telling,Diary 私たちの心の中。

もしかしたら、をいつも胸に

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

「結婚してるの?」「売れ残るよ」

女という性に生まれて数十年。
初対面の人に、結婚してるの?と聞かれることにも随分慣れました。

20代前半、それはまだまだ絵空事。いつしたい?とかどんな人がいいの?とか、全く現実感のないお話ばかり。
20代半ば。そろそろ友達も結婚してきたんじゃない?彼氏はいないの?と、なぜか焦らせるようなことを言われるようになる。
20代後半。もうそろそろ「ヤバい」でしょ。「売れ残る」よ。必死にならないといけないんじゃないの?

ヤバいって何?
男と結婚することがそんなに大事?子どもを作って家庭を守るお母さんになることが?
それとも水商売をしていることがヤバいのかな?ポールダンサーであること?
20代後半でレズビアンで水商売をしていてポールダンサーをしている私が男性と結婚しないと「ヤバい」理由って、何?
お酒の入っている相手に本気で詰め寄ることもできないまま、はや数年。

結婚したいと思わない? という言葉に、「親はなんて言ってるの?結婚して欲しいと思ってるんじゃないの」が付け足されるようになってきました。
そうですねえ、この年になると親の年齢も同様に上がっているわけで。そういうの気になっちゃうんですよね、きっと。他人がなぜ結婚してなくて、その親がどう思っているかが。
そういう人に正直に、親は死んだんですよ、ある日血を吐いて突然ぶっ倒れてそのまま。というと、聞いてきたくせに何にも言わなくなっちゃう。どう思ったかぜひ教えて欲しいのに。
あなたが根掘り葉掘り私のことを探るなら、私にもあなたの心の機微を教えてくれよ。

他人の人生に介入するという想像力の欠如

他人の人生にお節介にも介入してくるタイプの人には、想像力が足りていないように感じます。
なぜその人が結婚していないのか。果たしてその人に「結婚していないことを心配するような」家族がいるのかどうか。お願いだから質問する前に、一度考えてほしい。
もしかしたらその人は、配偶者と死に別れているかもしれない。
もしかしたらその人は、親に捨てられているかもしれない。
もしかしたらその人は、もう二度と恋をしないと決めているかもしれない。
もしかしたらその人は、もしかしたら。

もうすぐ2020年、初対面の人に聞いてもいい質問の内容、という共通意識が変わっていくといいなあ。
何よりその質問で、「相手が自分より上か下か確認する」ような人が少しでも減ることを祈るばかり。
そして、自分も無意識にそれをしていないかどうか。
もしかしたら、をいつも胸に。

『おっぱいが大きかったので会社員を辞めてポールダンサーになった話』

著:まなつ

発行:株式会社ZINE

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ