Ruru Ruriko ピンク 44

トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)とは?

ちょっとモヤモヤした気持ちになったとき、読んでみてください。いい意味で、心がザワザワするフォト&エッセイ。今回は昨年から欧米で話題になっている「トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)」について。これは、男性に男らしさを押しつけることを問題とする考えで、議論のトピックにもなっています。ルリコさんが考える、「○○らしさ」に縛られない幸せな生き方とは。

●Ruru Ruriko ピンク 44

みなさんは「男らしさ」と聞くとどのようなことを思い浮かべるでしょうか?
涙を見せない、たくましい身体、セックスや下ネタが好き、女性を守ってくれる、食事は男性が奢るべきなどはよく例に挙げられます。

こういった「男は男らしくすべき」というプレッシャーを『トキシック・マスキュリニティ(Toxic Masculinity)』と呼びます。日本語では『有害な男らしさ』と訳され、女性に伝統的な女らしさを求めるのは間違っている、というフェミニズムの動きと共に議論されているトピックのひとつです。

欧米ではここ数年「有害な男らしさ」が注目され、CMや映画にドラマなどでも、今までとは違った新しい男性像が出てきました。
例えば、感情を表に出す、性や恋愛に興味がない、競争や暴力的なことが好きではない、ピンクが好き、化粧やおしゃれをするのが好きなど、当たり前ですが男性もさまざまです。昔は男性スターというと、女好きで酒好き、見た目も力強い男性が一般的でしたが、近年、日本ではりゅうちぇるさんやkemio(けみお)さん、アメリカでは俳優のエズラ・ミラーに最近だと歌手のハリー・スタイルズなど、いわゆる「男らしくない」男性スターが出てきています。彼らは今まで女性のものとされてきた、可愛らしいファッションやネイルに化粧などを楽しみ、堂々と自分のスタイルを表現しています。

私は男性ではないので男性になった気持ちはわかりませんが、多くの男性は「男らしくあるべき」というプレッシャーを感じていて、男性同士でそれを証明しないと一人前の男じゃないとバカにされる不安を感じているそうです。

男同士で連帯を結び、同じ男らしさを共有する絆を「ホモソーシャル」と言います。ホモソーシャルでは男らしさを証明するために、女性に対してはセクハラジョークを言ったり「女は〜だ」と決めつけ差別をし、ゲイ男性やトランスジェンダー男性・女性、おしゃれや可愛らしいものが好きな男性、彼らが求める「男らしさ」に入らない男性のことも排除し差別します。

日本のテレビやメディアでは、いまだに少しでも「男性らしくない」言動をすると、「ゲイっぽい」「あっち系」などと嘲笑したり、差別していないように見えても「女の子みたい」などど規範のジェンダータイプに入っていないことを示します。

車や電車のおもちゃが好きで、泥だらけになって外で走りまわる女の子がいるように、ピンクが好きでおままごとやお人形で遊ぶことが好きな男の子もいます。ピンクが女の子の色とされるようになったのは1950年代と言われていますし、女の子がピンク好きというのは、社会的に作られたステレオタイプです。化粧も美も、現代では女性のものとされていますが、昔は裕福さを表す貴族のものであったり、まじないのためでもありました。

好きなタイプで「男らしい人」という人もいますが、あなたにとっての「男らしい」はどのような人でしょうか?タイプは人それぞれですので、いわゆる男らしい人が好きな人や実際に“男らしい”人が悪いわけではありません。悪いのはあなたが思う「男らしさ」や「女らしさ」を他人に押し付けて判断してしまうことです。

ジェンダーに対することだけではありませんが、「XXXの人はこうすべきだ」とステレオタイプに当てはめようとするのは、他人や自分自身を見えない鎖で縛り、苦しくさせてしまいます。ファッションに仕事、趣味や愛の形など、私たちの生きる現代はいろいろなことに対して、たくさんの選択肢があり、みんな自分自身で選ぶ権利があります。

「こうしなくてはいけない」という考えにとらわれすぎずに、自分が心地よく幸せになれるように、それぞれが自由に自分自身のライフスタイルを選択していければいいですね。いきなり考え方を変えることは難しいでしょうが、少しそれを意識して、なぜ男性はこうするべき、女性はこうするべきと思うんだろうか?と考えてみる、そして調べてみることを始めると、今までと違った考え方や生き方が見えてくるかもしれません。

最後に「男らしさ」に関するTED Talksのスピーチを2つご紹介。両方日本語字幕をつけられるので、是非チェックしてみてくださいね。

●ジャスティン・バルドーニ:「男らしく」することをやめた理由:https://www.ted.com/talks/justin_baldoni_why_i_m_done_trying_to_be_man_enough?utm_campaign=tedspread&utm_medium=referral&utm_source=tedcomshare

トニー・ポーター:男性たちへの提言:
https://www.ted.com/talks/tony_porter_a_call_to_men?utm_campaign=tedspread&utm_medium=referral&utm_source=tedcomshare

18歳の時にイギリスへ留学、4年半過ごす。大学時代にファッション、ファインアート、写真を学ぶ中でフェミニズムと出会い、日常で気になった、女の子として生きることなどの疑問についてSNSで書くようになる。