唐田えりかさん、「今は自分から逃げないことが何より大事」

11月26日から池袋シネマ・ロサ、下北沢K2などを皮切りに公開の映画『の方へ、流れる』に主演の唐田えりかさん。映画のテーマのひとつである「コミュニケーション」や25歳になった今、感じていることについて伺いました。
『の方へ、流れる』主演の唐田えりかさん、「イメージと違うと言われても、信頼している人に理解してもらえたら」 【画像】唐田えりかさんの撮り下ろし写真

――唐田さんは10代のデビュー直後のインタビューで「お芝居に苦手意識がある」と話されていましたが、今は「一番大事なもの」と強く思うようになられたそうですね。何がきっかけだったのでしょうか。

唐田えりかさん(以下唐田): 映画「寝ても覚めても」での濱口(竜介)監督との出会いがやっぱり自分にとっては、すごく大きかったです。それまでお芝居というものが本当にわからなくて。「わからないからできない」と思っていたんですが、濱口監督にたくさんのことを教えていただいて、「お芝居って、こういうことなんだ」というのが少しだけつかめました。それまで「わからないからできない」だったものが、「わからないけどできるようになりたい」に変わっていった気がします。

――演じることが好きになりましたか?

唐田: わからないままだからこそ、突き詰めたいと思うようになったんです。「お芝居は難しいな」って相変わらず思うし、自分に対して自信もないです。でも、作品作りや現場での出会いとかで、自分が本当に成長させてもらっているというか、みなさんに生かしてもらっているなって日々、感じるので。ちゃんと逃げずに良い作品を作って、たくさんの大切な人たちに恩返しをしたいなと思っています。

相手の考えを想像するだけじゃなく、きちんと会話をする

――『の方へ、流れる』で唐田さんが演じる里美は、作中でパーソナルな部分を深く描かれてはいません。ただ、どこか若さゆえの“自分の中の大事なものから目をそらすような様子”が強く伝わってきました。唐田さんにとって今、大事にしているものや、絶対に手放したくないと思っていることは何でしょうか?

唐田: やっぱりお芝居ができることが本当にありがたくて。いただいた役とちゃんと向き合いたいし、大切にしたいと思っています。自分にとって今、一番大事なものはお仕事ですね。

――ひょんなことから1日を共にする、遠藤雄弥さん演じる男性・智徳と里美とのふたりの会話の密度の濃さも、本作の魅力のひとつだと思います。唐田さんは普段、コミュニケーションは密にとるほうですか?

唐田: 事務所の方とも、よく密に話し合いますね。仕事のこともそうですし、パーソナルなことについても。

――唐田さんから、「打ち合わせしましょう!」と働きかけるんですか?

唐田: というより自然とですね。会う回数も多いので、私も気になることがあれば聞くし、事務所の方も何かあれば言ってくれる。信頼関係がちゃんとできてるからこそ、言い合えるんですよね。コミュニケーションをちゃんと取らないと、自分の中で勝手に「この人はこういう考えなんじゃないか」って想像だけで、物事を進めてしまうことも多いと思うんですね。だから、会話を通して相手を理解して、相手を通して自分のことも理解して……ということを積み重ねていきたいと思っています。

――今作は唐田さんが25歳になられて最初に公開される映画です。作品を通して、ご自身が感じた変化があったら教えてください。

唐田: この作品に参加したことで改めて、脚本というもの、自分が発する言葉というのを信じたいと思いました。特別な変化が自分の中に起きたというよりは、改めて自分の中にあった感情に気づかせてもらった、教えていただいたという感じです。

責任と覚悟を持って“したい”ことをする

――telling,は、20代後半〜40代前半の女性の多様な生き方や価値観にエールを送るメディアです。唐田さんの同年代の人たちもライフステージの変化を迎えている人も増えてきていますか?

唐田: 地元の友達の中には結婚して、子どもがいる子も多くなってきました。そういう話を聞くと「大丈夫かな、私」って思うこともあるんですけど、「自分は自分だしね」って、深くは気にしていないです。

焦って行動したり、こうするべきと感じたりという“しなきゃ”より、自分で“したい”と思うことのほうが大事。覚悟や責任を持って自分で“したいと決めたこと”をやっていきたいですし、なるべく後悔したくないと思っています。

――年齢を重ねることが怖いと思ったりもしませんか?

唐田: 体力的に、「昔より疲れやすくなったかな」と感じることはありますが、それも踏まえて、なるべく楽しもうというか……。自分のからだの変化も含めて楽しめていけたらいいなって思っています。
そしていつか、かわいいおばあちゃんになれたらいいなって。

努力を忘れずに進んでいけたら

――唐田さんの考えるかわいいおばあちゃん像はどんなイメージですか?

唐田: 私の地元にいるおばあちゃんたちは畑仕事も元気に続けていたり、フラダンスや歌、ヨガとかをしたりしていて、みんなとっても活発で。私よりも元気なんじゃないかって思うぐらいです(笑)。いつも笑っているし。いくつになっても自分のやりたいことがあるおばあちゃんって、かわいくて、かっこいいと思いますね。

――かわいくてかっこいいおばあちゃんになるために、まずは直近の30代に向けての目標などは持っていますか?

唐田: 30代というものが、まだはっきりと想像はできていないんですけど、今は与えていただいた仕事を大切にして、人間として成長していきたいです。努力を忘れずに進んでいけたらなって思います。

――最後に、telling,は日々、生活していく中でつきまとう世間からの視線や、こうあるべきといった価値観をはねのけていきたいと感じる女性たちにエールを送るサイトでありたいとも考えています。心のもやもやを抱えている読者の方に、メッセージをいただけますか。

唐田: 自分なんかが言っていいのかなと思ったんですけど、……エール、そうですね。本当に今の私は、自分というものから逃げないということを何よりも考えていて。そして周りにいてくださる方からも逃げない。先に何が待っているかはわからないけど、それが自分を一番成長させると思っています。
だから、大事なことを忘れずに進めば、何かがある――という気はしていますね。

『の方へ、流れる』主演の唐田えりかさん、「イメージと違うと言われても、信頼している人に理解してもらえたら」 【画像】唐田えりかさんの撮り下ろし写真

●唐田えりかさんのプロフィール

1997年生まれ、千葉県君津市出身。2014年にアルバイト先のマザー牧場でスカウトされ芸能界入り。2015年にドラマ「恋仲」(フジ系)でデビューし、「こえ恋」(テレ東系)「トドメの接吻」(日テレ系)「覚悟はいいかそこの女子。」(TBS系)などに出演。ヒロインを演じた『寝ても覚めても』がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門の参加作品に選ばれた。

ヘアメイク:尾曲いずみ
スタイリング:道端亜未

■の方へ、流れる

監督・脚本:竹馬靖具
出演:唐田えりか、遠藤雄弥、加藤才紀子、足立智充、小水たいが

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。