中村獅童さん、歌舞伎版『ファイナルファンタジー』に出演 「ファンの方を落胆させないように!」

大ヒットゲーム「ファイナルファンタジー」を歌舞伎化した木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が、3月4日から「IHIステージアラウンド東京」で上演。ゲームでも大人気のキャラクター・アーロンを演じる歌舞伎俳優の中村獅童さんに、舞台の見どころや新しい挑戦に対する意気込みを聞きました。
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――『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』に出演されます。「ファイナルファンタジーX」というゲームを歌舞伎化すると最初に聞いたときの心境は?

中村獅童さん(以下、獅童): ちょうど新型コロナの感染拡大が始まった2020年に、尾上菊之助さんから直接、企画内容と出演依頼のお話を電話でいただきました。基本的に仕事は事務所経由なので、ご本人から電話というのはなかなかない。
菊之助さんとは10年以上共演をしておらず、日ごろ親交があったわけでもないので、非常に驚いたと同時に、お声がけいただいたことが嬉しかったです。この新しいチャレンジにぜひ参加したいと思いました。

――ファイナルファンタジーを歌舞伎化するにあたっての、楽しみと不安を教えてください。

獅童: 非常に有名な作品で、ファンの方もたくさんいらっしゃいます。原作がある作品は世界観を壊さず、ファンの方を落胆さないようにすることが大事です。僕が演じるアーロンは、全体像としてはゲームに沿っていますが、要所要所で歌舞伎に合わせた衣裳のデザインにしています。アーロンは襟が口の前まである服を着ていますが、そのままだと台詞が聞こえにくいので、襟を立てたデザインにしたり。扮装してアーロンになることが楽しみです。

歌舞伎のハードルの高さは言葉の難しさ

――『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』の見どころを教えてください。

獅童: 「IHIステージアラウンド東京」は、客席が360度回る劇場なので、みんなで旅をする感覚ですね。我々が歩くのと同時に客席も動き、お客様もまるで物語の世界の中にいるような気分を味わっていただけるし、客席と舞台が一体となれます。

そもそも歌舞伎に馴染みのない人にとって、一番のハードルは言葉の難しさ。セリフが基本的に江戸時代の言葉だから、その点、「ファイナルファンタジーX」はすべて現代語なので、これまで歌舞伎を見たことのない方でも楽しんでいただけます。

――若い層に向けて演じるときに意識されることは?

獅童: 今の若い人たちを見ていると、まったく自分とは感覚が違うと感じますね。まずは、その点をきちんと認識する必要があります。僕は昨年9月に50歳になりました。自分たちの世代が、過去の経験や自分たちの感覚を今の若い人たちに当てはめても、うまくいかない。世の中も変わっていますから、頭を切り替える必要がある。頑なになっていると時代に取り残されてしまいます。

感覚が世代で大きく異なるのはやはり、アナログからデジタルに切り替わったことが大きいのでしょう。今はわからないことがあっても、スマホで調べればすぐに出てくる。僕らの時代は美術館に行ったり、映画を見たりするにしても、エンタメ情報誌の『ぴあ』を買って調べていましたから。

恋愛1つとっても、今はLINE上で告白して付き合い始めたり、別れたりするんでしょ? 僕らは、好きな人の声が聞きたければ、公衆電話から電話をしていたものですよ、少しでも長く話すために100円玉を10円玉にくずして。それが僕らの時代の人を思う気持ちでした。

身近に感じられる人がスターになる時代

――Instagramを始められるなど若い世代に向けての発信もしています。

獅童: Instagramでしか情報を得ない若い人たちがいるので、そんな人たちにも中村獅童という俳優や、歌舞伎を認識してもらいたいと思ってInstagramを始めました。僕自身はアナログ大好き人間。それでも僕は作り手だから、若い人の感覚も知らなければならないしね。

それにスターの位置づけも変わった。以前は、雲の上の人で、夢を与える存在だったけど、今は共感を得られたり、みなさんと地続きだと考えてもらったりすることが大切だから。Instagramに日常を投稿して、「あの有名人も行列に並んでラーメンを食べるんだな」と、身近に感じられる人がスターになる時代になったね。

歌舞伎をこれから演じていく人は大変

――歌舞伎も変わっていくのでしょうか。

獅童: 伝統を守りつつ、革新を追求する姿勢が大切だと思います。今の時代に求められ、お客様が喜ぶことを考えていく必要があります。
ただ、歌舞伎をこれから演じていく人は大変でしょうね。歌舞伎はずっと昔の人を演じるわけですから。デジタルしか知らない世代が、どうやって昔の人の気持ちを知ればいいのか。息子の陽喜(はるき)もいま5歳で、歌舞伎を始めていますが、苦労するだろうなと感じますね。悲しい思い、悔しい思いをして、傷つきながら人の気持ちを分かっていくしかないんだろうな。

【画像】中村獅童さんの撮り下ろし写真 中村獅童さん、40代でがんを経験。50歳になり余計なものがそぎ落とされ、「今が一番充実している」

●中村獅童(なかむら・しどう)さんのプロフィール

1972年、東京都生まれ。歌舞伎俳優。屋号は萬屋(よろずや)8歳で二代目中村獅童を名乗り、歌舞伎座で初舞台。映画「ピンポン」(2008年)では風間竜一(ドラゴン)を演じて、新人賞5冠。映画やドラマに出演する一方、デジタルと歌舞伎を融合した「超歌舞伎」では、バーチャルシンガー・初音ミクと共演するなど幅広く活躍している。

■木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』

出演:尾上菊之助、中村獅童、尾上松也、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六ほか
企画:尾上菊之助
脚本:八津弘幸
補綴:今井豊茂
演出:金谷かほり、尾上菊之助
原作・協力:スクウェア・エニックス

ライター/株式会社ライフメディア代表。福岡県北九州市生まれ。雑誌、WEB、書籍でインタビュー記事を中心に取材・執筆。女性のハッピーを模索し、30代はライフワークとしてひたすらシングルマザーに密着していました。人生の決断を応援するメディア「わたしの決断物語」を運営中。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。