瀬戸康史

瀬戸康史さん「愛することは、その相手を信じること」。恋から愛に変わる瞬間が訪れる

17歳でデビューし、俳優としてドラマ、映画、舞台と活躍の幅を広げてきた瀬戸康史さん。近作、三谷幸喜さん脚本・監督の映画『スオミの話をしよう』(9月13日公開)では、刑事・小磯杜夫役を演じます。36歳の今、仕事への向き合い方や恋愛観などに変化も感じると語ります。
瀬戸康史さん、三谷作品のワクワク感を“軽さ”で表現。映画『スオミの話をしよう』で刑事役 【画像】瀬戸康史さんの撮り下ろし写真

人と比べる考え方は捨てた

――来年はデビュー20年を迎えます。年齢とキャリアを重ね、仕事への向き合い方に変化はありましたか?

瀬戸康史さん(以下、瀬戸): もともと獣医を目指していましたが、母が今の事務所に応募したのをきっかけに、俳優という仕事に就きました。自分からすすんで入った世界ではなかったし、それこそ最初は右も左も分からなかったので、事務所からいただいた仕事を何でもいいからやるというスタンスでした。

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経験を積んで、20代前半ぐらいからは自分の意思も少しずつ出てくるようになり、そこから現在までは、考え方はそれほど変わっていないかもしれません。作品の面白さや、自分が演じるのが想像できないような役に興味を持って、本当に好きなことをやりたいと思っています。

そういった自分の直感を信じることは変わっていませんし、あまり迷うこともない。ただ、どんな仕事でも、楽な選択をするのではなく、常に自分が乗り越えるべき壁を作り、それに向き合うことが必要だと思うようになりました。

――年齢を重ねると現場では若手の俳優も増えてきて、先輩としてのプレッシャーはありますか?

瀬戸: 全くないです。他人のことを気にする暇がないし、そういう時間自体が無駄ですから。他人と自分を比べる考え方は、20代前半ぐらいで捨てました。自分は自分。自分が頑張るしかないと。

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パートナーを尊敬しているからできること

――『スオミの話をしよう』の小磯杜夫役は、刑事という多忙な仕事柄、出会いのなさに悩むシーンも。今春放送のドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)では、主人公を優しく見守る西公太郎役を好演されていました。いま、恋愛をしない生き方を選ぶ人もいますが、恋をすることのメリットは、どんなところにあると思いますか?

瀬戸: 単純かもしれませんが、「仕事を頑張ろう」とか「自分を磨こう」などと前向きな気持ちになることですね。それは、恋とは関係なく、例えば趣味でもいいと思うんです。何かに一生懸命になることは、自分の生き方を豊かにする意味でも大事。恋愛以外でそれができるのなら、たとえ「恋をしない」という選択をしても、その人自身、輝くことはできるのではないでしょうか。

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――『くる恋』の公太郎のように、年齢を重ねると、恋愛にも落ち着きや余裕が出てくるように思います。瀬戸さんご自身は、結婚してから考え方が変わったことはありますか?

瀬戸: 自分に余裕があるかどうかは分かりませんが、やっぱり、愛することは、その相手を信じることだと思うんです。それがたぶん、「恋」から「愛」に変わる瞬間なのかなと。それはパートナーを尊敬しているからできることだし、自分自身、成長したなと感じます。

悩みを打ち明けられず、元気ぶっていた頃も

――瀬戸さんと同世代の女性たちの中には、仕事のキャリアや結婚、出産など人生のさまざまな岐路に立ち、「やりたいことがあっても、なかなか一歩が踏み出せない」と悩み、迷う人たちもいます。新たなチャレンジをする上でアドバイスがありましたら、ぜひお願いします。

瀬戸: 自分がどれだけ成長したいのかを考えれば、足が前に進むようにも思うけれど、様々な事情もあってなかなか難しいですよね。大切なのは、ひとりで悩まないこと。誰かに話すと「小さなことで悩んでいたな」って背中を押してもらえるような気持ちにもなれると思いますし、僕もそうしています。

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この仕事を始めた10代のころは、ずっとひとりで悩んでいました。地元の福岡県から単身で上京して、周りに話せる人が誰もいなかったんです。家族に電話で仕事の悩みや愚痴を言おうと思っても、「不安な気持ちにさせたくない」という思いが上回っていたし、親には、息子を東京に行かせたことを後悔してほしくなかった。だから、悩みを打ち明けずに、いつも元気ぶっていました。でも、その時は、やっぱりしんどかったですね。誰かに話せるようになってからは、気持ちが楽になりました。

例えば、パートナーでもいいし、誰かに話を聞いてもらうだけでも、自分の頭が整理されて、もしかしたら何かを発見することだってできるかもしれない。少しでも話してみれば、迷いを解き放つことにつながるんじゃないかな。

ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:田村和之

瀬戸康史さん、三谷作品のワクワク感を“軽さ”で表現。映画『スオミの話をしよう』で刑事役 【画像】瀬戸康史さんの撮り下ろし写真

●瀬戸康史(せと・こうじ)さんのプロフィール

1988年生まれ、福岡県出身。2005年デビュー。近年の出演作は、映画『愛なのに』、『違国日記』、ドラマ『鎌倉殿の13人』、『院内警察』、『くるり~誰が私と恋をした?~』、舞台『笑の大学』など。2011年よりNHK Eテレ『グレーテルのかまど』でナビゲーターを務める。9月開演の舞台『A Number―数』では2人芝居で1人3役に挑む。

■『スオミの話をしよう』

出演:長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎、戸塚純貴、阿南健治、梶原善、宮澤エマ
脚本・監督:三谷幸喜 9月13日(金)全国公開
制作プロダクション:エピスコープ
配給:東宝
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会

神奈川県出身。早稲田大学商学部卒業。新聞社のウェブを中心に編集、ライター、デザイン、ディレクションを経験。学生時代にマーケティングを学び、小学校の教員免許と保育士の資格を持つ。音楽ライブ、銭湯、サードプレイスに興味がある、悩み多き行動派。
1993年生まれ。大学卒業後、出版社写真部に所属した後、フリーランスとして活動中。