積水ハウス勤務・下津淳子さん(36歳)

「女性の感性を活かせる設計の仕事にやりがいを感じています」

積水ハウス勤務・下津淳子さん(36歳) 大手住宅メーカー・積水ハウスの設計士として、主に富裕層向けの住宅設計を担当している下津淳子(しもつ・じゅんこ)さん。これまで250棟以上の住宅を設計し、若手技術者の育成も精力的にこなしています。「男性社会」のイメージが強い建築業界で、どんな思いで働いてきたのでしょうか。お話をうかがいました。

初めての“現場”は、男の職場だった

私が入社した当時、建築業界の現場は今以上に男性社会でした。女性の設計士などそれまでほとんどいなかったせいでしょうが、最初は大工さんたちに口もきいてもらえず、目も合わせてもらえない状況だったんです。「ヘルメットを被ってください」と言ってもすぐに聞いてくれないし、会話が成り立たない。「とにかく仲良くならないと」と思い、コーヒーを差し入れしたり、少し冗談めかして話しかけてお願いしたりと必死でした。現場の人や営業の人と朝まで飲みに行ったこともあります。「あいつは女子じゃない」と思わせないと、仕事が回らなかったんです。

仕事の環境面でも、女性ならではの苦労はたくさんあります。たとえば私が入社した当時は現場に女性用トイレがないのが当たり前だったので、車で行ける範囲で近隣のコンビニなどを事前にチェックする必要がありました。今は自社で女性用トイレが開発されるなど改善しつつありますが、現場に入るときは周辺のトイレのチェックは欠かせません。

仕事でつらいことは多いですが、陰で泣くことはあっても「人前では絶対に泣かない」というのが鉄則だと思っています。ちょっと何か言われたくらいで涙を見せると、「また泣くから、何も言わないでおこう」と思われて、何も教えてもらえなくなるからです。

仕事は順調、でも、ちょっとしんどい時もある

入社9年目、2013年には現場監督になりました。女性であることの強みを活かせる案件を任せていただけるようになって、仕事にはやりがいを感じています。2014年には、兵庫県明石市の分譲地コモンステージ朝霧「アオノマチ」のまちづくりプロジェクトリーダーを任されました。眼下に紺碧の海と明石海峡大橋を見渡せる分譲地で、ギリシャのまちなみを思わせる白を基調にしたまちづくりをしました。ガイドラインや、自分たちで絵を描いたりプレゼンをしたり、また独自でツールを作成したりと、女性の感性を存分に生かせる仕事で、忘れられない経験になりました。

最近は社内講演の仕事なども任せていただけるようになってきました。楽しいのですが、精神的にはオーバーロード気味で、無理していると思うこともあります。自分には「常に期待に応えないといけない」という思いがあって、壁を乗り越えても、乗り越えても、目の前に高い壁があるように感じています。

結婚しても仕事は続けたい

女性技術者への研修で講演すると、「子どもを産んだら、仕事を続けていけるんでしょうか」と、聞かれることもあります。不安に思う人が多いのは理解できますが、私が入社してから14年間で、会社の制度もどんどん変わってきています。

当社では産休と育休、合わせて最長3年間休めます。キャリアのことを考えて早期復帰する人が多いですが、待機児童問題など考えると安心です。男性の子育てへの取り組みも進んできていて、育児休業として1カ月間「イクメン休業」を取れるんですよ。女性が働いて、男性が育児休業を取るケースもあり、出産しても働きやすい環境になってきたと思います。ハウスメーカーとして、男性も女性も育児中の経験を「家づくり」に活かせるのはメリットですね。

私も、仮に結婚や出産をしたとしても、仕事を辞めることはないと思います。これまで努力して積み上げてきたものなので。先程申し上げたように会社の制度が整っているのも心強いです。

パートナーとは、仕事も含めてお互いを理解し合える関係が理想です。たとえば私の場合、休みの日にも急に仕事が入ることがあるので、そのあたりを理解してくれるととても助かります。

結婚や出産をすることになると、新たなライフスタイルを生み出す必要があり、それによって今の生活にも色々な変化が起きると思います。大変なこともあるかもしれませんが、これまでにないアイデアが生まれたりしたら、仕事にもいい刺激になるのかなと考える事があります。オンオフ問わず、よりクリエイティブになったら素敵ですよね。そういう選択肢もあるんだと思っています。

「難しいことを分かりやすく」伝えるをモットーに医療から気軽に行けるグルメ、美容、ライフスタイルまで幅広く執筆。医学ジャーナリスト協会会員
好きを仕事に