Presented by ルミネ
Sponsored
わたしと未来のつなぎ方

愛される理由はホスピタリティだけではない。ちょっぴり泥臭くて温かい、猿田彦珈琲の人情物語

2011年6月に東京・恵比寿で創業したスペシャルティコーヒー専門店「猿田彦珈琲」。美味しいコーヒーを飲めることだけでなく、スタッフの温かみあふれるホスピタリティも人気の理由です。そのハートフルな一杯は、どのような背景から生まれるのでしょうか。創業メンバーで技術部ディレクターの都築尚徳さん、“コーヒー芸人”としても活躍する広報の平岡佐智男さんにお話を伺いました。

●わたしと未来のつなぎ方 11

コーヒー店の接客の域を超えたホスピタリティ

日本のコーヒー文化が着々と進化を遂げるなかで、2011年の誕生以来、独自の魅力を放ち続ける「猿田彦珈琲」。コーヒーの美味しさやメニューの豊富さ、空間の居心地のよさなどもさることながら、訪れるたびにしみじみ感じるのが、スタッフの接客がとても温かく、なおかつ距離感がちょうどいい、ということだ。

メニューを見ながら迷っていると、単に“売りたいもの”ではなく個人的なおすすめを教えてくれたり、手荷物が多いときは席まで収納ラックを持ってきてくれたり。スタッフが皆、気が利くうえ、押しつけがましくないのがいい。もはや街のコーヒー店の接客の域を超えて、レストラン、いや、ホテルの接客に近いかもしれない。

「そうおっしゃっていただけるのはとてもうれしいです。猿田彦珈琲では“たった一杯で、幸せになるコーヒー屋”をコンセプトに、最高のホスピタリティを目指しています」

そう語るのは、技術部ディレクターの都築尚徳さん。猿田彦珈琲を立ち上げた社長の大塚朝之さんを支え続けた創業メンバーで、現在は品質管理を統括している。

東京・調布にある「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」は焙煎(ばいせん)所が併設されている猿田彦珈琲の旗艦店。こちらはコーヒーの生豆。焙煎前はやや緑がかった黄色をしている

コーヒーをきっかけに人生が重なる瞬間がある

猿田彦珈琲におもてなしの精神が芽生えたのは恵比寿に第一号店が誕生したときのこと。都築さんはこう振り返る。

「今まで日本に少なかった高品質の『スペシャルティコーヒー』を気軽に飲める専門店を開きたい。そんな情熱をもってオープンを目指していましたが、とにかくお金がなくて(苦笑)。内装もドリップ台も友人に手伝ってもらいながら手作りして、どうにか開店にこぎつけたところ、通りすがりに開店準備の様子を見守ってくださっていた近所の方々がたくさん駆けつけてくださって。それが本当にありがたかったんです」

大手のチェーン店でもない、どこの誰ともわからない若者たちが始めたコーヒー店に立ち寄って、数百円のお金を払ってコーヒーを注文し、美味しいと言ってくれる。その数百円は、経済的に厳しい状況にあった都築さんたちにとっては「たかが数百円」ではない、心からありがたみを感じられるものだったという。スタッフには、自然に生まれた感謝の気持ちからいつの間にか、お客さんたちが帰る際にお見送りをする習慣も生まれた。

「応援してくれる方々のおかげで、コーヒーをきっかけに、人と人との人生が重なる瞬間があるということを知りました。毎日の暮らしのなかで生まれるそんなささやかな幸せを、ホスピタリティを通して、より多くの人に伝えていきたいと考えています」

猿田彦珈琲で使用されている豆はすべて、「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」内で焙煎されたもの。ブレンドのほとんどはこちらの「参号機」で焙煎されている。一度にたくさんの豆を煎ることができるため、味が安定するという

品質管理と持続可能性が、最高の一杯をもたらす

ところで、先程の都築さんのコメントにもあったように、猿田彦珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店だ。スペシャルティコーヒーとは、簡単にいうと、高品質で消費者が美味しいと満足できるコーヒーのこと。コーヒー豆の栽培、収穫、輸送と保管、焙煎、抽出など、すべての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底されている。

「スペシャルティコーヒーが生まれるための条件として欠かせないのが、美味しさに加え、トレーサビリティとサステナビリティ。つまり、工程に透明性があることと、持続可能であることです」

説明してくれたのは、広報の平岡佐智男さん。実は松竹芸能に所属するお笑い芸人(!)で、「コーヒー芸人」としての顔ももつ。

「トレーサビリティとは、コーヒーの生豆をどこで誰がどのようにして作ったのかがわかる、ということ。どうしたら美味しいコーヒーを作れるかを追求すると、必然的に、さまざまな工程での品質管理が重要になっていくので、スペシャルティコーヒー=トレーサビリティの高いコーヒー、となるんです」

左から広報の平岡佐智男さん、技術部ディレクターの都築尚徳さん。コーヒー好きが高じて“コーヒー芸人”となった平岡さんは、3年ほど前にインスタグラムに「コーヒー屋さんで働かせてくれませんか?」と投稿したところ、猿田彦珈琲から白羽の矢が立ち、2017年に参画。都築さんはもともと教員志望だったが、友人で現社長の大塚さんの情熱とゼロイチのものづくりの面白さに背中を押されて創業メンバーに

分断が起こりやすいときだからこそ

サステナビリティもまた、私たちが美味しいコーヒーを飲み続けるために欠かせない要素。品質の高い豆を生み出す素晴らしい生産者たちが仕事を続けられなくなってしまったら、この世から美味しいコーヒーが消えてしまうからだ。

「来年も再来年も質の高い豆を作り続けてもらうために、生産者とは適正な価格で取引をしています。猿田彦珈琲で扱うほとんどのコーヒーは生産者とダイレクトトレードを行いながら、豆の品質、美味しさをチェックすると同時に、彼らが継続して生産に取り組むために必要な利益を還元しています」

取引のために現地に通っていると、サステナビリティの大切さを実感する、と都築さん。

「生産者の子どもの成長を目にし、今年から学校に通い始めたんだ、なんて話を聞くと、一人ひとりの生産者にその人の人生があるのを感じます。親が子どもを、家族を守るという当たり前の願いをかなえられないビジネスは、私たちはしたくありません」

現在はコロナ禍の影響で海外への渡航が難しい状況だけに、なおさら、海の向こうの生産者のことを忘れずにいたい、と語る。

「分断が起こりやすいときだからこそ、取れる限りのコミュニケーションを取ることが大事。それは生産者だけでなく、目の前のお客さまやスタッフに対しても同じことです。厳しい状況でもお店に足を運んでくださるお客さまの生活に寄り添いながら、私たちの信念を少しずつでも届けていきたいと思っています」

焙煎所内ではコーヒーの味や香り、焙煎の具合などをチェックする「カッピング」と呼ばれる作業も行われる。ブレンドのコンセプトに合わないなどの理由で店舗では使用できない豆が出てきても、廃棄せず、有効活用するのが猿田彦珈琲流。焙煎し直して一定の品質を確保し、公益財団法人「風に立つライオン基金」のチャリティコラボ企画商品に使用。収益の一部を寄付する活動を行っている

Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi

わたしと未来のつなぎ方