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わたしと未来のつなぎ方

心のサステナブルとは? 人気ブランド「ヌキテパ」の神 真美さんに学ぶ

インドの伝統的な手仕事とモダンなデザインが融合したオリジナリティあふれるデイリーウエアで人気の「ヌキテパ」。同ブランドがキュレーションするライフスタイルショップ「パサンド バイ ヌキテパ」は、まるで旅で訪れたかのような異国情緒と澄んだ空気に満ちています。ブランドのモノづくりを支える価値観について、「ヌキテパ」ディレクターの神 真美(じん・まみ)さんに伺いました。

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インドの人たちの明るさに惹かれて

表参道の交差点から少し裏手に入ったところにふと現れる、美しいブルーの壁と生い茂ったグリーンが目を引く路面店。リゾートのようなムードが漂うこの空間は、ライフスタイルストア「パサンド バイ ヌキテパ 青山(Pasand by ne Quittez pas AOYAMA)」。

店内には、インドの繊細な手仕事とモダンなデザインが融合した「ヌキテパ(ne Quittez pas)」をはじめとするオリジナルのブランドやセレクトアイテムのほか、花器などの雑貨やインテリアも。カラフルで美しいアイテムの数々が広く清らかな空間になじんでいて、まるでセンスのいい友人の家を訪ねたような居心地のよさに、ずっと佇んでいたくなってしまう。

「パサンド バイ ヌキテパ」と「ヌキテパ」のディレクターである神 真美さんが、メイド・イン・インディアの魅力に着目し、ビジネスを始めたのは1990年代、20代前半のこと。当時はロンドンに暮らしながら、ファッションや音楽、旅行などさまざまな業界で横断的に仕事をしていたそう。「ロンドンに移住したのは、音楽とファッションが好きだから。当時はまだ同世代の日本の女性で、海外で起業している人はほとんどいませんでしたね」と振り返る。

その頃のイギリスのファッション業界では生地などの素材や縫製の主な発注先はパキスタン、インド、ポーランド出身のオーナーが営む工場で、神さんもインドやパキスタンの人たちと一緒に仕事をするように。なかでも、インドの人たちの技術の高さ、そして何より明るく寛大でスマートな人柄に惹かれ、メイド・イン・インディアにこだわったブランドを立ち上げて日本で展開しようと決意。

「インド製の洋服というと、その頃の日本ではお香の匂いがするようなエスニック系の雑貨屋で売られているイメージが一般的だったんですよね(笑)。一方、ロンドンのデパートやセレクトショップでは、メイド・イン・インディアの洗練された服が当たり前に並んでいる。美しい刺繍の入ったモダンなワンピースなどをインドで作れば、今までになかったファッションとして、日本のマーケットに広げていけるんじゃないかな、と思いました」

「パサンド バイ ヌキテパ」オーナー、「ヌキテパ」ディレクターの神さん。ジュエリーブランド「ウパラ」のディレクターも務める

信頼関係を育むために

そうして2003年に「ヌキテパ」をスタートした神さんが真っ先に取り組んだのは、インドの工場との信頼関係を育むこと。

「インドは、きちんとお金を投資するといった目に見える形でアプローチしない限り、ビジネスの相手として認めてくれないお国柄。しかも小規模のブランドの場合、クオリティや納期のコントロールが難しくなりがちだけれど、私はその点もきちんと守っていきたかった。工場側も私もお互いに試行錯誤し、ときには失敗もしながら、ようやく日本の有名なセレクトショップで取り扱っていただけるようになるまでは10年くらいかかりましたね」

その10年間は利益が出るどころか、会社は赤字状態。それでも「諦めるというチョイスはなかった」と神さんは笑う。

「インドの人たち、本当に素敵なんですよ。彼ら彼女たちにも生活があるし、どうにか安定した生産数を保って仕事の機会を提供していかなくては、といつも思っていました」

表参道にある旗艦店「パサンド バイ ヌキテパ 青山」。外観からもその美しい世界観が伝わる。店舗はこのほか、ニュウマン新宿3階などにもある

シェアすることの大切さ

もうひとつ、神さんがブランドを立ち上げたときから徹底して取り組んでいるのが、サステナブルなモノづくり。そのこだわりは、ヨーロッパで暮らすうちに自然と身についたという神さんの哲学を投影したものだ。

「私は日本にいてもイギリスにいても世界のどこにいても、何か得るものがあれば、それを独り占めするのではなく、周りの人にもシェアすることの大切さを強く感じながら生きてきました」

とりわけ格差など様々な貧困問題を抱える国でビジネスをするなら、その国での社会貢献もセットで考えるのが当然。会社が上げた利益を自分たちだけが享受するのではなく、ビジネスパートナーである現地企業の人々の生活がより豊かになり、さらに、現地の環境や労働にまつわる課題解決に取り組むところまでが自分たちの仕事――そう神さんは考え、実際に動いてきた。インドの工場を建て替え、生地の染色に使用した水を浄化してから自然に還す設備を採用して環境汚染を削減し、リサイクル生地の使用、商品の生産背景がすぐにわかるトレーサビリティの徹底など、いくつもの工夫を実践し続けている。

2021年からは、本来は捨てられてしまう残布をリサイクルしたキッズコレクションもスタート。ママとお揃いのコーディネートを楽しめると人気

“心のサステナブル”を目指す

また、インドの工場で出た残布を使って、工場で働くスタッフに自由にエコバッグやシューズバッグなどを作ってもらい、納品してもらうという取り組みも。古くからカースト制度が根づくインドでは、上下関係への意識が強い。そんななかでもできるだけ自分の権限でクリエイティビティを発揮し、仕事に喜びを見出してほしいという“心のサステナブル”への願いから生まれたアイデアだ。

「納品すれば給料に反映されるので、向上心が高まり、なにより生地のムダがなくなります。それでも余ってしまった布はインドの小学校に提供。細く切って編めば子どもでもフロアマットや鍋敷きを作れますし、それを市場で売るという手もある。ゴミを最小限に減らすと同時に新たなエネルギーを生み出す、一石二鳥の仕組みです」

もちろん、自社のスタッフに対しても“心のサステナブル”への配慮を忘れない。「みんな大人になると、一日の多くの時間を会社で過ごすようになる。だからこそ企業が自分たちの姿勢や考え方を社員に対して、具体的にシェアしていくことが大事」と神さん。

「うちの会社は、ペットボトルやプラスチックゴミが出るお弁当などの持ち込みは禁止。ここ数年はコロナ禍で難しくなってしまったけど、ランチはみんなで作って食べていました。休暇をきちんと取れるようなプラットフォームを作る、仕事上で何かあったときもある程度はスタッフ個人の判断にまかせるなど、一人ひとりが成長し、心豊かに生きられるように後押しできたらと、経営者として考えています」

「パサンド バイ ヌキテパ」の店内のゆったりとしたスペースで神さんの話をひとしきり伺ったあと、あらためて店のあちらこちらを見渡すと、そこは本当にすがすがしい空気に満ちていて、「気」がいい、という言葉が似合う。他者を、そして環境を思いやることは、とても美しいことなのだ。

生産の過程で出る残布を使ってショッピングトートを作り、店舗で顧客が買い物をする際のショッパーとして使用

Text: Kaori Shimura, Photograph: Ittetsu Matsuoka, Edit: Sayuri Kobayashi

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