奈緒さん、重いテーマも含んだ難しい作品も「永野芽郁ちゃんと二人だったら乗り越えられる」

9月30日から全国公開される映画「マイ・ブロークン・マリコ」は、テレビのニュースで奈緒さん演じる親友イカガワマリコの死を、永野芽郁さん演じる主人公・シイノトモヨが知ることから物語が始まります。今回は2013年のデビューから幅広いジャンルで活躍する奈緒さんに、朝ドラ以来の永野さんとの共演や、作品について聞きました。
奈緒さん、30歳までには 「弱さを受け入れ、自分のことを心から愛せる人になりたい」

原作を読み終え、落涙

――「マイ・ブロークン・マリコ」は、2019年に「COMIC BRIDGE」で連載され、21年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞などを受賞した平庫ワカさんの同名コミックを映画化した作品。奈緒さん演じるマリコは、学生時代から父親に虐待を受け、ある日突然、命を絶ってしまいます。奈緒さんは原作をどのように読まれましたか?

奈緒さん(以下、奈緒): 原作を読み始める前に、この物語の大まかなあらすじは聞いていたんです。突然、親友を亡くした主人公が、その親友の遺骨と共に旅に出るというストーリなので、「最終的にどう着地して、シイちゃん(シイノの愛称)はどこにたどり着くんだろう?」と思いながら読んでいたのですが、最後までページをめくる手が止まらなくて、夢中で読みました。すごいパワーを持った物語だなと感じました。

――学生時代から父の虐待を受けていたマリコの魂を救うため、「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れて行く!」と誓い、マリコの遺骨を強奪したシイノの旅が描かれています。奈緒さんは原作を読んだ後、涙が止まらなかったそうですね。

奈緒: 私自身も、身近な人や親しかった人が亡くなったり、幼い時に父を亡くしたりを経験しているので、「大切な人が突然いなくなる」ということが自分の中ですごく身近。なので、自分と同じ経験をした主人公のシイちゃんが「どうなっていくのかな」というのは、とても気になりました。読み進めて最後に彼女がたどり着いた先がすごく温かくて優しくて。読み終えた後、シイちゃんと同じ気持ちになって涙を流していましたね。

私はラストにすごく救われたような気持ちになったんです。その時に、「絶対にこの作品はたくさんの方に届いてほしいし、届けなければいけない」と強く思いました。

最初はあった不安やプレッシャーも・・・

――つらい家庭環境で育ったことにより、正気と狂気の境界線で揺れる危うさや、今にも消えてしまいそうな儚さをはらんだマリコを演じてみて、どんなことを感じましたか?

奈緒: 映画の中盤辺りで、マリコが「そうだよ、私ぶっ壊れてるの」というセリフがあります。それってマリコが今まで生きてきて、ずっと眠っていた思いだったと感じるんです。
その思いを抱えながらも、シイちゃんの存在もあり、壊れていることを忘れられる瞬間もあった。その時間が彼女にとって、どういうものだったんだろうと考えると、シイちゃんがいたことはマリコにとって、すごく大きかったと思うんです。

なので、マリコにとってどの時間が少しでも光を感じる瞬間だったのかというのを意識し、大切にしながら演じました。

――シイノ役の永野芽郁さんとは、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(2018)でも、親友役で共演されました。プライベートでも仲が良く、撮影開始前からこの映画について話し合ったそうですね。

奈緒: 原作のコミックの存在って、私たちにとってはすごく大きく、読んだ時の衝撃も凄かったんですよ。だから、最初にお話をいただいたときは二人ともこの作品を映像化するにあたっての不安やプレッシャーが・・・・・・。でも、そういう思いを芽郁ちゃんと共有した上で「でも二人だったら大丈夫、乗り越えられる!」って一緒にこの作品に飛び込んでいけました。

クランクイン前に「お互いの思いを話し合った」

――撮影前に、お二人が演じるマリコとシイノのイメージができていたんですね。

奈緒: 事前に芽郁ちゃんと作品に対するお互いの思いなどをしっかりと話し合うことができたので、撮影に入ってからはお互いの役のことや「このシーンどうする?」といったことを話すことはなかったですね。

あと私自身、芽郁ちゃんがシイノを演じているのを見たいと思ったので「芽郁ちゃんなら絶対この役ができる!」ということも伝えました。そうしたら芽郁ちゃんも「奈緒ちゃんがマリコだったら私もできるかもしれない!」って言ってくれて。「二人だからできることがあるよね」という話をして、クランクインしましたね。

――シイノとマリコは、単なる友情ではなく、ある種の愛情によって結ばれているように感じました。奈緒さんはこの2人の関係性をどう感じられましたか。

奈緒: 人からの愛情をすごく求めているマリコが、愛を感じられて、自分も与えられる存在はシイちゃんだけだったから。きっとマリコにとってシイちゃんは「愛する人」だったんだと思います。

私が好きなシーンの一つに、シイちゃんがマリコを家から連れ出そうとする場面があるんです。このワンシーンに、マリコにとってシイちゃんがどんな存在だったかがぎゅっと閉じ込められていると感じます。ぜひ見ていただきたいですね。

――DVや自殺などの重いテーマも含んでいた本作ですが、改めて映画の見どころを教えてください。

奈緒: 私がこの作品に出演して改めて思ったのは、映画をはじめとする作品というものは、これからを生きるためにあるものなんだ、ということです。“シイノトモヨ”という一人の女性の旅が、今日を生きているみなさんに届いてほしいです。

奈緒さん、30歳までには 「弱さを受け入れ、自分のことを心から愛せる人になりたい」

●奈緒(なお)さんのプロフィール

1995年生まれ。福岡県出身。2013年ドラマ『めんたいぴりり』(テレビ西日本)で俳優デビュー。20歳で単身上京し、18年にNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』に出演。主な出演作品にドラマ『あなたの番です』(日テレ系)、映画『余命10年』など。10月スタートのドラマ『ファーストペンギン!』(日テレ系)では主演を務める。

■「マイ・ブロークン・マリコ」

監督:タナダユキ、脚本:向井康介、タナダユキ
原作:平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(BRIDGE COMICS/KADOKAWA)
出演:永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊
エンディングテーマ:「生きのばし」Theピーズ Ⓟ2003King Record Co.

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。