笹川友里

元TBSアナ・笹川友里さん、まもなく2児の母に。「“子育ては母”との思い込みに気付いた」

元TBSアナウンサーの笹川友里さんは、2017年にフェンシング五輪メダリストの太田雄貴さんと結婚、19年に第一子を、今年12月には第2子を出産予定です。TBSを退職しフリーになって2年半が経つ今、新たな一歩を踏み出したきっかけは夫の後押しだったとふり返ります。夫婦喧嘩はほとんどしないという笹川さんにとって、結婚生活におけるキーワードは、「自立」と「応援」だと語ります。
元TBSアナ・笹川友里さん「女性のしなやかな働き方を後押ししたい」。キャリア支援会社を設立 【画像】笹川友里さんの撮り下ろし写真

「子育ては女性がするもの」と思い込んでいた

――まもなく第2子を出産予定ですね。2回目の妊娠で、夫婦間における役割分担などに変化はありましたか?(取材は11月中旬)

笹川友里さん(以下、笹川): 夫が良い意味で変化をしました。長女は4歳になってしっかりと自分の言葉で コミュニケーションできるようになり、子どもが懐いてくれたことで子育てが一気に楽しくなったみたいです。夫は関西人なこともあって、遊び方にしても「どうにかして娘を笑かしたい 」というのがあるみたいです。例えば、おままごとする際、聞いたこともない料理を作ってみようなどと言ってみたり、急にダンスと歌が始まったり(笑)。今回の妊娠中、父娘2人で夫の実家の京都に帰省をしました。娘はパパが大好きで、夫も「子育てが楽しい」って言っていて。正直、以前は全く想像できなかったことです。

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実は、私は1回目の出産が結構大変で、そのトラウマもあり、再び妊娠したいと思うまでに時間がかかってしまいました。なので、2人目の子どもの妊娠、出産、育児に対して自信が持てなかったのですが、やっぱり2人目も授かりたい……といった、複雑な心持ちでもありました。

これまで、夫のことを人として信頼はしていました。でも、「父親」としての面でどこまで頼れるかと考えた時、「私が全部やらなきゃ」って思っていたんです。でも、今の夫を見ていると、本当に心強くて。経験を積むことによって、夫婦の絆が強くなったと思います。

――笹川さんは結婚、出産と環境が変わっていく中で、「変えたこと」と「変えなかったこと」があったら教えてください。

笹川: 自分で決めたルールは、あまり崩したくないタイプだったんですが、2人目を妊娠し、つわりの中で働いていた時、「一度自分のルールを崩壊させないと苦しくなるな」と思った瞬間がありました。

今回の妊娠中、子どものものは別として、自分が食べるものはわざわざ火をかけたりしたくないと思い 、惣菜やデリバリーを活用してみたら、なんと楽で、早くて、おいしいのかと(笑)。これまでは自分で料理をするのが基本だったのですが、それからは夫に対しても「今日はお蕎麦屋さんで食事を済ませない?」と提案するなど、家庭内で小さな変化を起こしました。以前は疲れている日でも、どうにか作ろうとしていましたが、今では無理をし過ぎないようにしています。みなさんも小さな手抜きからでいいので、始めてみると意外にマイルールを崩すことができてラクになるかもしれません。

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その一方で、変わっていないのは体調管理です。アナウンサーという仕事柄、早朝勤務もあったので、独身時代から体調を崩さないことは常に考えてきました。出産後、私が体調を崩すと、家庭内が回らなくなる経験もしたので、自分の体調を整えたり、休息でマッサージや整体、ジム に行ったりすることは「甘え」ではなく、仕事の一環として捉えています。

――子育てにおいては、まだまだ「母親がするもの」という世間の圧力や、刷り込みがあると思います。

笹川: はい、自分の感覚が古いことを反省したことがあります。会社員の父と、子育てを優先してくれていた母のもと、ベッドタウンで育ちました。どの家庭も、子どもと公園に行くのは「ママ」でした。その刷り込みがあったので、以前住んでいた東京都渋谷区あたりの公園へ土日に娘と行くと 「パパと子ども」が多い光景が、自分にとって衝撃映像でした。

その時、「子育ては女性がやるもの」って思い込んでいたことに気づいたと同時に、無意識に刷り込まれていることを怖いと思いましたね。外に目を向けてみると、パパさんが子育てに注力している家庭もあるので、自分の意識改革も必要だと思いました。「もうちょっとパパできるんじゃないの?」と提案して、夫婦で議論をしていかないと、「ママが頑張る」という環境は変わらない気がします。

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「あなたはあなたの人生を生きてください」

――夫婦間で、喧嘩や衝突をすることはありますか?

笹川: 喧嘩はほとんどありません。夫が非常に穏やかな人間というのと、お互い衝突するのが好きではないこともあり、喧嘩にエネルギーを割きたくなくて。言いたいことがある時は、例えば、朝などお互い時間がある時に、 仕事や子育ての話をする中で冷静に言うことがあります。

基本的に、夫がアスリートだったので、メンタリティが強いことが大きいです。私がわーっと言いたいことを言ったとしても、「わかった」って言って受け止めてくれる。感情をコントロールできていて、よい意味で人に気を遣わないことができる人です。

よくあるパターンが、職場で人に気を遣って疲れ、家庭でまたストレスを溜めてしまうこともあると思うのですが、夫はそれが全くなくて、ストレスを溜めないタイプなんです。

――2年半前にTBSを退職し独立された時も、夫婦間で話し合われたのでしょうか?

笹川: 今思えば、夫に背中を押してもらったことが大きいと感じています。私は中学から大学まで附属校だったこともあり、どちらかというと敷かれたレールをずっと走ってきたタイプでした。なので、入社当時は、まさか自分が会社を辞めるなんて思ってもいませんでした。

でも、第1子を出産し、育休を取得し、今後の生き方やキャリアに悩んでいる時、夫に「自分ではすごく保守的なタイプだと思っているみたいだけど、僕はそう思ってないよ。多分チャレンジする方が向いているし、それを楽しめるタイプだと思うから、復職後も今の会社で勤め続けるのももちろんいいけど、一旦チャレンジしてみたら」と言われました。独立を考えたのは、実は夫からの言葉でした。

そもそも、夫と結婚をする際、「太田雄貴を支えます!」というテンションで、寿退社をする気満々だったのですが、夫自身に止めらまして(苦笑)。「いや、頑張って僕を支える必要はない。1回社会から距離を取ったら、戻りたくても戻れなくなるかもしれないし、僕も重荷だから、あなたはあなたの人生を生きてください。ぜひ」って拒否されたんです(笑)。

そう言われて、結婚をしても出産をしても仕事を続けていく選択をし続けました。その結果が、今回の起業にも繋がっています。

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夫婦それぞれの世界を持つと、対等でいられる

――現在、夫婦間での育児、家事の分担はどのようにされていますか?

笹川: ベースは私なのですが、2人目を妊娠してからは、夫が育児も家事も結構やってくれるようになりました。今やっておいた方がいいことを夫が率先して見つけて、フォローしてくれたりすることもあります。

以前は、料理においても買い物から調理、後片付けまで、基本的に全部私がしていたのですが、今は私が作った日は、夫がお皿を洗うように。夫が鍋料理を作った日は、私が皿洗いをするなど、自然とルールが変わっていくことを実感しています。

反対に、妊娠などの転機に変化しないと、この先も変わることはないのかもしれないとも思っています。1人目や2人目の妊娠のタイミングで、夫婦で話し合いの機会を持つのも、絶好のチャンスかもしれないですね。「今、ちょっとしんどい」と伝えたり、甘えたりすることに慣れたりとか。

子育ての面では、時々、夫が娘と向き合って話しているのを見てハッとすることがあります。「私だったらこうしちゃうけど、そうやってあげるんだ、優しいな」とか、「ここは私がフォローに入ろうかな」とか。娘というフィルターを通して、お互い別の人間性が見えていることを興味深く感じています。

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――もうすぐ、家族が増えますね。今時点で思い描いている理想の夫婦像があったら教えてください。

笹川: 家庭だけではなく、夫婦それぞれが自分の世界を持っていると、ずっと対等でいられるのではと思っています。

女性は、子育て、仕事、美容など評価軸が多過ぎることも感じています。逆にそれを逆手に取って、マルチタスク能力を上げたり、それぞれの分野で活かせるものを活かしていき、相乗効果を得られたりすることも可能だとポジティブにも捉えています。

お互い胸を張って話せる話題や得意分野がある夫婦は、すごく素敵だなと思っていて。自立していて、応援し合っている夫婦は、いつまでも話題も絶えないし、ずっと仲が良いと思います。

結果的に、私は悩みながらもキャリアを自ら築いていく選択をし、独立しました。自分が活躍できる場をお互い持っていられる夫婦でいられたら良いなと思っています。

元TBSアナ・笹川友里さん「女性のしなやかな働き方を後押ししたい」。キャリア支援会社を設立 【画像】笹川友里さんの撮り下ろし写真

●笹川友里(ささがわ・ゆり)さんのプロフィール

1990年、神奈川県生まれ。日本女子大学卒業後、TBSテレビに入社し、制作ADから人事異動でアナウンサーに。2021年に独立し、個人事務所「setten」を設立。23年に女性向けキャリア支援会社「NewMe」を共同創業。キャリアの可能性を広げたい女性のための転職サービス「NewMe Jobs」、仕事と向き合い“自分らしく人生をハンドリングしたい女性”のためのメディア「NewMe Story」をローンチした。現在はラジオ、ファッション誌でのモデルをはじめ、女性のためのサウナ「Sauna Therapy」を共同経営するなど多方面で活躍中。夫はフェンシング選手で北京オリンピック銀メダリストの太田雄貴さんで、1児の母。12月に第2子を出産予定。

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。