telling,Diary 私たちの心の中。

ミスをミスと思わせないのが、プロのポールダンサー

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

「プロ」という響きのくすぐったさ

「私はプロのポールダンサーです」。そう名乗るようになってからもう何年も経ちます。

「あなたってプロのポールダンサーなの?」。人からそう聞かれるようになった頃、その言葉の響きは、なんだかくすぐったくて、恥ずかしいような嬉しいような不思議な感覚がありました。

正直な話、まだその時はプロのポールダンサーってそもそもどんな人?というビジョンはありませんでした。ただ、がむしゃらに踊っていただけ。

どうせアマチュアなんでしょ?の言葉

「プロ」という言葉に、人は一種の尊敬だったり畏怖の眼差しを投げかけるものです。

お金をもらえるようになることがプロの定義なのかと言えば、私自身はかつてはギャラも貰えず、おひねりだけの仕事もたくさんしていました。確かにお金はもらったけど、それは仕事に対する報酬ではなく、チップ。

それでも私が自分はプロですと自ら言うようになったのは、

「どうせアマチュアなんでしょ?趣味でやっていて他の仕事があるんでしょう? こんなことでお金をもらって食っていけるわけないじゃない。ただ踊っているだけだもの」

と、あまりにも自分の仕事を見下げられることが何度もあったからでした。

私は、これでご飯を食べてます。
公共料金も税金も払ってるし、家賃も、猫のエサ代も、生活の全てをこの踊りで賄っているんです。

そしてお金をもらうに値するパフォーマンスをしている自負があります。
それだけ修練したし、自分を磨く努力は怠っていません。
だから、プロだと、名乗ることにしました。

と、言いながらも「まだまだ努力は必要なんだけどね。上には上がたくさんいるから」と付け足してはいましたが。

プロとプロ意識

ポールダンスの大会によっては「インストラクターとして人に教えたら」プロ、と線引きをしている人もいます。
結局のところプロってなんなんでしょうね。今でも考えてしまいます。

「プロ意識」という意味でいえば、まずステージで怪我をしないことが私にとっては絶対条件。

練習不足な技を無理にやったりせず、決してお客様をヒヤヒヤさせない。
ミスをしても、それをミスと思わせないこと。パフォーマンスの一部のように振る舞い、お客様を興ざめさせない。
自分の体を守った上で、必ず踊りきる。
これがまずプロの条件かなと今は思っています。

それ以外のことはあんまり考えず、「プロ」「アマ」という言葉にこだわりすぎず気楽に踊りたい私です。
気負わず、でも怪我せず、楽しく踊れたらそれでいいかな。

『おっぱいが大きかったので会社員を辞めてポールダンサーになった話』

著:まなつ

発行:株式会社ZINE

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ