岡本玲さん、主演映画「茶飲友達」で抱いた共鳴する感覚 「強く生きてるふりをしてたけど…」
孤独や痛みをひた隠しにしても、結局寂しい
――実際に起きた事件から着想を得て生まれた映画。作品では売春クラブに参加したり、利用したりする老人の孤独や、運営する若者の閉塞感などが描かれています。
岡本玲さん(以下、岡本): 映画を通じて事件のことを知ったとき、その内容にショックを受けたのと同時に、不思議と自分の中で共鳴するような感覚を抱きました。この映画で描かれているのは、一見すると、自分がいるのとはかけ離れた世界。けれど、登場人物が抱いている孤独や痛み、それをひた隠しにして幸せになろうとしている姿は、自分にも覚えがあるなと感じました。
孤独を“感じなかった”ことがない
――孤独を抱える岡本さん演じるマナは、男性の元へ高齢女性を派遣する売春クラブ「茶飲友達」(ティーガールズ)を設立し、若い知人らと運営。新聞の三行広告に「茶飲友達、募集。」と掲載し、集まってきた男性の元へ高齢女性を派遣するビジネスです。難しい役どころですが、共感する部分もありましたか?
岡本: 「うちらはこの街のセーフティーネット」とうそぶきながら売春クラブを切り盛りするマナは、私としては、間違っていると思う。だけど、仲間内は楽しげな“擬似家族”、お客さんにも人気の茶飲友達を、「誰も傷つけたくない。ましてや自分が傷ついているなんて微塵も思いたくない」というような振る舞いで運営する姿には、少し共感するところがあるんです。
というのも、私自身早くに仕事を始めたので、大人たちの中で子どもひとり、の状態が長かったことも関係しているのか、今まで、孤独を“感じなかった”ことがないんです。逃げたくなるほど孤独の存在が大きくなる日もあれば、手のひらで孤独を転がし、撫でる余裕のある日もあって、孤独といってもさまざま。
私にとって生きていく上で、切っても切れない関係にある孤独。人それぞれ形が違う点も厄介ですよね。だから、どれだけ話し合ったり、肌を触れ合ったりしても、埋め合えないことがある。だけど孤独が人生に陰影を与えることもあるし、人とのつながりを生むこともある。だから怖がりすぎてもいけないのでしょうね。
――マナは自分が孤独で、様々な過程で傷ついていることに「気づいていない」のでしょうか。
岡本: 自分が傷ついていても“気づかないようにする術を得た”んじゃないかなと思います。いちいち傷ついていたらその都度立ち止まってしまうから、器用にスルーして、気づかなかったことにする。「うまく生きている」とも言えます。だけど、自分の傷や孤独感をなかったことにして過ごしていると、ふとしたときに寂しくなるものですよね。
自らオーディション兼ワークショップへ
――この映画はオーディションを兼ねたワークショップを経て、主演の岡本さんをはじめキャストの多くが選出されたと聞きました。参加したきっかけを教えてください。
岡本: 12歳でモデルデビューして、今年で20年目になります。これまでの私は「映画女優になりたい」と思いながら、映画の世界には、なかなか自分の居場所を見つけられずにいた。でも30歳を迎える前後で、「芸歴の長さは関係なく、これからは自分のやりたいことに向かって、どんなチャンスにも挑戦しよう」って少し考えが変わったんです。
そんなとき、外山文治監督が、「茶飲友達」でオーディションをするという話を聞いて、「ダメもとで受けてみたい」と手を挙げました。もともと、外山監督の「ソワレ」が好きだったこともあって「今回のオーディションはダメでも、自分が映画に出たいという意思が、監督に伝われば」と考えていたんですが、主演に選んでいただきました。「ダメもとで」とは言ったものの、もし違う人が演じていたら、完成した映画を見て悔しかっただろうな。
――ワークショップを経て実際の撮影に入りました。孤独な老人と閉塞感のある若者が登場する映画なので、演じる役者さんたちには年齢差もありました。現場の雰囲気は?
岡本: ホンワカした雰囲気でしたよ。シニアと若者、って線を引きがちですけど、経験談を教えてもらったり、インスタやツイッターの使い方など意外と共通の話題もあったりして、撮影の合間は話が尽きませんでした。
ワークショップのときには、参加した方たちが、それぞれの生きざまが描かれた年輪を背負っているように見えてきて「みんな、なんて魅力的なんだろう」と圧倒されました。その後、コロナ禍で撮影が一度延期。「この映画をなんとか完成させて、届けよう」と、役者同士の結束が深まりました。
――映画の公開は2月4日です。
岡本: 私自身もマナのように強く生きているふりをしながら、傷つくことを恐れて見ないようにしてきた面がある。やっとこの作品が公開されることですし、私も恐れずに飛び込んでいこうと思います。
●岡本玲(おかもと・れい)さんのプロフィール
1991年生まれ、和歌山県出身。2003年、「第7回ニコラモデルオーディション」グランプリを獲得し、モデルデビュー。ドラマ・映画・舞台と活動の場を広げる。主な出演作にNHK連続テレビ小説「純と愛」「わろてんか」や映画「弥生、三月-君を愛した30年-」、舞台「熱帯樹」「森 フォレ」「ロビー・ヒーロー」などがある。
◆スタイリスト:森宗大輔
◆ヘアメイク:SHIZUE
監督・脚本:外⼭⽂治
出演:岡本玲、磯⻄真喜、瀧マキ、岬ミレホ、⻑島悠⼦、百元夏繪、クイン加藤、海江⽥眞⼸、楠部知⼦、海沼未⽻、中⼭求⼀郎、アサヌマ理紗、鈴⽊武、佐野弘樹、光永聖、中村莉久、牧亮佑、渡辺哲
製作:ENBUゼミナール
©2022 茶飲友達フィルムパートナーズ