「男性用オーダースーツ」が私の至高の一着になる理由【01】

皆さんは、普段どんな服装でお仕事をしていますか?大事なプレゼンや商談の日に着る服は、社会人にとっての「戦闘服」などとも言われます。ならばやっぱり、仕事って「戦い」なんでしょうか。それは、誰とそして何との?――ユニセックスやジェンダーフリーが浸透しつつある中、「男性用オーダーメイド」のスーツを女性が仕立てるという、ユニークな試みが今週末から行われます。試してみたら、意外な発見があったのです。

スーツは「戦闘服」なのか?

「もうすぐ30代に突入するのに、そういえばちゃんとしたスーツって持ってなかったです」

そう話すのは、メディア企業で営業職として働く奥谷千尋さん(29)。仕事柄スーツを着る場面が多いながらも、自身の体型のコンプレックスをばっちりカバーしてくれるような一着にめぐり合えないことは悩みの一つだったと言います。

「これまで、ビジネスウェアにこだわるということはしてきませんでした。プレゼンや大事なお客様に会う日に着ていくジャケットは持っていましたが、スーツとなると、カラフルで可愛くてテンションが上がる!っていうものではないから。優先順位は低くなりがちでした」

そんな奥谷さんが向かったのは、東京・青山のFABRIC TOKYO。男性のオーダーメイドスーツ店であるこのお店が、「あなたの『着たい』に、メンズという答えも。」というコンセプトのもと、女性にもメンズのパターンをもとにスーツをつくれるというキャンペーンを行うのです。

女性がなぜ、「男性用の」スーツなのか?
実は、以前からこのFABRIC TOKYOには、女性からもオーダーを望む声が寄せられていました。女性用スーツならではのボディコンシャスな型に抵抗のあった女性や、女性ものの服が好きではなく、かといって既製のメンズスーツは着こなすことが難しい、そうしたニーズに応えようと企画されたのが、今回のキャンペーンです。

オーダーに関わる情報はスマホで一元管理

ショップは表参道駅からすぐ。女性用オーダーキャンペーンはこちらの店舗で行われますが、日頃、男性用のスーツ店に足を踏み入れることってそういえばほとんどない。紺、黒、グレー、当然といえば当然の「色数の少ない」世界に、ちょっと戸惑いも感じます。

採寸データや選ぶ生地の情報などは、すべてスマホの個人ページで管理します。

「既製品のスーツだと、身幅やウエストまわり、丈、すべてが自分とぴったりっていうことはなかなかない。身幅に合わせると腕の丈に合わなかったり、前ボタンをかっちり閉めたいと思うと形が崩れたり……」

と、奥谷さん。そんな悩みをお店の方に悩みを相談しつつ、登録を完了すると早速採寸に入ります。

肩幅から首や腕の長さまで女性コーディネーターが採寸

8月25日~31日のキャンペーン期間中は採寸は女性スタッフが行います。自分の身体に合った一世一代のオーダーメイドスーツ作りですから、リラックスして正直にコミュニケーションをとりたいですよね。

首回りや肩の幅をここまでしっかり測ったのはもちろんはじめて。

採寸が終わったら、サイズの近いサンプルを着用し、さらに細かくオーダーしていきます

「ストレートパンツ?ワイドパンツ?ハイウエスト?ノーマル?かなり細かく好みが選べるんですね。脚が長く見えるベストの形はどれですかね」

体型に合わせて似合うタックをすすめてくれるなど、悩みやすい方でも安心です。

世間では「#KuToo」の波が巷を賑わせましたが、「自分はスーツの時はヒールを履くことが多い」という奥谷さん。とはいえ「できればスニーカーにも合うようにしたい」といった欲張りな気持ちも、女性のコーディネーターさんが理解して対応してくれるのは嬉しいです。

続いてはジャケット。メンズ向けでも、女性にぴったり合うものを作れるのでしょうか?肩の位置や後ろ丈にベント(切れ込み)の位置(男性よりボリュームがある女性のヒップをきれいに見せるには、センターベントよりサイドベンツがおすすめだそう)、前ボタンを留めたときのシルエットなど、細かく調整していきます。

ちなみに、奥谷さんの希望は「後ろの丈、ちょっと長め」。
「その方が、仕事できるような感じしません?女性政治家みたいなイメージかな(笑)」

生地やボタンの数も選べる

形を決めたら、次は素材へ。店内にずらりと並べられた生地サンプルを見ながら、色や厚さ、肌触りを一つひとつ確認できます。

「チェックとかストライプ、可愛いなぁ。でもイッテンモノって考えたら、ちょっとポップすぎる?」

カジュアルな柄に目が行きつつも、「仕事ができそうなスーツを作る」の初心を取り戻し、プレーンなものを候補に残していく奥谷さん。
気になる生地のコードナンバーを入力すると、瞬時に全身画像が表示されます。手元の生地サンプルを見るのと、全身にまとったときのイメージに差がないかを、ここで確認。

生地を決めたら、さらにボタン選びへと進みますが、
「ボタン選びって?」と女性だらけの取材陣は一同ハテナマーク。
これはいわゆる「シングルボタン」「ダブルボタン」のこと。スーツの印象がガラリと変わるポイントです。奥谷さんは、

「ダブルのスーツに憧れがあったんです。海外の弁護士ドラマ「SUITS」で、ジェシカ・ピアソン所長がかっこよく着こなしてたんですよね。でも日本にはなかなかそういう型がなくって」

さらに、襟にはステッチを入れることに。

襟の部分の縫い目がオーダーならでは

これ、市販のスーツではなかなかお目にかかれない、オーダースーツならではのステイタスでもあるんだそう。すてきすてき。わかる人にはわかるやつ。こういうところが「戦闘服」ならではのこだわり、となるのでしょうか。

そのほか、パンツにはセンターラインを入れるなど、細かいカウンセリングでイメージを形に落とし込み、約1時間でスーツづくりの準備は終了。リラックスムードの中、ワクワクした空気が伝わる時間でした。

(後編に続く)
後半(22日公開予定)では、完成したオーダースーツと対面。着用してみて気づいた意外な心境もあったといいます。「男性用を、女性が着る」ことで、見えてきたものとは……?

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。