教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」18

会社の内々定が突然、取り消しに!そんな時、損害賠償請求できるの?

仕事でモヤモヤ、夫にモヤモヤ、人間関係でモヤモヤ。もしかしたら、法律を味方にすれば少しだけ生きやすくできるかも!日々の困りごとを弁護士の澤井康生先生が、ミレニアル女子目線でやさしく解説します。今回のテーマは、就活で会社からもらっていた内々定がいきなり取り消された場合について。本当にあった裁判例をもとに考えます。 A子:MM商事経理部主任 B子:法務部主任

●教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」18

B子:A子、お疲れ様。

A子:あ、B子さん、お疲れ様、実はまた相談したいことができて。

B子:今度はどうしたの?

A子:今日は私じゃなくて私の妹の相談なんだけど。いいかしら?

B子:A子さん、妹さんがいたのね。それで妹さんがどうしたの?

A子:うちの妹は大学4年生でね、ある金融機関から内々定をもらっていたのよ。それなのに内定式直前に急に取り消されちゃって、困っているのよ。

B子:あら、それは大変。今も就職活動しているの?

A子:内々定取り消し後に急いで就職活動を再開したんだけど、まだ決まっていなくて。その会社の対応がひどいから、何か文句を言ってやれないかと思ったのよ。

B子:内々定が取り消しになった事情をもう少し詳しく教えてよ。

A子:妹は4月ごろにその会社の説明会に出席して、適性検査とか面接試験をパスして5月末に採用内々定の通知書をもらったのよ。そのときに入社承諾書の提出も求められたので、それも提出したそうよ。

B子:妹さんは他の企業も受けていたのよね。

A子:ええ、だから、他の企業の採用選考は全て辞退しちゃったのよ。

B子:取り消された会社では、まだ内定までは行ってなかったのね?

A子:内々定通知書には、10月1日に正式な内定を予定していると書かれていたのよ。でもその後、金融業界の景気が悪化してね。妹は心配になって7月から9月にかけて何回かその会社に確認したんだけど、大丈夫だって言われて安心していたのよ。

B子:うんうん、それで?

A子:そしたら9月末ごろになって突然、その会社が経営状況の悪化により内々定を取消すと言ってきたのよ。妹は当然、文句を言ったんだけど、会社からはそれ以上何の説明もなかったのよ。

B子:内定式直前になってから取消しするなんて、その会社ひどいわね。

A子:でしょ、でしょ。内定式前とはいえ、入社承諾書まで提出していたんだから、契約違反で訴えることができないかと思って。内定式後の取り消しだったら、裁判で勝って損害賠償をもらったケースがあると聞いたことがあるわ。

B子:確かに内定までいけば労働契約が成立するからね。でも妹さんの場合は内定前の内々定だからそう簡単じゃないわね。何点か確認させて。内々定後に具体的な労働条件の提示とか、入社に向けた手続きとかはあったのかしら。

A子:そういうことは特になかったみたい。

B子:内々定の通知書は誰の名義で作成されていたの?
A子:その会社の社長ではなくて、人事部担当者の名義よ。

B子:うーん、そういう状態だとストレートに契約違反を主張するのは難しいわね。以前、同じような内々定の取消しの事件で「内々定は正式な内定までの間、企業が新卒者をできるだけ囲い込んで他の企業に流れ出ることを防ごうとする事実上の活動にすぎない」として、労働契約の成立を否定した判決があるのよ(福岡高裁平成23年3月10日判決を簡略化しています)。

A子:じゃあ、何も言えないの!泣き寝入り?

B子:いいえ、そんなことはないわよ。その事件では「内定式の日が定められた後においては会社と内々定者との間で労働契約が確実に締結されるであろうとの内々定者の期待は法的保護に十分に値する程度に高まっていた」として、会社側に不法行為の成立が認められて50万円の慰謝料請求が認められているのよ(福岡高裁平成23年3月10日判決を簡略化しています)。

A子:要するに、内定は成立していないから労働契約違反にはならないけど、内々定者の期待権を侵害したから損害賠償請求は認められるっていうことね。

B子:そういうことよ。

A子:ありがとう、B子。そういう方法もあるってことを妹に教えてあげるわ。

B子:そういえば、今回は珍しくA子のトラブルじゃなかったわね。

A子:でもトラブルが多いのはうちの家系かも。

B子:血は争えないとはよく言ったものね……。

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■澤井康生先生のプロフィールはこちら
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書『捜査本部というすごい仕組み』(マイナビ新書)など。

元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。MBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。
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