人気ブランド「ミースロエ」が目指す、等身大のサステナビリティ
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●わたしと未来のつなぎ方 49
30代になった自分が「本当に着たい服」を求めて
シンプルでありながらディテールにこだわっていて、着てみるとなんとなくしっくりくる。しかも、機能的でサステナブル。働く女性を中心に支持を集めている「ミースロエ」は、ディレクター兼デザイナーの坂上典子さんのファッションへの強い思いから生まれたブランドだ。誕生のきっかけは、坂上さんが30代に入り、心境に変化が起きたことにあった。
「20代の頃は私も周りの友人たちも、自分が何を着たいかより、他人にどう見られたいかを軸にファッションを選んでいたところがありました。ところが30代になると、『これからはこういう人生を歩んでいきたい』『毎日の暮らしにこういうものを取り入れていきたい』といったふうに、自分が何を大切にしながら生きていきたいのかという目線でモノを選ぶようになって。そこで『私は今、何が着たい?』と周りを見渡したときに、欲しい服がなかったんです」
今どき感は欲しいけれど、ワンシーズンで飽きてしまうような服は着たくない。週に2回、3回とヘビロテしたくなるような、おしゃれで肌触りがよく、シワになりにくくて自宅で手入れしやすいもの。長く愛し続けることができて、その結果、地球環境への負荷を減らせるもの。それが、坂上さんが着たい服だった。世の中にないものは、新たに作るしかない。母体であるマッシュスタイルラボの社長に自らプレゼンし、何度もミーティングを重ねた末、念願かなって誕生したのが「ミースロエ」だ。
クリーンな生産背景、自分の目で確かめて発信
「社長に最初にプレゼンした時点で、サステナブルなブランドであることはマストですね、という話にはなっていました」と坂上さん。「これだけモノがあふれている中で、新たなブランドを立ち上げるからには、私たちのモノづくりが『人の幸せ』と『社会貢献』につながらなければ、やる意味がないと思いました」
素材はできるだけサステナブルなものを使用。なかでも積極的に取り入れているのがリサイクルポリエステルで、環境に優しいだけでなく、シワになりにくく、さまざまなアイテムに使える優秀な素材なのだそう。カットソーなど一部のアイテムには、肌触りのいいオーガニックコットンを採用している。
「おつき合いさせていただいている工場やメーカーが実際にどのようにサステナビリティに取り組んでいるのか、見学におじゃますることもあります。例えば、『ミースロエ』のデニムの生地は水資源をきちんとリサイクルしている岡山の工場で作られているのですが、工場を訪問してみたら、生地を生産する際に出る粉塵を飼料へとアップサイクルするなど、私たちの想像以上に環境への配慮がされていました。こうしたお取り引き先のクリーンな生産背景を発信していくことも、私たちの役割だと思っています」(坂上さん)
より少ないことは、むしろ豊かなこと
「ミースロエ」というブランド名は、「ユニバーサルスペース(=床、天井、壁、最小限の柱で構成された空間)」を提唱したドイツの建築家、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエに由来する。彼が遺した有名なフレーズ「Less is more.(=より少ないことは豊かなこと)」「God is in the details.(=神は細部に宿る)」はまさしく「ミースロエ」のブランドコンセプトでもある。
2022年3月にブランドを立ち上げて以来、通販サイトを中心に販売してきたが、今年3月には関東地区初となるリアルショップをルミネ新宿 ルミネ1にオープン。新たなファンも着々と増えている。とはいえ、「アイテム数も店舗数も絞り、自分たちが責任をきちんともてる範囲でビジネスをしていく」という坂上さんの立ち上げ当初からの姿勢に変わりはない。
「購入してくださった方が絶対に幸せになれると確信のもてるアイテムしか作っていないので、品数は一般のブランドと比べると3分の2程度か、もしかしたら半分くらいかもしれません。ですが、どれもミリ単位でシルエットにこだわったもの。そのアイテムを作る意味を一点一点考えながら、長く愛していただけるモノづくりを目指しています」(坂上さん)
サステナビリティを新たな付加価値に
ブランド誕生から2年が過ぎた今、「あらためて初心に返って頑張りたいと思っています」と坂上さん。
「意味のあるモノづくりしかしないと決めて、目の前のことに必死になりながら無我夢中で走ってきました。そんな2年間を経て思うのは、チャレンジできることがどんどん増えているなということ。本当に必要な服、心から身につけたいと思えるアイテムづくりはもちろん、たとえば、人生を豊かにするアートやインテリアなど、さまざまな提案をしていけたらと思っています」(坂上さん)
目標は、ファッションで人を幸せにすること。店頭やオンラインで見かけて気に入った服が、よく見たらサステナブルだった——そんな付加価値を提供し続けていけるように、自身もブランドも成長していきたいと語ってくれた。
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ミースロエ
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Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi