たかまつなながナイツに解説!「私たちは微力だけど、無力ではない」笑って学ぶSDGs

最近よく耳にする「SDGs」。「持続可能な開発目標」といわれて何を思い浮かべますか? 時事YouTuberのたかまつななさんは、SDGsの入門書「お笑い芸人と学ぶ 13歳からのSDGs」を上梓したばかり。今回は、漫才師・ナイツのお二人をゲストに迎え、たかまつさんにSDGsについてわかりやすく教えてもらいました。

telling,読者のみなさん、こんにちは。時事YouTuberのたかまつななです。

最近よくSDGsという言葉を耳にします。一体SDGsって何だと思いますか?
私は今年9月末に『お笑い芸人と学ぶ 13歳からのSDGs』(くもん出版)という本を出版しました。お笑いで身近に伝えたいと思い、漫才師のナイツさんをゲストに迎えて「笑って学ぶ SDGs」という出版イベントを開催することができました。常に社会の動きに目を配り、お笑いを通して時事問題に切り込んできたナイツのお二人と一緒に、SDGsのことを学びました。

持続可能な開発ってなんだろう

――お二人は、SDGsという言葉を知っていますか。

土屋:聞いたことはあります。

塙:最近、新聞とかでよく見るよね。でも何て読めばいいのかよくわからなくてさ。「エスディージーエス」なのかなって思ってた。

土屋:確かに最後の小文字のsは何て読めばいいかわからないね。

――SDGsは「サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ」の略で、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。日本語で「持続可能な開発目標」のことです。いま世界が抱える大きな課題を2030年までにみんなで解決しようと立てられた17個の目標のことをSDGsと名付けたんです。

塙:そうなんだ。じゃあSAGAは何の略なんですか?

土屋:それはあなたのお兄さんの歌ですよ。略でもなんでもなくて「佐賀県」のことだよ。でも「持続可能」ってあんまり使わない言葉ですよね。

――少しわかりにくいですよね。なので具体的に考えていきたいと思います。もし目の前に貧しい人がいたら、何をすると良いと思いますか?

土屋:ご飯をごちそうしてあげる。

塙:仕事紹介してあげるとかですか。

――塙さんの提案が「持続可能な開発」に近いです。お金を寄付するだけだと、すぐになくなってしまいます。でも仕事を紹介してあげると、働いて次の日も自分でお金を稼げるようになるんです。これが経済から見た持続可能な開発ですね。

土屋:持続可能な開発ってそういうことなんだ。

――ほかにも自然環境を守りながら電力の開発を目指したり、地域全体のお医者さんのレベルが上がるように医療支援をしたりすることが当てはまります。このように地球や私たちの暮らしを長持ちさせるために、経済・環境・社会すべてに目を向け、配慮することが大切にされています。

写真で一言?SDGsクイズ!

――さて、ここからは「3分でわかるSDGs」と題して、SDGsの目標に関係する写真について、クイズをしていきます!最初はこちら。ネパールの子どもたちの写真です。この子たちには共通点があるのですが、それはいったい何でしょうか?

塙:全員「しまむら」の服を着ている。

土屋:それはちょっとありそうですよね。日本の古着が送られることがあるって聞いたことありますし。

――正解はですね、なんとレンガ工場に出稼ぎに来ている子どもたちでした。

土屋:ええ……働いているんだ。

塙:後ろに写ってるのがそのレンガなんだね。

――はい。家が貧しいために都市部に行って家族みんなでレンガをつくっているんです。もちろん学校にも通えていません。ということで、この写真に関連するのはSDGsの1番に掲げられた目標「貧困をなくそう」でした。

――続いてはこちら。浜辺で人が歩いているんですが、大荷物で、頭にも椅子や布のような塊を乗っけています。この人が困っていることはいったい何でしょうか?

塙:この人はヘアスタイルに悩んでいるんじゃないですか。本当はかんざしがほしかったんだけど、なかったから椅子で代用しているとか。

土屋:いやいや。この状態でヘアスタイルに悩むか。

塙:荷物を運ぶ車がないとかじゃないの。

――実はこの人は、民族衝突によって避難をしている最中なんです。世界では、紛争や迫害によって、一時間当たり平均1200人が避難を余儀なくされています。しかも、そのうち半分は子どもたちだと言われています。この写真はSDGsの10番「人や国の不平等をなくそう」と関連していました。

――続いてはこちらです。ニカラグアという国で飛行機から何かがまかれている写真です。いったい何がまかれているでしょうか?

塙:飛行機の下にあるのは畑かな。ちょっとわからないんだけど、薬物をつくっちゃってるんじゃないかな。子どもたちが薬物を育てているって現実があるんだよな。

土屋:そんな現実もあるんだ。

――そういう現実も確かにありますね。ただ今回は違うんです。これは禁止農薬をまいているんです。その結果、この農場で働いている人たちは「無精子症」になってしまうんです。

塙:そういう問題もあるんだ。これはSDGsのうちの何番の目標になるの?

――これは12番の「つくる責任 つかう責任」に当てはまります。まず商品をつくる側が責任を求められている。そして、つくる側だけじゃなくて、商品をつかう側にも責任が求められている。たとえば、悪いことをしている会社の商品を私たちは積極的には買わないようにするとか、消費者側から「やめてくださいよ」って言うようにするとか。

土屋:なるほど。だから消費者のほうにも責任があるわけだ。

――次はこちらです。これは地球温暖化対策をした場合の100年後のニューヨークの街の様子を予測したCG画像です。この写真を見たうえで、温暖化対策をしなかった場合には、ニューヨークはどうなってしまうと思いますか?

塙:写真にすごく大きい牛が写っていますよね。でも牛が大きくなっているんじゃなくて、人間がちっちゃくなっているんですよ。温暖化が続くと、どんどん人間が太陽にあたらなくなって縮んでいくんです。これはSDGsの4番「縮む人類」です。

――全然違いますよ(笑)。4番は「質の高い教育をみんなに」です。

土屋:縮まないようにしよう、じゃないよ。

――正解は、温暖化対策をしないと完全に水没してしまうんです。その予測CGがこちらです。ちなみに一つ前のCG画像も、よく見ると後ろの方にちょっと水が迫ってきていますよね。

塙:本当だ。温暖化対策をしても、あそこまで水が来るよってことなんだ。

土屋:ここはニューヨークの名所なんだけど、対策をしないとそこも水で埋まってしまうんだね。

――気温が4℃上昇した場合、海水面が数メートル上昇してしまって、世界の6億人の住む土地が水没してしまいます。これは13番「気候変動に具体的な対策を」です。

――続いてはこちらです。これは私が実際に行って撮った写真なんですけど、何のための建物でしょうか?

塙:この建物はきれいで新しいじゃないですか。だから、その外観につられて中に入らされて、銃とかを造らされてしまう、みたいなことじゃないですか。

――正解は人身売買された子どもたちをかくまうシェルターなんです。そうした子を保護して、社会復帰できるようにミシンを使った仕事などを訓練するところなんです。私が取材した子は、「サーカスを見に行こう」と誘われて、紙に自分の名前をサインしたんだそうです。辛うじて書ける自分の名前を記入したら、なんとその紙は人身売買の契約書だったんです。

日本の達成度は世界で17番目

――このようにSDGsは17の目標それぞれに、より具体的な目標である169個の「ターゲット」、そしてその達成度合いをはかるための232の「指標」というものがあるのです。この指標を見ることで、各国の達成度を確認することができます。日本は何位くらいだと思いますか?

塙:そうやって聞くってことはあんまりよくないってことなのかな。じゃあリアルに予想すると、16位くらいなんじゃないですか。

土屋:先進国なのでベスト10くらいには入っていてほしいですね。8位くらいだと思います。

――正解は17位でした。塙さん、めちゃくちゃ惜しいです。

塙:先進国として17位ってのはどんな感じなんですか? アメリカとかと比べると。

――アメリカより良い順位なんですけど、年々下がってきています。

土屋:上位に来ているのは全部北欧じゃないですか。

――日本の達成状況を色分けして示したものがこちらにあります。達成度が高いのが4番の「質の高い教育をみんなに」と9番の「産業と技術革新の基盤をつくろう」、16番「平和と公正をすべての人に」です。一方、達成度が低いのが5番「ジェンダー平等を実現しよう」。指標を見ると、女性議員の少なさや男女の賃金格差が特に悪くなっています。13番「気候変動に具体的な対策を」、14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」、17番「パートナーシップで目標を達成しよう」のあたりも低いです。

塙:14番について海が汚いというのも悲しいよね。

世界中のお母さんの必需品は日本発祥のアレ

――ここからは、実際に行われている解決策を見ていきたいと思います。こちらはオーストラリアにあるスーパーの写真ですが、このスーパーはちょっと特殊なんです。何が特殊だと思いますか?

土屋:えー、普通のスーパーに見えるけどね。

塙:タダ!

――正解です!全商品が無料のスーパーなんです。ここでは、賞味期限が切れる前に処分されてしまう食品を大手スーパーから譲り受けて、無料で提供する取り組みが行われています。先進国の食品ロス問題を解決しようというものなんです。

塙:このスーパーに行けば、貧困に悩んでいる人でも食べ物を受け取ることができるんだね。

土屋:確かにあったらうれしいな。

――日本ではすごい量の食品ロスがある一方で、子どもの約7人に1人が貧困状態にあります。そうした問題を考えても、こうしたお店があるといいですよね。

――続いてこれは、SDGsのマークが入ったTシャツを着たキャラクターです。これはあるものとSDGsのコラボTシャツなんですけど、何とのコラボでしょうか?

塙:「アンダーアーマー」でしょ。

土屋:いや、巨人のユニフォームをつくっているアンダーアーマー社じゃねえわ。

塙:シャツを着ている女性にヒントがあるってことかな。ちょっとわからないな。

――これはニュースでも取り上げられていたゲームなんです。正解は、「ポケモンGO」とのコラボレーションでした。ポケモンGOではキャラクターの着せ替えができるので、そのラインナップにSDGsのTシャツが入っているんです。

塙:ポケモンGOをプレイしながら勉強できるんだ。

――ここまでは世界の取り組みを見てきましたけど、ここからは日本が関わる取り組みも見ていきたいと思います。さて、この写真の「?」マークの部分で、女性が日本発祥のあるものを手に持っているんですね。それはいったい何でしょうか? お子さんがいるほとんどの家庭にあると思いますよ。

土屋:女性は「?」と一緒に赤ちゃんも抱いてますよね。おしゃぶりが日本発祥だったりするんですかね。

塙:赤ちゃんと関係していて小さめのモノって何だろう。哺乳瓶とかカラカラとか?

土屋:僕らの家にもあるってことでしょう。うーん、母子手帳?

――正解です!母子手帳は日本発祥なんです。写真のこの女性はパレスチナ難民の方で、避難しながらの生活だと同じ病院に通えません。だけど、母子手帳があれば、お医者さんが変わっても、診断の流れが把握できます。

土屋:日本発なんだね。知らなかったなあ。妊婦さんだって使えるからいいですよね。

――次の写真には、日本の超有名企業の商品が写り込んでいます。たぶん日本のほとんどの家庭にあると思うんですが、いったい何の商品でしょうか?

塙:これは意外なところで、女の子の目にコンタクトレンズが入っている。

土屋:写真のなかだと洋服くらいですかね。あとは、スプーンが「ココイチ」のカレーのスプーンのあまりだったりとか。

塙:スプーンで食べているものが、日本のインスタント食品なんじゃない?

――実は「味の素」なんです。ガーナでは生後6か月以降の子どもの栄養不足がとても深刻です。離乳食を食べさせる習慣があるので、そのなかに栄養を強化した味の素のサプリメントをふりかけて食べてもらうようにしているんです。「栄養改善プロジェクト」といいます。

土屋:そうか離乳食なんだ。

塙:確かに味の素は家にあるね。こんなことを日本の企業がやっているんだ。すごいね。

社会が変わらない理由

――実際にSDGsで社会を変えるためには、個人、家族、コミュニティー、政策の全部の単位で、みんなが頑張らないといけないんですね。日本ではいま、政策面では内閣府が主導になり、力を入れています。学校教育でも小学校の教科書では、SDGsが扱われるようになっています。企業でも管理職以上にSDGsの研修の受講を義務付けるところが出てきています。ただ、地域コミュニティーや個人、家庭での意識はこれからの課題だと思います。

土屋:確かに家族とSDGsの話をすることはないですね。うちはもう子どもが小学4年生になったんだけど、そろそろこういう話をした方がいいですね。

塙:学校でもSDGsを学ぶって話だけど、やっぱり教育が一番だと思いますよね。

土屋:ひょっとしたら、子どもに聞いてみたら「知っているよ」ってなってるかもしれない。小学生新聞とか読んでいるから。

塙:逆におじさんたちが知らなすぎるかもしれないね。ななちゃんが漫才協会の総会でちゃんとSDGsの研修をやったほうがいいかも。

――ぜひみんなでやりましょうよ!

塙:で、途中から東京平(あずま・きょうへい)師匠が「だからなんなんだよ! 俺たちの仕事は増えるのか」って言い始めたりして。

なぜSDGsを推進するのか

――さて最後に、私たちがSDGsを進める意味について話したいと思います。日本はいろんな国を支援していて、こちらはアフリカのマダガスカルの道路の写真です。私が撮影した写真なんですが、結構きれいな道ですよね。実は日本が支援してつくった道路で、「東京通り」といわれているんだそうです。

塙:日本からすごく遠い国で、アスファルトの道をつくってあげたんだね。

――このように、日本は道路や橋を無料や格安で作って支援しているんですが、そこにはいろいろなメリットがあると思うんです。例えば、東日本大震災のとき、東ヨーロッパのセルビアという国が2億円を支援してくれました。実はセルビアは非常に貧しい国で、国民の平均月収がわずか5万円、失業率が高い国なんです。それなのに、2億円も寄付が集まった理由は、何十年も昔からずっと日本が支援してきたからです。日本が困っているんだったら助けたいという思いでセルビアの方々が集めてくださった。長年の支援が信頼へと繋がっていて日本の国益にもなっている。

土屋:一方的に助けているんじゃなくて、結果的にはお互い助け合いになるんだ。

――次に、企業が支援をする意味。具体例として、住友商事がマダガスカルにつくったニッケルやコバルトを生産する工場の話があります。作業員の方が着ている作業着は大量生産品を輸送して使ったほうがはるかにコストが安いんですが、現地の洋服屋さんがつくっているそうなんです。

塙:その作業着をつくるって仕事がまた生まれて、現地にお金が落ちるようにしているんだ。

――そうです。こうした支援をつづけた結果、なんと住友商事の工場が描かれた紙幣がマダガスカルで発行されたんです。こうした支援を通じて、外国企業への反対運動も防止できるし、ビジネスチャンスもものにしやすくなるんです。

土屋:工場にもメリットがあるし、現地の人もノウハウを教えてもらったりできるんですね。

――最後に個人の支援の意義を確認していきたいと思います。カメルーンにある、日本が建てた学校に行ったんですが、日本人だというと、みんながたくさん集まってきて「ありがとう、ありがとう」と何度も声をかけてくれるんです。

塙:中津江村(大分県)みたいな感じだね。

土屋:いや日韓ワールドカップ(2002年)の時にカメルーン代表が来てたけど。エムボマとか。

――ギリギリ分かりましたけど、私が小学生のときの話ですよ(笑)。話を戻すと、「ありがとう」と言われるとうれしいですよね。私は青年海外協力隊の方々をいろいろな国で密着取材させてもらったことがありますが、みんなすごく生き生きしているんです。なんでだろうって考えると、多分「ありがとう」って毎日言われているからじゃないかなって思ったんです。

塙:人のために行動しているんだもんね。

――ナイツのお二人は「ありがとう」って言われてうれしかった経験はありますか。

塙:昨日、次女に間違い探しの本を買って帰ったら、「こんなの読まないよ」「塗り絵のほうが良かった」って言われましたよ。「ありがとう」だったらきっとうれしかったなあ。

土屋:僕は料理をつくってくれるかみさんにいつも「ありがとう」って言うようにしています。逆に、食器洗いとかをして「ありがとう」って言われるのがうれしいですね。ここで家庭円満をアピールしておきます(笑)。

塙:もともと好感度低いんだから、上げようとすんなよ。

土屋:いや低くはないでしょ。

――めちゃくちゃ素敵ですね。見る目が一気に変わりました。ぜひみなさんも土屋さんのように、できることから始めていただきたいなと思います。私たちがすぐにできること、それは私の出した本『13歳からのSDGs』を購入することです!

塙:いやいや、そのオチはダメだろ(笑)。この本とかを通して、まずは知るということですよね。

本を通して、伝えたいこと

今、地球が悲鳴を上げています。異常気象により災害が増え、世界から戦争は無くならず、貧富の差が広がり、海をプラスチックで汚しています。このままだと、未来の子どもたちにたくさんツケを回してしまいます。そんな未来は作りたくありません。
この本は、このままだと未来が危ないという未来予測から始まり、持続可能とはどういう概念なのかを知り、17個の目標をなぜやらないといけないのか、私たちの生活にふりかかるとどうなるのか、日本と世界の現状をデータでみて、さらに、私たちが今日からできる100個のアクションを紹介しています。
そして最終章は、私たちが考えるべき5つの論点が書かれています。これらは簡単には答えがでない問いばかりです。
考えて、行動する。SDGsは調べ学習じゃない。何年にできてとかそういうことが大事なんじゃない。目標達成のために、私たちひとりひとりが当事者意識をもち、考え、行動する。変革する。それが大事なのです。
SDGsは17個の目標です。達成しないと意味がありません。子どもにツケを回さないために、今できること一緒にはじめませんか。私たちは微力だけど、無力ではありません。

イベントの動画はこちらから見られます。

時事YouTuberとして、若者に社会問題を身近に伝える。若者と政治をつなぐため、株式会社笑下村塾を設立し、全国の学校へ出張授業を届けている。お笑いを通して社会問題を発信中。社会風刺ネタを寄席でやることも。著書に『政治の絵本』『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』