木竜麻生さん “本音が言えない”主人公を演じて「知らない自分がたくさんいた」 

6月10日より、20代の「リアルな日常」を描いた映画『わたし達はおとな』が全国公開されます。この作品で主人公の大学生・優実を演じたのは俳優の木竜麻生さんです。恋人の直哉との同棲生活を覗いているような感覚にさせる今作。映画への臨み方や、役を演じて感じたことなどについて木竜さんにお話を聞きました。
木竜麻生さん 「眼差しに優しさがある大人になりたい」

本作は「どれだけ隠すか」

――映画『わたし達はおとな』では、大学生の優実が同棲中の恋人・直哉に「怒らないで聞いて欲しいんだけど」と、妊娠検査薬を見せる冒頭のシーンから物語が展開していきます。初めて脚本を読んだときの感想は。

木竜麻生さん(以下、木竜):純粋に、とにかくおもしろいと思って。登場人物が会話しているだけで、その相手との間にある何かが脚本からにじんでくるのが、印象的でした。

――予期せぬ優実の妊娠が、直哉との関係に緊張を与えます。そんな優実を演じてみていかがでしたか。

木竜: リハーサルの時から加藤拓也監督に、「今回はどれだけ隠すかだ」と聞いていました。映画の中で、優実は言いたいことや、思っていることを隠す作業をたくさんしています。それは初めてのデートから、ほんの些細な会話やしぐさに至るまで表れていて、「本当にこういう人がいるだろうな」と思いました。時間が経つにつれて言えなかった小さなことが積み重なって、優実に負荷がかかっていく。でも、それを繰り返すことによって、優実が「隠す」理由が、なんとなく分かったような気もしましたね。

夢中で演じて、知らない自分がたくさんいた

――終盤、優実と直哉が激しくぶつかり合います。優実が動揺する表情は見ているこちらまで心が締め付けられました。

木竜: ありがたいことに、時系列に撮影は進みました。時間に従って友達、家族、直哉との関係で感じるものについて、役を背負えるようになりました。また、今回は共演した藤原季節さん、加藤監督や周りのスタッフさんを含めて、みんなを信頼して自分を委ねていられて。だから自分の中でわき起こってくる感情や、起こされる感覚を一つも取りこぼさないように夢中で演じることができました。

同級生の友人と旅行に行ったり、恋人とご飯を食べたりするシーン・・・。テーマは「リアルな日常」ですが、その何げない場面が難しかったです。言葉ひとつ、行動ひとつに気を遣う優実のことを考えると「うーん」と思ってしまって。悩んだときがありました。
そんなとき、直哉役の藤原さんから「一緒にがんばろうね」って声をかけられて。藤原さんは年齢の近い、尊敬する俳優さん。「みんなで作っているのに、何を一人で殻に入りそうになっているんだ」って、はっとしました。

――撮影中、食事がのどを通らなくなったそうですね。

木竜: 今までで一番やせました。しんどいと言うより、おなかが空かなくて。夢中だったのでしょうね。撮影後半、周りから「大丈夫?」って心配されるほどでした。

――それほど優実に感情移入をしていた、と?

木竜: 撮影中はそうではなかったのですが、完成版を見たときに、自分ではない“子”を見ている感覚がすごく強かった。初めてのことだったので、びっくりしましたね。「自分はこんな顔してるんだ、こんな声で話しているんだ」と気づいて。知らない自分がたくさんいました。加藤監督や出演者のみなさんに、役の世界に連れて行かれた感じがあります。

隠しているつもりでも、私ならバレてしまう

――優実に共感できる部分と、そうでない部分は。

木竜 人に対して、「ん?」と思っても、言わずに笑ってごまかすんだけど、ため息がもれちゃう感じとかは、分かるなって思いました。一方、家族のことを含めて、言わなさ過ぎだとも思いました。私だったら多分、どこかで耐えきれなくなってしまうかな。この“子”は気を遣うあまりに、言わずに溜め込み、一人で背負ってしまう。だからこそ、映画のように話が進んでいくんでしょうけどね。

――木竜さんは言いたいことは口に出すタイプですか?

木竜: そういうタイプでは無いです。かといって嘘が下手なので本心がバレますね。隠しているつもりでも、友人や身近な人には大体バレてしまって。「何かあったでしょう、どうしたの?」って聞かれたときに「何でもないよ」って言っても、「何でもなくないじゃん」って。(笑)隠せるようになりたいでんですけど、気づいてくれる人がいることはありがたいですね。

木竜麻生さん 「眼差しに優しさがある大人になりたい」

●木竜麻生(きりゅう・まい)さんのプロフィール

1994年、新潟県出身。14歳の時に原宿でスカウトされ、大学進学を機に上京。本格的に芸能活動を始める。2014年の『まほろ駅前狂騒曲』で映画に初出演し、18年には、『菊とギロチン』で映画初主演と、『鈴木家の嘘』のヒロイン鈴木富美役を演じ、第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞などを受賞した。

ヘアメイク:主代美樹 
スタイリスト:神田百実
衣装:全て税込 
ブラウス ¥33,000/TELOPLAN
イヤリング ¥16,500/petite robe noire
他スタイリスト私物

©2022『わたし達はおとな』製作委員会

映画『わたし達はおとな』

監督・脚本:加藤拓也
出演:木竜麻生 藤原季節 菅野莉央 清水くるみ 森田想
桜田通 山崎紘菜 片岡礼子 石田ひかり 佐戸井けん太 
2022年610日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
配給:ラビットハウス
©2022『わたし達はおとな』製作委員会

2014年朝日新聞社入社、22年春からtelling,編集部員。 野菜、果物の曲線や色みに関心があります。憧れは桑田佳祐・原由子さん夫妻。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。