野草の力を借りて健やかな美を育む。「北麓草水」のスキンケア
●わたしと未来のつなぎ方 17
昔ながらの知恵をヒントに植物の有用性に着目
端午(たんご)の節句には菖蒲湯、冬至(とうじ)には柚子湯など、日本には古くから季節の植物をお風呂に入れて、香りなどを楽しむ風習が根づいている。その昔ながらの知恵にヒントを得て、野草のもつパワーを取り入れたアイテムを開発しているのが、日本生まれのスキンケアブランド「北麓草水」だ。
こちらのブランドは、戦後まもなくからせっけんを製造し、現在はさまざまなスキンケア製品やボディケア製品、ヘアケア製品を手がける「松山油脂」が2009年にスタートしたもの。同社が山梨県の富士河口湖町に工場を構えたのを機に、富士山のふもとの素晴らしい自然環境で育った植物でスキンケアアイテムをつくれないかと考えたのが、ブランド誕生のきっかけだそう。
「北麓草水」の独自の原料「浸草水」「浸草油」は富士山の伏流水をろ過した純水や植物オイルに、乾燥させた植物をつけ込み有用成分を抽出したもので、同ブランドの化粧品に使われている。アマチャヅルやゲンノショウコ、ヨモギなど、日本人が昔から入浴剤やお茶、食べ物として暮らしに取り入れてきた野草の「チカラ」が、健やかでみずみずしい肌へと導いてくれる。
環境への配慮から、規格外の果物を有効活用することも
「私たちは製品をつくるだけでなく、原料も自分たちの手でつくりたいという願いをずっと抱いていました。『北麓草水』はその思いを具現化したものなんです」と、同社営業企画部の仲野さや香さん。
安全性、有用性、そして、環境に負荷をかけないこと。この3つのバランスを満たすのが、松山油脂のモノづくりの基本姿勢。そのこだわりを貫いてきた松山油脂が「北麓草水」を立ち上げたのは、ごく自然な流れだったことがうかがえる。
環境への配慮の面では、例えば、詰め替えできる容器のものは可能な限り詰め替え用の商品を販売するほか、廃棄予定の果物などを原料の一部として有効活用することも。3年の歳月をかけて自社開発した保湿成分、モモ果汁発酵液もそのひとつ。工場がある山梨県の特産品の桃のうち、キズや熟れすぎなどが原因で出荷されないものを原料としている。
「このほか、ヒノキの端材や規格外の柚子、ワインを絞ったあとのブドウの皮や種なども原料として利用しています。捨てられてしまうものに新たな価値を見出し、有効活用することは、私たちにとっても環境にとっても意味のあることだと思っています」(仲野さん)
肌を内側からケアするための食品や生活雑貨も
「北麓草水」の直営店に足を運んでみると、ちょっと意外なものが並んでいることに気づくだろう。店内を見渡すと、ローションやせっけんといった一般的なスキンケアやヘアケア、ボディケア用のアイテムだけでなく、アロマスプレーやタオル、野草茶、ジャムなど、生活雑貨や食品が目立つ。北麓草水 ルミネ新宿店の店長、山口友香さんはその理由をこう説明してくれた。
「すべての女性の肌は健やかになる力を秘めていると私たちは考えています。その力を引き出すには、外側だけでなく内側からのケアも欠かせません。日々の習慣を整えて、毎日を心地よく過ごすことが大切です。そこで私たちは、ボディやヘアも含めた暮らしのトータルケアを提案しています」
こうしたアイテムの数々はオンラインストアでも購入可能だが、美容、健康の知識が豊富なスタッフとあれこれ話しながら、自分に合うものを選べるのは、やはり実店舗ならではの魅力。最近はコロナ禍も身体を見つめ直す機会になっているからか、20代や30代のファンが増えているそうで、「植物のパワーやブランドコンセプトについて、熱心に質問いただくことも増えてきました」と山口さんはうれしそうに語る。
「一方、年配のお客さまからは学ばせていただくことも多いんです。身体を冷やさない食材の話などの豆知識を教えていただくこともあり、すごく勉強になります」
スタッフも顧客も、暮らしのヒントをお互いにシェアする
スタッフも日々「北麓草水」のアイテムを、暮らしにどんなふうに取り入れていくかを個人的に研究している、と山口さん。
「例えば、鉄分やカルシウムが豊富な『山葡萄の圧搾果汁』は炭酸水やお酒で割っても美味しいのですが、あるスタッフが、冬に加熱して飲むとホットワインのような味わいになり、身体も温まることを発見しまして。そんなふうに実体験に基づく小さなアイデアをスタッフで共有し、お客さまに提案していくことに、楽しさとやりがいを感じています」
店頭から発信するだけでなく、暮らしのヒントをお互いにシェアする。スタッフは顧客の悩みやアドバイスをフィードバックし、よりよい商品開発へとつなげていく。そんな循環型のコミュニケーションが根づいているところも、「北麓草水」が多くのファンに支持される秘密かもしれない。
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Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi