【連載#5:宮司愛海の“不器用”の楽しみ方】私って何だ?~ゴールも正解もない“マラソン”の中で…

30代になり転機を迎えたフジテレビアナウンサーの宮司愛海さん(31)。自らを“不器用”と評する宮司さんが、仕事やプライベート、様々な葛藤について、ありのままの言葉で語る連載。今回は自身の今後や、抱えている苦悩についての思いを聞かせてくれました。
【連載#4:宮司愛海の“不器用”の楽しみ方】秋から夕方のニュースのキャスターになり、「伝えることが大好き」と実感する日々!

夢やビジョンは持ちにくいタイプ

今回は今後のキャリアと生き方について、私がぼんやりと考えていることをお話したいと思います。
と言っても、私はあまり戦略を立てられないタイプですね。アナウンサーになった1年目から目の前の仕事を必死にしていたら、3年くらいで新しい扉が開いて、違う場所に導かれて――という経験を繰り返してきましたから。

2015年から朝の情報番組「めざましテレビ」、18年からはスポーツニュース番組「S-PARK」、そして今年4月からは報道担当になり……といったように。だから、意識して自分で計画を立てて、「次はこのジャンルに挑戦したい」と強い意思を持って、行動を起こしたことは意外とないんです。ただ、それは、どんなことにも積極的に興味が持てるという自分の特性があるからかもしれません。

これまで、目の前の仕事に対して「求められたことに120%応えたい」という気持ちで取り組んできました。この点は今も変わりません。日々の仕事に対する合格点を出すことを優先するから、夢やビジョンは持ちにくいタイプでもありますね。合格点は俯瞰した自分や、担当のディレクターやスタッフの方の反応を複合的に捉えて、採点しています。

そもそも大学生で就職活動をしているときも、「自分に合った業種の会社が採用してくれるだろう」と、商社、通信、メーカーなども受けました。幅広く扉を叩いて、先方が私に合っていると考えた会社に入社し、与えられたチャンスを最大限に生かそうと考えていました。それが私の生き方で、今もあまり変わりません。
特に3月まで担当していたスポーツでは、延期されて2021年に開かれた東京、今年初頭の北京と複数の五輪があり、それに自分のすべての力を向けてきました。

そして4月から報道という場所にやって来て月曜と火曜の「FNN Live News days」を担当し、10月からは「Live News イット!」へ。今はまだ探り探りの最中です。

アナウンサーにとっての目標とは?

私はそもそも戦略を立てられないタイプですが、テレビ局のアナウンサーは会社員であり、自身の考えだけでキャリアをデザインできないという面もあります。
「めざましテレビ」から始まり、スポーツを担当して、報道に移るというキャリアをたどってきた私は、“何でもやる”けれど、“何ができる”かわからなくて――。“私って何だ”と思ってしまうこともあります。

昨今はニュース番組でも、アナウンサー自身の発言が求められる時代です。スタッフから「宮司の思っていることを話して、それが視聴者に届けば」みたいなことを言われると、自分が問われている感覚にもなります。私の価値観が正しいのかどうか自信がないので正直、葛藤もありますね。

職業柄、中長期的な目標は持ちづらいし、目標に囚われすぎるのも違うかな、とも感じていて。
私は大学時代に卒論でアナウンサーとして大先輩である久米宏さんについて書いたのですが、「ニュースステーション」終了にあたって、「続けなければならないという義務感のほうが強くなっていた」みたいなことを話されていて。「わかる」というのは、おこがましいですが、私も正解もゴールもないマラソンを走り続けることが、辛く感じることもあります。

ただ、ゴールがないこの仕事だからこそ、走りながら、その地点で感じたことを大事にしています。走り続けている最中でたまたま立ち止まった場所が、すごく居心地が良かったり、ずっといたいと思ったりするかもしれないですから。

精神的に自立してから!

ところで同期で生年月日も一緒、以前telling,で同じく連載もしていた小澤陽子が先日、結婚したことを報告しました。私は交際していたころから知っていたので、公になり隠す必要がなくなったことで「楽になれてよかったな」と思いました。公表してからの彼女は、ハッピーオーラをまとっていて、同期としても友人としても嬉しい限りです。

私自身の恋愛や結婚については、かなり考えますけど、それでどうにかなる問題ではない(笑)。
それに感情に波もあります。友人らが次々と結婚をしたら、“私もしなきゃ”と漠然と焦り始めますが、一人での生活が充実していたら、それはそれで素敵なことだと思いますし。
そういう波があることもあり、私は一つだけの方向に向かって走り出すことが出来ない。これまでもそうだったし、これからも……。この点は仕方がないですね。

結婚してパートナーを得ると、「絶対的な味方が増えた!」ように感じるという話も先輩や友人から聞きます。兄弟とも友人とも異なる、強固な関係を築ける人がいたらなあと猛烈に感じる時もあるのですが、“味方”を得るために結婚するのも違うと感じる自分もいて。やはり精神的に自立してからでないと、パートナーとの“いい関係”は築けないだろうし、今は私自身が、誰かと生きていくのにふさわしい段階にないのかなとも思ってしまって…。

でも将来的にパートナーと子どもと家庭を築くのであれば、常にコミュニケーションを取る、会話と対話ができる家庭にしたいですね。

くよくよするのは、そもそもの性格だけど…

オンとオフの切り替えについてもよく聞かれますが、アナウンサーはプライベートも仕事に繫がる仕事なので、あまり公私のバランスは考えないですね。そう思うと、現時点では、すべてが仕事を軸に回っている気がします。

みなさんの参考にならない話ばかりしていますね(笑)。私は自己肯定感も高くないですし……。今の時代は自己肯定感を高く生きることが称揚されますが、その風潮も正直辛い。結婚や恋愛に対する感情の波の話と同じですが、自身に対してネガティブなときとポジティブなときの波があっていいと思っています。
それにアナウンサーという職業にしても、常に太陽のように明るい人もいれば、私みたいに本質的に暗い人もいていいと考えています。

控える「結婚・妊娠・出産(仮)」

そんな私も31歳。ライフイベントとして「結婚・妊娠・出産(仮)」についても考えなければならない年齢だと感じることが増えました。妊娠に適した年齢というのは今も厳然とあるので、子どもがほしいのであれば、一定程度は将来の妊娠に備えて準備しなければならず、無視して走り続けるわけにもいきません。なにより未来の自分に向けて選択肢を残しておきたい気持ちもあります。

この夏に子どもを生んだ妹を見て、仕事では得られないものがあるとも気づきました。でも女性はいったん、子どもを生むとキャリアを中断しなくてはいけなくて……自分の中では明確な未来は見えていません。

ここまでお話ししてきたように、不器用でバランスが取りづらい私ですが、様々な経験を経た今は、試行錯誤を繰り返しながら進んでいくしかないと感じています。

それに漠然とですが、“届ける”ということはテレビに限らず、今後もしていきたい思いは少なからずある。分かりやすく伝えること、自分というフィルターを通して「伝わるように伝える」ことが好きなのは、間違いありませんから。

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次回は、12月29日火曜に公開の予定です。

【連載#4:宮司愛海の“不器用”の楽しみ方】秋から夕方のニュースのキャスターになり、「伝えることが大好き」と実感する日々!
1991年福岡市生まれ。早稲田大学文化構想学部を卒業し、2015年にフジテレビ入社。18年春から週末のスポーツニュース番組「S-PARK」を担当し、東京五輪ではメインキャスターを務めた。現在は月曜から金曜の「Live News イット!」や「タイプライターズ」などを担当。趣味は落語鑑賞やカラオケ。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。