女子アナの立ち位置。

【古谷有美】メイクとレストラン選びは似てる?

TBSの朝の顔、古谷有美アナ。またの名を「みんみん画伯」。インスタグラムに投稿される、繊細でスタイリッシュなイラストが人気です。テレビとはひと味違う、本音トークが聞けるかも。

●女子アナの立ち位置。

メイクって不思議ですよね。

誰かにやり方をちゃんとイチから教わるわけではないのに、自分流がいつの間にかできあがっている。自分流でなんとかなるのに、他の人がどうしているのかも気になってしまう。

冬から春へ、春から夏へと季節が暖かく暑くなっていくと、明るい色のリップやシャドウに手が自然と伸びてしまいます。衣替えより、化粧品選びの時のほうが、むしろ季節の変わり目に敏感に反応しているのかもしれません。

歳とともにアイテムを減らす

「女子アナ風メイク」といった特集をしばしば雑誌などで目にしますが、アナウンサーのメイクについての共通した特徴を本当に一つあげるとすれば、「スピード」ではないでしょうか。

私の場合、早ければ、完全にすっぴんからはじめて15分で完了。さらに短縮して10分で終わらせることもあります。
遠方の取材に出かけ、飛行機の到着が遅れて生放送の時間ギリギリに戻る。そんな時は、局に向かう車の中でメイクを済ませ、到着したら着替えてそのままスタジオに駆け込むという経験もしました。

生放送のための「スピード」という理由だけでは無く、普段もシンプルなメイクを心がけています。30代、「崩れるのが大前提」という年代にさしかかってきて特に意識していることです。

目指すのは、崩れてもきれいな肌。仕事の合間ってメイク直しがこまめにできないですよね。ならば、崩れても大丈夫な肌づくりをして、お直しを最低限にした方がいい。

メイクは奥が深いです。崩れにくい、テカリ防止…いろいろと追求すると、つい何層にも塗ることになって、汗をかいたり時間が経ったりするにつれ、崩れている箇所が目立ちやすくなります。
「できるだけ、うすーくうすーく」は、常に自分に投げかけている問いです。

基礎化粧品で肌を整えたら、直にクッションファンデをサッと塗って、コンシーラをちょいと足し、アイラインを引いて、リップ、以上!という感じ。「女子アナメイク」なんて胸を張って言えるようなことはまったくできていません。
シンプルなので、メイクボックスも必要なし。ちょっと大きめのペンケースサイズのポーチに入りきるくらいのアイテムが全てで、これを家でも職場でも持ち歩きながら、使っています。
ポーチを持ち歩くのは、突然のロケや取材に備えてのことなのですが、これで日常メイクでも十分、事足りるんです。

コンプレックスは隠そうとしないほうがいい

「塗りすぎない方がいい」という逆転の発想につながるきっかけは、現場で一緒だったメイクさんの一言も影響しています。
以前は、目の下のクマを隠すのに、コンシーラーをしっかり塗り込んでいたんです。するとくしゃっと笑えば笑うほど目まわりの小さなシワにコンシーラーがたまって、画面を通すとわかるようになって、ますます気になってしまっていました。

ある日、時間が無くてクッションファンデだけを塗って臨んだ現場で、意外にも「あれ、今日肌の調子いいね!」とメイクさんに言われました。「クマ、目立ちませんか?」と聞くと、「逆にコンシーラーを塗ると目立つから、塗らなくても大丈夫」ときっぱり。
思い切ってコンシーラーをやめたら、本当に全く気にならなくなって、「あの職人芸のような作業は必要なかったんだ!」と気づくことができました。

現場でいろんな人の肌に触れているメイクさんから教わることは、ためになる情報が多くて実践しやすいものばかりなので、「何かお勧めはありますか?」と聞くようにしています。
そうそう、先日は、ファンデーションを塗った後に、スポンジを軽く水でぬらして、上から叩きこむようにすると崩れにくい、と教えてもらいました。
これからの蒸し暑い夏に向けて、この「崩れてなんぼ!メイク」よかったらお試しください。

大多数の好きより、信頼できる人のレコメンド

限定商品でどこのショップでも品切れ続出、口コミで評価が高い。
巷にあふれている様々なコスメ情報に飛びついてしまいそうになります。でも、コスメって、それが自分にとっていいか悪いかの判断が難しいものだな、と私は思います。

20代のころは、「なんとなく雑誌で紹介されていたから」とか、「みんな使っていて、流行っているみたい」ということで買っていました。
いまは、それよりも、自分の肌や好みを知っている人のお勧めを信じたほうがいいのかなと感じています。
例えばレストランだって口コミサイトで評判でも、自分が好きと思えないお店があり、逆に、評価が低くてもお気に入りの場所がある。
化粧品選びにも同じようなことが言えるような気がします。
もちろん、「ランキング1位!」と飛びつくこともありますが。

現場でしょっちゅう会って、私の肌質もわかっているメイクさんに聞くのもそうですし、よく化粧品を買っているお店は、店員さんたちが実際に自分で使ったり、成分を勉強してちゃんと説明してくれるので、安心して「使ってみよう」という気持ちになれます。

食事のように、コスメにも「行きつけ」の場所や人が見つかると楽しいです。大多数の好きよりも、信頼できる人のレコメンドを判断軸にすると迷いがなくなります。

1枚五百円のごほうび

基礎化粧品も時折変えつつ、いつも試行錯誤しながらの中で思いがけず長続きしているのが、シートマスクを使ったお手入れです。どんなに時間がなくても朝晩必ずシートマスクを必ず顔に貼って、を習慣にしています。
特にこれで無くては!というこだわりはなく、ごく普通にドラッグストアにある50枚セットのものです。顔にのせた瞬間にひんやりするのが気持ちよくて、冷蔵庫に常備しています。
気合いを入れたい時や逆にひどく疲れた時は、1枚500円ほどの少しお高めのマスクを買い置きして使うことも。ごほうび感がぐっと増す密かな楽しみです。

ルーティーン作業が多くなると面倒くさいと投げ出すタイプなので、シートマスクを必ずするようになったりするのは、私にとって、30代になってからの大きな変化だと言えるかもしれません。

とても大きな声では言えませんが、メイクをしたまま寝落ちしてしまう……なんて時のために、ファンデーションを石鹸で落とせるものに変える。
日光浴が好きだから、日焼け止めはマストだけど、保湿成分を気にかける。

自分が楽して続けられるように。ちょっとした心の持ちようの変化と、自分にちゃんとあったものを見つけようという意識が働いている分、前よりも今の肌の方がいいと堂々と胸を張れるようになってきました。

年を重ねるのに抗うのではなく、その年代に応じたやり方を少しずつとり入れていく。
「今の肌が一番好き」とこれからもずっと言えるようなスキンケアやメイクを意識していけたら、と思っています。

続きの記事<自分だけのものさし、持っていますか?>はこちら

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
九州のローカル局で記者・ディレクターとして、 政治家、アーティスト、落語家などの対談番組を約180本制作。その後、週刊誌「AERA」の記者を経て現在は東京・渋谷のスタートアップで働きながらフリーランスでも活動中。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。