男の落とし方に、もはや正解なんて無くなっちゃいましたよね

女性による、女性のための「恋愛指南書」はあふれている。でも、男性の本音はどうなの?そこで、男性による女性のための恋愛指南書『ハッピーエンドを前提として』(KADOKAWA)の著者で、ブロガーのウイさん(36)に話を聞いてきました。なんでも、「男を落とせる恋愛テク」なるものも、時代によって進化(淘汰?)するようで……令和でも通用する恋愛テクを教えてもらってきました。

――のっけからすみません。超モテ男に話を聞くなら説得力あるんですが、ウイさんのキャラ設定「36歳バツなし彼女なし」ですよね。

ウイさん(以下、ウイ): キャラ設定っていうか、まぎれもない事実ですからね。立派な孤独死予備軍ですよ。

恋愛指南書?って、めちゃくちゃ上から「こうすべきだ」って言ってる本が多いような気がしたんです。僕自身は恋愛の成功者ではないかもしれないけど、それなりに経験してきたし、今、男性からも女性からもたくさん恋愛相談を受けるんですよ。付き合いのある友人はもちろん、ブログやツイッターのフォロワーから月に30件くらい。直接、相談を受けた時は、自分の価値観を置いておいて、とりあえず全部だまってとことん話を聞く。そうしていたら、ずるい男もダメな男も、ずるい女もダメな女もわかってきた。

――悩みに共通点はあるんですか。

ウイ: 男の人が何を考えているかわからない、っていう悩みが多いですね。7回もデートに行ったけど告白されない、好きとは言ってくれないのにセックスはする、とか。

――男の人もいろんな方がいると思うんですけど、ウイさんの答えが正解なんでしょうか。

ウイ: 僕の好みはほとんど反映されていません。多くの男性はこんなこと考えているよ、こうやってやると、ぐっときますよ、ってことを書いています。あくまで大きな分母を狙っているわけです。でも、実際、男なんて単純でちょろい生き物ですからね。

今、大事なのはあざとさよりも素直さ

――2014年のブログでは「彼氏いるの?」と聞かれたら「いないって言ったら、ちゃんと口説いてくれますか」と答えろって言ってますね。
「彼氏いるの?」って聞かれて「いません」って答えてるうちは彼氏できませんよね

ウイ: それはもう使っちゃだめなやつです。変わりますから、人も時代も。今はそういう、あざとさはSNSで全部ばれちゃう時代になりました。あざとさのアップデートも必要です。今日までの正解が、来年の試験では使えないこともあるわけですからね。

今なら「いるって言ったらがっかりしてくれますか?」くらいがいいと思います。幼稚さを武器にしたあざとさは見透かされるし、手軽に作ったかわいいはすぐに壊れることもある。今、大事なのは、あざとさよりも素直さ。匿名のSNSでつぶやくのではなく、目の前の相手に対して、いかに「辛い」「助けて」「好き」って言えるかがより重要な世の中になったと思います。メンヘラみたいですけど、メンヘラと素直さとは紙一重ですからね。

――実際に成功事例はあるんですか。

ウイ: 「ブログの通りに接し方を変えたら彼氏がきでました」「結婚しました」という声もたくさんいただきました。もちろん、書いてある通りにやってもうまくいかないこともたくさんあると思います。でも、大事なのは「いったん素直に受け取れるか」だと思います。僕の本じゃなくても、世の中の本に書いてあることや、他人からの意見をいったん素直に受け入れて、その中から、やれそうなこと、やりたいことを行動に移せるか。ここが大きな差になると思います。
特にうれしかった感想は、幸せな結婚生活を送っていらっしゃるという方から「この本を読んで、私のやってきたことは正解だったんだなっていう答え合わせができた」という声でした。僕は僕で、結婚できていないので、答え合わせをできたようでした。

――私はあまり結婚願望がないんですが、そもそも、なぜ皆「結婚したい」のでしょう?

ウイ: それは抵抗できない本能なんじゃないですかね。自分の遺伝子を残したい、という本能が結局そうさせているのかなって思います。結婚したくないけど子どもは欲しいという想いも、なんなら親が言う「早く孫の顔が見たい」も子孫繁栄の本能だと信じてます。

結婚したら幸せになれるという幻想

――ウイさんは独身で最高に楽しそうですけど、でも結婚したいんですか。

ウイ: 34歳くらいからでしょうか。結婚しなきゃな、じゃなくて、結婚したいなって思うようになりました。でも、年齢を重ねちゃったからこそ、より慎重になっている。樹木希林さんが「結婚なんて若いうちにしなきゃダメなの。物事の分別がついたらできないんだから」って言ってましたけど、本当にその通りになりました。

もちろん、いろんな生き方があっていいと思っています。(複数の恋人を持つ)ポリアモリーでも、ひとりで生きていくよという決意があっても、契約結婚でも。恋愛結婚だけが全てじゃないと思っていますし。
ただ、多くの人が誰かと一緒になりたいと思っている、でもできない。そういう方たちの力になれたらいいなと思っています。これっぽっちでもいいので。

――本の中でも〈3組に1組が離婚している――〉と書いておられます。それでもなお、「結婚したら穏やかな生活が送れる」と思っているのはなぜでしょう?

ウイ: 結婚した方が今よりも幸せになれるんじゃないか、という幻想に似た憧れですね。根拠はありません。日本は3組に1組が離婚している。僕が出席した結婚式の統計を取ってみても、離婚したのは34%でした。

それでも、結婚ってハッピーなことなんじゃないかなって信じているんです。2年くらい前にゼクシィがTVCMで出したコピー「結婚しなくても幸せになれる時代に、あなたと結婚したい」こそが、多くの人が結婚を諦めない気持ちを一番良く表していると思います。僕は一人でも生きていけるけど、それでも、同じく一人で生きていける人と一緒に生きたい。ゼクシィの大勝利です。

――以前、ウイさんが契約結婚を推奨する理由を取材させていただきました。ウイさんが考える理想の結婚は、やはり契約結婚ですか。

ウイ: もちろん、以前お話したように恋愛結婚じゃなくてもいいと思っています。契約結婚にも抵抗はありません。一時の愛情に流されるのではなく、事前に取り決めを交わした形。もちろん、恋愛結婚を完全に諦めてるわけではないのですが、ひとつの選択肢としてありかなと今でも変わらず考えています。
大事なのは、どんな結婚であっても自信もってふたりが「最高に幸せですよ」と胸張って言えることだと思っています。

【取材後記】
telling,の取材で、たくさんの“結婚のかたち”を見てきました。一夫多妻、ポリアモリー、オープンマリッジ、非婚出産……。みなさん、それぞれに自身の「結婚のかたち」を模索しているようでした。(ちなみに、ウイさんに初めて取材したのは「契約結婚」についてでした)。
リアル「逃げ恥」?商談のように条件を決めて、契約結婚を試みる男女

型どおりの「結婚」にはまるのも窮屈でしんどい。だからといって、私らしさを追求するには相当の覚悟が必要。そんな方たちをたくさん見てきた私が出した答えは「結婚しなきゃいいじゃーん!」でした。ある意味、思考停止。

同じように、たくさんの男女から恋愛相談を受けて、酸いも甘いも知り尽くしている(はず)のウイさんはどういう考え方なんだろう……と思い、今回の取材に臨みました。聞いてみると「結婚したら幸せになれるという幻想がある」というまさかの展開。「なんで?」と聞くも、「本能」という。それを言われたら、飲み込むしかない。本能……。

●ウイさんプロフィール
1982年、山形生まれ。彼女なし。自称恋愛結婚不適合者。会社員のかたわら、月間PV約95万のブログ「ハッピーエンドを前提として」を運営。恋愛ハウツー記事が人気で、ツイッター(@ui0723)のフォロワーは約4万人。

ハッピーエンドを前提として

著:ウイ

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。