです。そうすれば、話し終わったときに相手は「りかさん、口下手だな」じゃなくて「りかさん、聞き上手!」と思ってくれるはず。

りかさんに合った方法が見つかることを祈っています。おしゃべり、もっと楽しめるようになるといいですね!

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。