コロナ禍でもSDGsを進めるために必要なこと たかまつななが専門家に聞いた

2030年に向けて持続可能でより良い世界を目指すための国際目標「SDGs」。新型コロナウイルスの影響で貧困が拡大したり、家庭内暴力が深刻化したりと、達成が危ぶまれる目標も出てきました。コロナ禍でもSDGsを進めていくには――。時事YouTuberのたかまつななさんが、専門家に聞きました。

時事YouTuberのたかまつななです。新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界ではさまざまな課題が浮き彫りになっています。SDGsで掲げられた17の目標の中でも、状況が悪化してしまったもの、減退してしまった取り組みがあります。

コロナ禍という未曽有の困難にあっても、SDGsを推進し、よりよい世界をつくっていくためには何が必要なのか。「お笑い芸人と学ぶ 13歳からのSDGs」(くもん出版)の出版を記念したイベントで、外務省でSDGs達成に向けた施策を進めている伊東孝将さんと、「ソーシャルビジネス」を手がける「ボーダレスジャパン」代表取締役の田口一成さんに、聞きました。(イベントは2020年10月に開催しました)

●伊東孝将さん 外務省国際協力局地球規模課題総括課でSDGs達成に向けた国内外における関連施策を推進。国際機関に関する業務や経済協力における分野別の取り組みにも携わる。

●田口一成さん 社会問題を解決するための「ソーシャルビジネス」を手がけるボーダレスジャパン代表取締役。2007年創業。現在は世界13か国で37社のソーシャルビジネスを展開している。今年4月からは、CO2排出量ゼロの再生可能エネルギー100%を提供する電気事業「ハチドリ電力」を立ち上げた。

日本のSDGs、3つの柱

――まず、伊東さんにお聞きしたいのですが、いま日本政府はSDGs達成に向けてどのような取り組みを進めているのでしょうか。

伊東孝将さん(以下、伊東): 2015年9月に国連でSDGsが採択されてから、日本政府はまず国内の基盤整備に取り組みました。具体的には、2016年5月のSDGs推進本部立ち上げです。

推進本部では、国としての全体的な指針である「SDGs実施指針」を決定しました。そのうえで「具体的に何をしたら良いのか、いまいちわからない」という声もあり、SDGs達成に向けた企業や団体などの先駆的な取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を創設しました。こうした表彰を通じて、「SDGsとは何か」「どんな取り組みができるのか」を広く知っていただくとともに、多様な主体による具体的な取り組みの後押しをしていこうとしています。

――そのほかにはどんなことを進めているんですか。

伊東: 2017年12月の第4回会合では、日本の「SDGsモデル」を世界に発信するために『SDGsアクションプラン2018』を決定しました。それ以降アクションプランは基本的に半年に1回アップデートしています。現行の『SDGsアクションプラン2020』では次の3本柱を中核に置いています。

1本目の柱は「ビジネスとイノベーション~SDGsと連動する『Society 5.0』の推進~」です。ビジネスとイノベーションを通じて社会課題を解決していきましょうというもので、まさに田口さんの会社と合致するものになります。

2本目の柱は「SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」です。2018年度から始まったSDGs未来都市、自治体SDGsモデル事業の認定など地方創世を推進するとともに、激甚化する災害に対してより強靭なまちづくりを行っていこうというものです。

3本目が、「SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメント」。2030年を見据えると、やはり若い世代と女性のエンパワーメントは必須です。さまざまな政策を通じて国内外でエンパワーメントを進めていこうという内容です。

SDGsと新型コロナ対策

たかまつななさんと伊東孝将さん=笑下村塾提供

――新型コロナウイルスとの関わりでいうと、日本のSDGs推進の取り組みはどのような意味があるでしょうか。

伊東: まず第2回「ジャパンSDGsアワード」で外務大臣表彰を受けた株式会社LIXILの取り組みがあげられます。トイレの未整備によってもたらされる社会衛生環境の問題を解決するために、安価で高品質なトイレを途上国に提供していることへの表彰でした。そんなLIXILはいま、新型コロナの感染予防のために、上下水道が整備されていない途上国地域でも利用可能な手洗いソリューションを開発し、提供・普及に努めています。また、本年SDGs未来都市に選定された大阪府では、新型コロナ対策をSDGsの観点から取りまとめた特設サイトを開設しています。

――コロナ禍のなか、SDGsの推進も停滞してしまっているようです。新型コロナによってSDGsはどのような影響を受けているのでしょうか。また、それでも推進するにはどうすればいいですか。

伊東: 新型コロナはいうまでもなく、私たちの社会にも大きな影響を与えました。多くの産業で生産活動がストップしたり、学校が休校になったり、家庭内暴力が増加したり……世界的に数多くの問題が浮き彫りになっています。

ただ、ここで指摘しておきたいのは、こうした問題の多くはSDGsのなかで既に解決すべき課題として掲げられている、ということです。

たとえば、まさに感染症そのものもそうで、目標の3番「すべての人に健康と福祉」のターゲットに感染症対策が記載されています。産業に関しては9番「産業の基盤を築く」、家庭内暴力については5番「ジェンダー平等を実現しよう」や16番「平和と公正をすべての人に」といった目標に包含されています。

――新型コロナによって私たちが身近に直面した課題は、SDGsと多くの共通項を持っているわけですね。

伊東: そうです。実際、コロナ禍を契機に普段の生活や活動を見直そう、そしてSDGsのために何かしようと考えている人も多くいます。われわれのところにも、「こういう状況だからこそSDGsに取り組みたい。何をしたらいいですか」という問い合わせが結構きています。確かに、SDGs推進の勢いが減退してしまった現実はあるかもしれません。しかし、皆さんが新しい生活のあり方を見直すなかで、SDGsのことも意識していければ、コロナからのよりよい復興を遂げ、今まで以上に前進していけるのではないかと思っています。

新型コロナの鎮静化かSDGs推進か

たかまつななさんと田口一成さん=笑下村塾提供

――さて今、イベント視聴者から「まずはコロナ鎮静化が先決ではないか」という意見がありました。SDGsを推進するどころではないんじゃないか、という趣旨だと思います。この点についてもご意見をお聞かせいただけますか。

田口一成さん(以下、田口) 考えて欲しいのは、経済対策も感染症対策も、環境という土台のうえで成り立つものであるということです。持続可能な環境という土台のうえに、社会があって、人間の活動がある、という大きな構造をまずは認識する必要があります。

たとえば、今回のパンデミックといった緊急事態には対症療法的な取り組みを短期集中で行う必要もあります。しかし、地球温暖化をはじめとした環境課題を無視していては、長期的には悪化していくばかりです。根本解決に向けてしっかり社会が動いていくという大前提のうえで、対症療法は進めていかなければならないのです。

――SDGsをどう推進するかは、ある程度各国に任せられていて、強制力や罰則もありません。そのため、こうしたパンデミックのなかだと優先順位がどうしても下がってしまうのかなと思いました。伊東さんはどうお考えですか。

伊東: コメントについて、まさにコロナの鎮静化、収束が非常に重要である点では同じ意見です。ただ、グローバル化が進んだ現代の地球社会においては、何か一つの問題が持ち上がったとき、その問題だけに目を向けていれば大丈夫、ということでは決してありません。ある問題は必ずその他の多くの課題とも複雑に絡み合っているからです。

たとえば日本が国内対策に注力して収束に成功したとして、まだ海外の多くの国で感染が拡大しているという状況なら、新型コロナが解決したとは言えません。だからこそ、いま世界各国が連携してワクチンの開発に協力したり、自国におけるいろいろな取り組み事例、有効性が見られた事例を共有したりしています。

ビジネスを通じて社会課題を解決する

――続いて、田口さんには、ボーダレスジャパンがどんな会社なのか、詳しくお聞きしたいと思います。

田口: 僕たちは社会問題を解決するためのビジネス――「ソーシャルビジネス」しかやらない会社です。社会問題解決のために起業する人を社会起業家と呼んでいて、社会起業家の数が増えたらその分だけ解決される社会問題の数も増える。だったら社会起業家のための会社があってもいいんじゃないかと思って、つくりました。つまり社会起業家のプラットフォームです。ここでは、起業や経営のノウハウ、そのための資金、一緒に働く人材・仲間を提供し、共有しあっています。

――具体的には、どんなソーシャルビジネスを手がけているのですか。

田口: だいたい1年間に約10社のソーシャルビジネスが誕生しています。たとえば、日本国内にもいる難民に雇用を創出する事業や障害がある方の賃金がなかなか上がらないなかで健常者と変わらない賃金の雇用をつくる事業、ホームレスの就職支援の事業、耕作放棄地を再活用して雇用を生み出す事業、海外の貧困家庭の母親たちに「マイクロファイナンス」(貧困層向け小規模金融サービス)を、養鶏事業をモデル化した「マイクロフランチャイズ」とセットで提供する事業など行っています。

――そうしたビジネスモデルの成功例をたくさんつくるために、どんなことをしているんですか。

田口: 起業を志しても、実際には起業できない人はたくさんいます。いざ起業しようとなると、どうしても経験や実力の不足を感じてしまうものです。その点、ボーダレスジャパンに来た学生さんは、起業を実際に経験することができます。入社後に、3人1組、資金1千万円で実際に起業するという修行を1年間行います。基本的にみんな素人だから1年後には資金は尽きてしまう。

そこで今度は、その失敗の経験を踏まえて自分の会社をつくればいいんです。ただ、経験を積んだとしても、起業資金やマーケティング、経営など自分たちだけでやるには難しいことが山積しています。そこで、ボーダレスでは、経験豊富なスペシャリストが、事業が単月黒字になるまで、無償で伴走してくれるようになっています。

――SDGsについて、田口さんはどのように考えていますか、

田口: 南アメリカの先住民に伝わる「ハチドリのひとしずく」という物語があります。ある日、森が火事によって大きく燃えてしまい、森に住む生き物は「我先に」と逃げ出します。しかし、クリキンディというハチドリだけはその小さなくちばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは、火の上に落としていく。ほかの動物たちが「そんなことをして、いったい何になるんだ」と笑うと、クリキンディは「私は、私にできることをしているだけ」と答える。

一人ひとりの行動は「微力だが、無力ではない」ということなのです。SDGsも一人ひとりに何かできることはあるはずです。「ハチドリのひとしずく」の精神でみんなが行動していけば、SDGs達成に向けて、変化が起こっていくと思います。

ソーシャルビジネスのプランをどう磨くか

――ボーダレスジャパンの取り組みは本当に素晴らしいと思います。そのうえで、この取り組みって、事業として上手くいかないものばかりになると困ってしまうんじゃないかと感じました。ビジネスプランを見るうえで、田口さんはどんな風に目利きを行っているんでしょうか。

田口: 目利きなんか全然ないです(笑)。僕らが見ているのは志です。

最初から実力がすごいある人もそうじゃない人もいるんですが、本気で社会を変えたいと思っているんだったら、たとえ未熟で不器用な人であっても、本当に少しずつですが、続ける限り花開いていって最後には成功するんですよ。だから、志ある人があきらめないで済むように、お互い助け合う仕組みをつくっているんですね。

――ビジネスプランを一緒につくるときに意識されていることはありますか。社会を変えたいといっても、それをビジネスにするということは難しいと思うんです。

田口: いっぱいあるんですが、全部一気に話すのは無理なので、いくつかお話します。ひとつは、ビジネスプランを練るときの順番です。ソーシャルビジネスではない普通のビジネスは、最初にマーケットの有無から始めるんです。

これから衰退するようなマーケットに乗り出すと、いくら素晴らしいアイデアであっても結局沈んでいく。反対に「これから成長するマーケットであれば食いっぱぐれないぞ」という感じです。

つまり、儲からなければすぐ撤退するということになる。けれど、僕たちがやっているのは社会課題を解決するためのビジネスです。だから、最初に行うべきはマーケットを見ることではなく、実はソーシャルコンセプト――社会づくりの設計図を最初につくることなんです。

――設計図をつくることは大事ですよね。

田口: 社会課題を見ると、みんなすぐに対策を考えようとするんですが、まずは課題が起こっている原因をしっかり探さないといけません。原因がはっきりして初めて対策をあげることができる。この設計図を固めるのがすごく大切で、その次に対策をビジネスにどのように活かしていけるか、という順番で考えていく。そうすれば、事業を立ち上げてからもブレないんです。

――ほかにはどういったポイントがあるでしょうか。

田口: ソーシャルビジネスは儲からなくて難しいよね、という考えを見直してみることです。ビジネス以外で事業を行うなら、寄付を募ることが有力な選択肢になりますよね。でも僕からしたら、寄付を集めることもかなり難しい。

むしろ、何とかビジネスにしてしまおうと思ってスタートすれば、想像以上に形にできることが多いし、実はビジネス独自の解決の仕方が見つかることもすごく多い。

あとはやはり、一定以上の営業利益を出すことをゴールに設定してプランニングを行うことです。僕らは営業利益が15%を越えるようにプランを磨き上げるようにしています。この利益率を達成するには、事業に何かユニークネスがないといけません。高いハードルを課すことで、より洗練されたプランをつくることができるのです。

企業のSDGs「見かけ倒し」にならないように

――SDGsに取り組もうと頑張っていたのに、今回のコロナによって、ロードマップが大きく崩れてしまって困っている企業も多いように感じます。企業がSDGsをやるうえでは、コロナ禍でどういうことに注意していけばいいですか。

伊東: 最近問題視されている「SDGsウォッシュ」のように、見かけ倒しになったり、内実はSDGsに反するといったことに注意する必要があります。SDGsに取り組んでいるからこそ築いてきた信頼を大きく失ってしまう可能性がありますから。ただ、それ以外には「これが正解」というものはないと思っています。

田口: 僕はSDGsじゃなくて、SDRsに変えた方が良いと思っています。実は企業って、直接的、間接的には17個のゴールすべてに関係しているんです。それなのに、いくつかゴールをもってきて「これを達成しました」ということには、違和感があります。企業の立場からいうと、SDRs。G(ゴール)じゃなくて、R(ルール)としてSDGsを使う必要があると思っています。

――チェックリストのような考え方でしょうか。

田口: そうですね。SDGsに反するような企業の取り組みとしてどのようなものがあるのか、反対に良い影響を及ぼすような取り組みはどうやったらできるだろうか、といった観点で17個の目標すべてでチェックリストをつくる。そのリストを使って、各企業がすべての項目について活動の水準を引き上げていったり、反しないよう身を正したりする。企業としては、そんな使い方ができるチェックリストなら、ゴールリストよりもいいんじゃないかなと思います。

――それはいいですね。現在のSDGsだと、一番詳細な指標であっても、企業のチェックリストとして使うには難しいと思います。上手く工夫して、製造業ならこういうことに気をつけましょう、中小企業にできることはこういうことだよ、とかの使い方ができる方法を考えられればいいなと感じました。この件について伊東さんはいかがですか。

伊東: チェックリストも興味深いのですが、誰かにつくってもらったリストをこなせばいいというだけではなく、自分たちの意思でやってみたいこと、やってきたことが間違っていないかどうかを確認する一つのものさしにもなると思います。SDGsを新たな生活の羅針盤、指針にしよう、ということです。

海外のSDGsの取り組みに学ぶ

日本のSDGs達成状況=笑下村塾提供

――日本国内のSDGsの進捗をどのように見ていますか。

伊東: よく指摘されるのが、5番「ジェンダー平等を実現しよう」です。議員や役員における女性比率が低いことはよく言われています。達成状況のランキングを見ると、スウェーデン、デンマーク、フィンランドという北欧三カ国がトップ3にいますが、3カ国のいずれの国でも、女性の活躍はかなり進んでいます。女性が活躍する土台というのが、かなり根付いているのでしょう。

他にも、スウェーデンでは、IKEAをはじめ企業のSDGsへの取り組みが非常に活発であることが評価されています。日本が海外に見習うべきところはたくさんあります。一方で、平和や教育といった項目においては、日本は非常に高く評価されており、ODAや国際機関を通じた開発途上国への支援なども行っています。

――海外の取り組みなどで田口さんが注目されている事例は何かあるでしょうか。

田口: SDGsと合わせて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)という言葉に注目が集まっているそうですよ。検索ボリュームはSDGsよりも大きいほどです。

――循環型というと、これまで廃棄されていたものを資源として活用する、ということでしょうか

田口: そんな感じです。サーキュラーエコノミーはSDGsの具体的な一つの形ともいえると思っています。そしてサーキュラーエコノミーの実現のために、実践的な取り組みをしている企業はたくさんあります。

欧米、とりわけヨーロッパで、企業がこうしたことに積極的になるのはなぜかというと、圧倒的に市民の声の力によるものなんです。環境や資源に関して企業が社会的責任をしっかり果たしているかどうか、市民、あるいはNGOやNPOからの監視が凄くあるんです。ここがやっぱり日本とヨーロッパにある一番の違いかなって思います。

個人レベルの取り組みが突破口

――田口さんは、民間企業としての立場から政府に期待する支援や、現状の政府の課題をどう考えていますか。

田口: 実は、政府にしてほしいことを考えたことはないんですよね。むしろ、何かして欲しいではなくて、自分にはできることがあるという思いからスタートすることこそ大切です。

とはいえ、今回のような危機では、どうしても事業存続のために社会課題の解決が後回しになってしまうことがあります。たとえば再生可能エネルギーについて、長期的に見れば火力発電のままでいいわけがないんですが、今を生き延びるためには火力発電で安い電気を調達せざるを得ない、という場合もあります。そういう場合には政府に、再生エネルギーを積極的に採用している事業者に対して、火力発電の電力との差額分を援助するといったことを考えて欲しい。

――SDGs推進の意思はあるけど、経営危機などで一歩踏み出せない企業を後押しするということですね。さらに聞きたいのですが、どんなことがSDGs推進のための突破口になると思いますか。

田口: ESG投資(社会的責任投資)ってあるじゃないですか。社会問題や環境問題に積極的な活動をしている事業にはどんどん投資をして、逆にそうした問題に反する事業からは投資を引いていくといったものですよね。日本の金融機関とかでも、ESG投資の発想がもっと導入されれば面白いと思います。

つまり、融資を行う際の判断基準の一つにSDGsへの取り組みがあって、そこの評価に応じて利率が変わるといった具体的な話が出てくれば、多くの企業のなかでSDGsに取り組むための力学が働くはずです。

2030年が重大なマイルストーン

――最後の質問になりますが、SDGsのさらに先の未来、つまり2030年以降に向けて、私たちが考えるべきことはなんでしょうか。

伊東: もちろん2030年にすべての課題が解決されて持続可能な社会が実現できれば理想的です。しかし、未来に何が起こるのかを予測することは難しいですし、5年先、10年先にはきっと新たな課題は生まれていることでしょう。その課題を解決しようとするとき、今回のSDGsのように国際社会が一体になって取り組む仕組み、SDGsの後継となるものも生まれてくると思います。

2030年以降も「誰一人取り残さない」持続可能なより良い社会を築いていくため、ぜひ皆さん一人一人にも身近なこと、できることからアクションを起こしてほしいと思います。

田口: 僕は今を生きる世代として、2030年を重要な目標地点と考えています。つまり、地球温暖化を食い止めるための2つのマイルストーンのうちの一つが2030年です。2030年までにCO2排出量を2010年時点の半分にしなければならない。次のステップは2050年までにCO2排出量をゼロにすること。この二つを達成しなければ、地球温暖化は完全に不可逆的なものになってしまう。だから2030年までのこの10年は、それ以降の地球の未来までも決してしまう時代にある。そのことを僕たちはまず知るべきだと思います。

――その課題のためにできることはなんでしょうか。

田口: たとえば僕は電力事業に力を入れています。というのも、僕らの家庭生活のなかで排出されるCO₂の半分はなんと電気を使うことからきているんです。だから、使う電力を自然エネルギー100%のものに切り替えたら全体の排出量を半分にできるわけです。でもそんな方法があることを、そもそもみんな知らない。みんな無関心なんじゃなくて、未認知なんだと思います。

――認知すれば行動につながっていく、と。

田口: そう。社会の課題は何か、どういう解決があるのか。それがわかればみんな動けるんだと僕は信じています。ぜひ今回のような企画をやりつづけながら、多くの人に認知してもらって、「だったら、やるぜ!」といってくれる人を増やしていきたい。

社会全体の3%の人が本気になったら、社会活動は成功するらしいんですよ。SDGsに対して「やるぜ」っていう人が社会に3%いたら、絶対上手くいく。まずはこの10年のうち、できるだけ早くに3%の企業が、3%の個人がしっかりと推進する状況をつくっていければな、と思っています。

対談を終えて

もし、SDGsが進んだ世の中でコロナがおきたら、どうだったのか。より苦しむ人が減ったと思う。起きてから気づくことがたくさんある。SDGsの中には、そんな未来への警鐘がたくさんある。だからこそ、今私たちができることを取り組むべきなのであろう。

SDGsをチェックリストにして、企業や個人でできることを考えることも大切だと思いました。田口さんがおっしゃった「社会全体の3%の人が本気になったら、社会活動は成功する」というのが印象的でした。3%の仲間を増やしていきたいと思いました。

イベントの動画はこちらから見られます。

時事YouTuberとして、若者に社会問題を身近に伝える。若者と政治をつなぐため、株式会社笑下村塾を設立し、全国の学校へ出張授業を届けている。お笑いを通して社会問題を発信中。社会風刺ネタを寄席でやることも。著書に『政治の絵本』『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』