地域課題の解決と循環に挑むセレクトショップ「フリークス ストア」
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●わたしと未来のつなぎ方 44
「その土地でしか体験できない何か」を全国に展開
「フリークス ストア」はファッション好きには名の通ったセレクトショップ。「自分たちが本当に良いと思うもの」を中心に、インポートやオリジナルの服や小物、生活雑貨などを扱っている。現在は北海道から九州まで、全国に53店舗(2023年12月時点)を構える。
そんな「フリークス ストア」の特徴のひとつが、全国の各店舗が独自に商品やイベントの企画を行い、“その土地でしか体験できない何か”をたくさん生み出してきたこと。地元の面白いアーティストやクリエイター、ブランドなどとタッグを組み、これまでに多い年で年間200以上もの企画を展開してきたそう。
2023年11月には、そんな各地のユニークなコラボレーションを発信していくプロジェクト「フリークスビレッジ(FREAK’S VILLAGE)」がスタート。これまではその地域の店舗でしか購入できなかった企画商品が、オンラインでも買えるようになった。
「フリークスビレッジ」を立ち上げた理由について、「フリークス ストア」を運営する株式会社デイトナ・インターナショナルのブランディング本部の部長、清宮雄樹さんはこう語る。
「フリークという言葉には、“熱狂的”という意味があります。僕たちはこれまで自分たちが『好き』『楽しい』と感じるものを、情熱をもって発信してきましたが、そんななかで、各地の熱いアーティストやクリエイターとの化学反応により生まれていったのが、その地域ならではの企画商品の数々です。そんな商品たちを、いつでもどこにいても楽しめる場を作れば、別の化学反応が生まれて、いろんなつながりが広がっていくんじゃないかと。そんな思いから、今回、『フリークスビレッジ』をローンチしました」
過疎化、獣害、耕作放棄地……絡み合う課題の解決を目指して
「フリークスビレッジ」のウェブサイトを見ると、個性豊かなクリエイターやアーティストとのコラボアイテムが並ぶほか、「地域創生」とカテゴライズされたコーナーが。「フリークス ストア」では近年、ローカルの魅力を発掘し、行政や異業種と協業しながら地域の課題解決を目指す取り組みを行っていて、「フリークスビレッジ」ではそこから派生したアイテムも扱っている。
そのひとつである「爆裂!シナノポップ」は、長野県の耕作放棄地から生まれた国産のポップコーン。農薬不使用で育てた「爆裂種」というポップコーン向きのトウモロコシが真空パックに詰められていて、切り込みを入れて電子レンジで加熱するだけでポップコーンが完成する。
「実はこのアイテムが生まれたのは、20年以上地域に根差してきた『フリークス ストア長野』での、あるお客さまとスタッフとの会話がきっかけでした」と清宮さん。
その常連客は長野県庁のジビエ振興室の担当者(当時)で、獣害問題への対策に向けて、「フリークス ストア」と一緒に何かできないかとスタッフと話が盛り上がり、長野県産のシカ肉を使用した『ジビエフリーク缶』を共同開発することになったという。そのときに知ったのが、耕作放棄地の増加が獣害問題をさらに深刻化させているという事実だった。
昨今、過疎化や農業の担い手不足により耕作放棄地は増え続けているが、長野県もその問題に頭を抱える地域のひとつ。自分たちにできることは?と考え始めた「フリークス ストア」が辿り着いた答えは、再生可能エネルギー事業会社や、学生を中心に地元長野への社会貢献に取り組むNPO団体とタッグを組み、環境にも経済にも身体にもやさしい新たな循環を生み出すというプロジェクトだった。
多くの人を巻き込みながら、エネルギーを循環させる
プロジェクトの全体の仕組みはこうだ。まず、「フリークス ストア」が再生可能エネルギー事業会社「みんな電力」と協働し、再エネ電力プラン「フリークス電気」を始動。私たち消費者が家庭で使用する電気を「フリークス電力」に切り替えると、長野県内で作られた太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用できるだけでなく、毎月の電気料金の一部が、長野県内の高校生や大学生を中心に社会活動に取り組むNPO法人「シナノソイル」に応援金として届く。
すると、「シナノソイル」はその資金をもとに耕作放棄地でトウモロコシを育てる。そのトウモロコシを地元の企業が加工し、「フリークス ストア」がパッケージデザインなどのブランディングを行い、「爆裂!シナノポップ」として販売する、という流れ。残った芯や茎は粉末にしてキノコ栽培の業者に再利用してもらう。そして、キノコの生育で出た廃棄物をトウモロコシ畑の肥料とすることで、エネルギーを循環させる。
「実は国産のポップコーンは希少で、ご当地名物として価値のあるものです。また『フリークス電気』のユーザーが増えるほど環境問題にアプローチできるほか、さらに使われずに荒れ果てた農地がポップコーン用の畑となり、食料や雇用、それに関連する事業も創出されるなど、さまざまな課題の解消につながります」(清宮さん)
みんなで楽しみながら、社会課題を解決していきたい
こうしたプロジェクトはまだまだある。例えば、静岡県内の大学、研究機関、地元企業と連動し、カツオの未利用資源(=これまで廃棄物とされていた資源のこと)を使ったパスタソースを新たな特産品として開発するなどだ。今後は、産地を訪ねるツアーなども検討している。
地域創生の活動にこれまで以上に力を入れるようになり、清宮さんがあらためて感じているのは、一般にはあまり知られてはいないけれど、素晴らしいものや、魅力があるのに見過ごされてきたものがまだまだたくさんあるということ。
「そういった価値を広く伝えていくのは、僕たちセレクトショップの使命だと感じています。これまでの事例を見ても、プロジェクトがひとつ動くと、そこから芋づる式に新たな企画が立ち上がっていくというように、おのずとつながりが生まれていっている。今後も出会いの場を提供し、関わる人みんなで楽しみながら、いろいろな社会課題を解決していきたいですね」(清宮さん)
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Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi
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