男性用スーツ店でオーダーメイドスーツを作ってみたら【02】

皆さんは、普段どんな服装でお仕事をしていますか?大事なプレゼンや商談の日に着る服は、社会人にとっての「戦闘服」などとも言われます。ならばやっぱり、仕事って「戦い」なんでしょうか。それは、誰とそして何との?――ユニセックスやジェンダーフリーが浸透しつつある中、「男性用オーダーメイド」のスーツを女性が仕立てるという、ユニークな試みが今週末から行われます。試してみたら、意外な発見があったのです。

仕事の場でバリッとスーツを着こなしたい。でも、女性らしい体型に似合う一着となかなか出会うことができなかったという奥谷千尋さん(29)。メディア企業の営業職として働く彼女が、メンズオーダーメイドスーツ店FABRICTOKYOが期間限定で行う女性向けオーダーサービスを体験。前回は、女性のコーディネーターさんに自らの体型の悩みなどをカウンセリングしてもらいながら採寸しました。

オーダースーツ、お披露目!

スーツが完成したとのメールを受け、受け取るために再び店舗へ。受け取りには宅配サービスも利用できますが、袖を通した瞬間の心地を共有させてほしい、そんな思いで取材陣も同行します。

できあがったスーツが奥谷さんの元へ。

早速試着します。

そして、お披露目。

「肩幅、着丈、パンツのしっくり感。オーダーメイドがここまでしっくりいくなんて知らなかった。感動でため息がでます」

細部のこだわりもそこかしこに。刺繡をいれてもらったり、

このステッチが、前回紹介したオーダーならではの勲章です。

奥谷さんからの口からは、着た感想が次々飛び出します。

「男性用のスーツって、パンツのポケットが深いんですね。股上も女性物より深くて包み込まれてる感じがする(笑)。ジャケットの内側にもポケットがたくさん。男性の鞄が小さい理由がわかりました。これなら何でも入っちゃうけど、女性の私が胸元の内ポケットに物を詰め込むと、形が崩れちゃうかな。でもそんなふうに、“男女の身体のつくりのちがい”をオーダーメイドスーツを通して実感できたのは新鮮でした」

男性の美学を体感して深まる、ジェンダーフリーの意味

裏地から、襟元のステッチまで、男性のスーツにはこだわるポイントがたくさんある。これはオーダーしてみて初めて気づいたことだと、奥谷さん。

「私たち女性の服に比べて、男性のスーツは色や柄で大冒険することはできないイメージでした。まさに制服のような感じで、正直みんな同じように見えていたんです。でも、オーダーメイドの細部へのこだわりを知って、そこを大切にしてる人はきっとすごく愛着を持ってその『制服』に袖を通しているんだろうとわかって。今まで知らなかった男性の美学みたいなものに触れることができた気がします」

ファッションにおける細部へのこだわりや愛着、そこには本来、性差はないでしょう。
今、ジェンダーについて語り、考える機会が増え、ユニセックスなファッションアイテムも増えています。欧米では「The Death Of Masculinity」として、「男らしさ」にまつわる固定観念に疑問が呈されるなど、性に関するステレオタイプは取り除かれていく流れです。

そんな中、女性があえて男性もののスーツに身を包む。ただ自分にフィットする一着として心置きなく思いを込めることができる、そんな選択肢の広がりは嬉しい限りです。商談など勝負の時に女性が仕事場に着ていく服が、男性の気を引くためのものになっている――そんな意味での“ユニフォーム”じゃなく、自分の気分を上げてくれる存在になってくれるなら、頼もしい。

「私にとってはやっぱり、この一着は“戦闘服”かな。これを着て早く仕事をしたいです」

そう笑顔で語る奥谷さんの姿は、(今、あえてこの言葉をつかいます)とっても「男前」でしたよ!

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。