岡田将生さん、自分の気持ちを見失いがちだった20代を経て「もっと“言葉”を知りたい」
苦手な人付き合いも「チームのために」
――8月で35歳になられます。30代に入ってから何か心境に変化はありましたか?
岡田将生さん(以下、岡田): 新人とは言えない年齢になって、作品に対する責任感は増しています。最大のパフォーマンスが発揮できるようにと、以前に比べて準備を入念に行うようになりました。
20代はとにかく突っ走ることができる年齢。今思えば、当時は自分のことばかり考えていましたね。ひとりでは作品をつくれないということは、頭ではわかっていたつもりだったけど……。周りの人との良い人間関係づくりが、チーム力を生んで、良い作品につながっていくんだと、30代に入ってようやく理解したというか。「チームのために自分はどうするか」という視点がないといけないなと、最近よく考えます。
――人とのコミュニケーションや関係づくりにも力を注ぐようになったと。
岡田: そうですね。年下の方たちと仕事をする機会も増えたので、僕が先輩方にしてもらっていたように、一緒にご飯を食べにいくとか、仕事の話を聞くとか。できる範囲で、ですけどね。
本心を言うと、人付き合いにはめちゃくちゃ苦手意識があります。大人数の集まりも得意じゃない。できれば初対面の人と話すのは避けたいくらい(笑)。それでもこの年齢や立場になって「人見知りです」とばかり言ってはいられないな、と。
ゆとりをつくって語学に挑戦したいけれど……
――30代後半に向けて、やってみたいことはありますか?
岡田: 海外の作品に参加したいと思っています。ただ役を演じるにも言葉の壁があるので、いつか越えたいと思いつつ……日々の仕事に追われていると、なかなかそれだけに専念するのは難しくて。
――「次はこれに挑戦したい」と思っても、今ある仕事やプライベートの忙しさに追われてしまって、なかなか手が回らないことはよくありますよね。
岡田: 目の前のことで、つい頭がいっぱいになってしまうんですよね。でも、だからといって自分のキャパを超えてまで、無理をして新しいことに手を出すのは良くないな、とも思う。今やるべきことを、一つずつこなしていくのも大事なこと。自分を追い詰めるのではなく、自分にゆとりをつくってから、次への一歩を踏み出さないとなと思っています。
自分の気持ちに迷ったら、大切な人に会いにいく
――仕事にプライベートにと、変化が激しく悩みも多い年代ですが、同世代に向けて何かエールをいただけないでしょうか。
岡田: 何があっても自分を見失わないように。まず自分自身の心と会話しましょう……って、僕自身に言っていることでもあるんですが。同世代の人は、役職についたりして、仕事も責任も増えるタイミング。結婚や出産などプライベートで変化がある人もいるかもしれないし、すごく大変な時期だと思います。だからこそ、自分がどうしたいかを見失わないことが大事ですよね。
なんて偉そうに言っていますけど、僕はしょっちゅう自分を見失います(笑)。特に20代のときはプレッシャーも大きかったし、ひとりの時間が少ないことで、どんどん自分がどうしたいかがわからなくなっていった。その結果、人に失礼な態度を取ったこともありました。自分を大事にしていないと、人のことも大事にできなくなっていくんですよね。そのとき辛かったからこそ、今は自分の気持ちを丁寧に見つめていたいと思う。自分を大事にして、人も大事にしたい。
――自分の気持ちがわからなくなったとき、何かしていることはありますか?
岡田: 僕は、自分にとって大切な人たちに会いにいくようにしています。だいたい友達や家族ですね。そして、その人たちに向かって、自分の気持ちを話してみるんです。
捉えどころがないような気持ちでも、言葉にしないと自分もわからないし、誰にも伝わらない。「僕はこう思っている」「こういうことがあったから、今、僕は悲しいんだ」。そうやって気持ちを言語化するのは難しいけれど、頑張って言葉にしてみる。躊躇(ちゅうちょ)なく気持ちを伝えられる相手に話してみることで、自分の気持ちが明確になっていくんです。
自分を知るのは難しいですよね。だから、これからもっと小説を読もうと思っているんですよ。僕には、もっと「言葉」が必要だと思うので。
――「自分の気持ちをストレートに伝えても大丈夫だ」と思えるような人は、自分を見失わないためにも大切な存在ですね。
岡田: 本当にそうです。だから……僕は今から悩みを打ち明けるんですけど(笑)、この年齢になると家庭を持っている友達も多くて、なかなか独身時代のようには自由に会えなくなってきていて。それが……寂しくて(笑)。これも30代半ばの“あるある”かな。
●岡田将生(おかだ・まさき)さんのプロフィール
1989年生まれ、東京都出身。2006年にデビュー。近年の主な出演作に、第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』、『ゆとりですがなにか インターナショナル』、『ゴールド・ボーイ』、ドラマ『ザ・トラベルナース』など。8月23日に映画『ラストマイル』、11月には『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』が公開予定。
原作:渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載)
出演:高畑充希 岡田将生 西野七瀬 高良健吾 ほか
監督:今泉力哉
脚本:今泉かおり
企画・プロデュース :佐藤順子
製作:murmur 制作プロダクション:Lat-Lon
6月14日(金)からPrime Videoで独占配信
©︎渡辺ペコ/講談社©murmur Co., Ltd.