【安藤なつ】恋愛観について、あなただけに言うぞ
●乙女とたこ焼き 09
今回は今まであまり語らなった恋愛観についても話してみたいと思う。
かれこれ7年前に初めて彼氏ができた。
芸人の先輩が経営しているバーのお客さんだった人だ。
「お前のこと気に入っているんだって」と言われた。一方的に好かれていたのだ。
初めて会ったとき、顔はかっこいいと思ったが、タイプではないという印象だった。
付き合うつもりはなかったのだが、周りからの「付き合ってみなきゃわかんなくね?」という押しがあり、何回かデートに誘われ、その流れで付き合うことになった。
結果からいうと、付き合ってすぐ「無理です」となるのだが。振り返ると、第一印象がくつがえることはあまりないのかなぁと思う。
ということで、数少ない恋愛の中でも「黒歴史」だったこの件について、あなただけに話してみたい。
すれ違った点はいくつかあるが、その中でも「金銭感覚の違い」は大きかった。
当時、日中は毎日ライブに出て、夜は週3で介護のアルバイトをしていた。
それでも給料は月に手取り10~13万円程度。経済的にカツカツの状態だった。
一方、彼は給料のいい会社に勤めていて、生活水準が高かった。
収入の格差がある中、彼の方針で食事はいつも折半だった。平等に付き合うことはいいことだと思うが、一回のデートで最低5000円は飛んでいくのは痛かった。
お酒もよく飲む人だった。こっちの生活レベルも考えてほしいと何度も思い、そういう話をまじめにしても、アルコールが入っていると翌日には「覚えてない」と言う。
忘れられないのは、緑茶と焼酎を口の中に注ぎ、「口の中で緑茶ハイ」を作っていたこと。これはさすがに引いた……。
そうして、経済的にも精神的にもついていけなくなり、数カ月で「もう無理!」と思って別れた。
しんみりしてしまっただろうか。
安藤なつにも恋愛の黒歴史があったのか!と笑い飛ばしてもらえたらうれしいぞ。
仕事柄、多くの人に出会うが、ときめいたことは正直ない。
「なっちゃんのこと好きな人、絶対いるよ」とよく言われるが、「じゃ、紹介してよ」と返すと「周りにはいないかな~」と言われる。この不毛なやり取りはそろそろやめたいと常々思っている。
最近は顔と名前も知られてきてうれしい一方、「これは財布に使われているな」と思うことも出てきた。
ご飯に誘われて行っても、会計は全部こちら持ちということが続くと、利用されていると思ってしまう。本当に好いてくれているのか裏があるのか、その判別が難しい。
いっそのこと、自分のことを全く知らない人と付き合いたいと思うこともある。
もう、カナダ在住のトナカイとか引いているおじさんでもいい。
仕事や肩書ではなく、安藤なつ個人のことを見てくれる人に出会えたらいいなと思う。
構成:小野 ヒデコ
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