【わたしたちの自由研究01】字をうまく書けるようになりたい
●telling,編集部コラム――わたしたちの自由研究
大人になって字が汚いのは恥ずかしい?
私は結婚式に行くのが好きだ。
ただ、結婚式の出席には、必ず憂鬱がつきまとう。ご祝儀袋に名前を書かないといけないし、受付では芳名帳に記帳しなくてはいけないからだ。
字に自信がない人には、この憂鬱さをわかってもらえると思う。
ご祝儀袋に書く自分の名前はスマホで字のお手本を表示して、それを筆ペンでなぞって書いている(それでもかなり下手くそ)。
受付で記帳する時は、「一番最後の行にあたって、私が書いた文字が誰の目にもとまることなく次のページがめくられますように……」と神に祈りながら並んでいる。
大人の女たるもの、字が汚いのは恥ずかしい……気がする。字が汚いと、頭が悪そうに見えたり、部屋が汚そうに思われたりする気がする。自意識過剰だろうか。
字がうまいってどういうこと?
そもそも、「字が上達する」とはどんな状況なんだろう?
今回テーマに「字の上達」を選んだことをきっかけに、最寄りのジュンク堂に出かけて、とりあえずペン字のコーナーを覗いてみた。
すると、背の高い本棚2面分にびっしり詰まったペン字に関する本が……。
「30日で上達!」「すぐうまくなれる!」という文句が踊る中、「この本テリングっぽい!」と思って見つけたのが、『美文字はあきらめなさい 自分らしく上達する10のコツ』(清水恵著・白夜書房刊)
「自分らしく上達する」ってなんかすごくいいなと感じたので、買って読んでみると、こんな一節が。
あなたの字クセや個性をそのまま生かして上達が望めます。それが本来の美しさ、美文字のはずです。だって世の中、美人もいろいろですから。美文字も個性豊かにいろいろな美しさがあっていいのです。
確かに。
そう言えば……とウチの母の字を思い出す。決してお手本になるような字ではないけれど、細長くて丸みをおびて読みやすくて、個性はあるけど、いい字と思った記憶がある。自分らしい字のイメージを作って、それを目指すのがいいのかも。
自分らしい字を書くためには、基本を固めるのが大事
とは言え、どうやって字を練習したらいいのか。私の知人である、書家・新ヶ江若菜さんに話を聞いてみた。
「本屋さんで、ペン字の本、たくさん売っていると思いますが、正直、お手本自体がかなり癖の強い字である場合もあります。その中から選ぶのなら、自分が『こういう字になりたいな』というものを探してみるといいですね。個人的なオススメは”美文字王子”と呼ばれている青山浩之先生です。NHKや日本テレビなど、メディア出演も多くされている方です。
練習する際には、とにかく”コピーすること”を意識してください。お手本をまったく真似て書く。集中力が大事です。
ペン字の練習で、スラスラ書いてしまう方がいますが、完璧にコピーしようとしたら、一文字一文字かなり時間をかけて書かないといけません。まずお手本をじっと見て、一画目はどの位置にどの角度で書くべきか、二画目とのバランスをどうとるか、全体のバランスをどうとるか……お手本と自分の手元をキョロキョロ見比べてしてしまうはずです。書き始めるまでにも時間がかかるはずですし、一画一画にも時間がかかります。なので練習する際は、インクがにじまない鉛筆がオススメですよ。
”守破離”という言葉がありますが、字の世界にもその言葉は当てはまります。自分らしさを出すのは、基礎を固めた後です。短期間で成果を実感したいなら、少ない文字数の方を徹底的に練習するといいですね」
美文字は一日にしてならず……どころか、ひと夏かけても、一足飛びにうまくなることはなさそう……。ちなみに読みやすいクセ字の母も、数カ月書道の手習いをしていたことがあると言っていた。
夏休みに挑戦してみること
というわけで、私が夏休みに挑戦してみること。欲張らずに、こんな目標を立てました。
「自分の名前を少しでもキレイに書けるようになること!」
幸い、私の名前、「いぬいぬぬ」は「い」と「ぬ」の2文字だけで構成されているので、この2文字を、ひたすらジャポニカ学習帳に「いぬいぬぬ」と書き続けてみます。
最初のこの文字、最終的にはどれくらいキレイになるのでしょうか……?
(続く)
-
第132回LGBTの生きづらさ、フィリピンでは?「ゲイは誇り」と語る英語教師の夢
-
第133回角田光代ら直木賞作家3人がコラボした絵本に学ぶ「伝え方」の極意
-
第134回【わたしたちの自由研究01】字をうまく書けるようになりたい
-
第135回【夏休み明けに出社したくないあなたへ】私が会社をズル休みした話
-
第136回外国人観光客には何語で話しかけたらいいんだろう?