○歳のわたしへ01

フリーターから副社長へ「自分で選ばない選択肢に乗ってみる」

株式会社スープストックトーキョー取締役副社長 江澤身和さん(38歳) 「仕事辞めたいな」「結婚どうしよう?」「将来大丈夫?」……30歳を過ぎると、数々の難問に答えを求められます。私たちはあといくつ大人になれば、これらを軽々と乗り越えられるようになるのでしょうか? 周りには、そんな“もやもや”時期を乗り越え、前向きに進む先輩たちがいます。 第1回目にお話を伺ったのは、スープ専門店「スープストックトーキョー(以下、SST)」を展開する株式会社スープストックトーキョー取締役副社長兼店舗営業部部長の江澤身和(えざわ・みわ)さん。パートナー(アルバイト)として入社した江澤さんがどのように、社員から最年少・女性初の役員、副社長になったのか、自身のターニングポイントについて聞きました。

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「自分で選ばない選択肢だからこそ、やらないのはもったいない」

28歳のわたしへ

思い返してみてターニングポイントだったなと思うのは、28歳の頃。実は私は、短大を卒業した後、就職せずにフリーターだったことがあります。特にやりたいこともなくて、本当にぼーっとしていたんです。約半年、まるっきりアルバイトもせずに、ニートだった時期もあったほど。それを心配した友人が自分のバイト先だったSSTを紹介してくれたのが始まりです。

スープストックトーキョー四谷店店長だった28歳頃の江澤さん

SSTではみんなが楽しそうに働いていたし、将来はゲストハウスを運営したいと思っていたので、いろいろ学べそうだと思ってパートナー(SSTではアルバイトとして働く仲間のことをパートナーと呼んでいます)として働くことを決めました。

翌年には社員になり、さらに店長になって、この仕事を極めたいと思っていた28歳の頃、法人営業部への異動の内示を受けました。部長がわざわざ私のところに来たのに「もっと他にやりたい人がいると思います」と即答(笑)。店長という仕事が自分の天職だと思っていたので、本当に異動したくなかったんです。結論は先送りになり、1、2日すごく悩みました。結果的には法人営業部へ異動することを決めましたが、それが今の大きな転換点になったことは間違いありません。

ものも考え方次第。自分だったら絶対に選ばない選択肢でも、誰かがその仕事を私にやらせたいと思っているなら、やらないのはもったいないと思ったんです。私に何を求めているんだろう、どこを評価しているんだろうと人事を決めた背景も気になりだして。異動先の部長がそこを細かく説明をしてくれて、結論を出しました。

私は悩みがあるときはいろいろな人に相談するのですが、この時は幼なじみに話してみたら、「いいじゃん!」と軽い感じで言われて、拍子抜けしたのを覚えています。何でもお試しのつもりで、チャレンジしてみればいいんだなと気づかされました。

「前向きになるには、一度すごくへこんでから」

33歳のわたしへ

その次にやってきたのは、マネージャーの打診。もしマネージャーになったら、当時お付き合いしていた人より役職も給料も上がってしまうかもしれないから、結婚が遠のいちゃう!とまず思ってしまって(笑)。男女の立ち位置が逆転してもうまくいくにはどうしたらいいんでしょうね。いまだに答えはわかりません。

当時は、このままずっと仕事を続けていくかどうかというのも悩みのひとつでした。結局、私はこれからも仕事を続けていこう、自分で収入をちゃんと得ようという覚悟を決めて、マネージャーになりました。もちろん後悔はありません。

マネージャーになったばかりの33歳頃の江澤さん

基本的に私はいつも前向き。ただ、前向きになる前に一度すごくへこむんです。最悪な状態を考えていると、大抵のことは思っていたよりいいっていう(笑)。

だからなのか、何かを選択するときに、大変そうだなと思う方を選ぼうと意識しています。苦労が伴うものを選ぶと、自分の引き出しが増えると思うのです。ところが、ひとつだけ選べなかった選択肢もありました。SSTがスマイルズから分社化する1年前、実は「社長をやらないか」と言われていたんです。すぐには言葉がでてこなくて、まずはなぜか笑ってしまいました(笑)。そのあと、思わずノリで「じゃ、やりますか!」と答えてしまったのですが、よくよく考えて、後日断ることにしました。これだけはノリではできないし、当時の私には到底無理な話でした......(苦笑)。

「1日1個仕事の楽しいところを考える」

telling, 世代のあなたへ

30歳の頃は「家で食べるスープストックトーキョー」という業態の立ち上げを任されていた頃。周りは結婚する人も多かったけれど、私は仕事が楽しかったので、仕事を優先させていました。せっかく仕事をするなら、楽しまないともったいない。小さいことでもいいから、楽しむ努力を惜しまないことが大切だと思います。仕事で楽しくないことを挙げだしたら私もキリがないんです。

今も1日1個でいいから、仕事の楽しいところを考えてみるように意識しています。仕事の文句を言うのは、結果出してからというのが、私なりの働くルールなんです。

●江澤身和さんプロフィール
短大卒業後、2005年、Soup Stock Tokyoにパートナーとして入社。1年後に社員登用され、丸ビル店、アトレ四谷店、エチカ池袋の店長を歴任。その後、法人営業グループへ異動し、冷凍スープの専門店「家で食べるスープストックトーキョー」のブランド立上げと17店舗の新店立上げ・人材開発の責任者を務める。2016年2月、株式会社スープストックトーキョー設立に伴い取締役就任。2018年には「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018」 において、個人部門・チェンジメーカー賞を受賞した。

年間70回以上コンサートに通うクラオタ。国内外のコレクションをチェックするのも好き。美容に命とお金をかけている。
熊本県出身。カメラマン土井武のアシスタントを経て2008年フリーランスに。 カタログ、雑誌、webなど様々な媒体で活動中。二児の母でお酒が大好き。
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