空手・清水希容さん「空手にとっては最初で最後の五輪かも」中止を覚悟の一方…目指すのは金メダル

東京五輪で初めて実施されるはずだった空手の女子形は次回大会では実施されないことが決まっています。「最初で最後」になるかもしれない五輪での金メダルをめざし、練習を積んできた清水希容選手(26)は、収束しないコロナ禍をどのように捉えているのでしょうか。日々の過ごし方などについても、お話をうかがいました。

自分を成長させられるから、延期はプラス!

——まず、「希容」(きよう)というお名前の由来から教えてください。

清水希容さん(以下、清水): 父方の祖父の知り合いに付けてもらったんですけど、「希望の器を大きくできるような子に」という願いが込められているそうです。同じ名前の人に出会ったことはありません(笑)。私自身、この名前を気に入っていますし、空手家としてしっかり「希容」の名前を世界に刻みたいと思っています。

——オリンピアンになるべく付けられたようなお名前ですね。今年、開催予定だった東京五輪には、空手の「形」で出場することが内定していましたが、1年の延期が決まりました。ショックはありましたか。

清水: 自分の中ではプラスに考えていて、延期になった分、稽古に打ち込めますし、課題に取り組める。より自分を成長させる期間ができたと前向きに考えています。

——新型コロナウイルスの収束が見えず、来年の開催も危ぶまれています。

清水: 東京五輪を目指している、おそらく半分以上のアスリートが中止を覚悟しているのではないでしょうか。もちろん、開催して欲しいですけど、収束が見えない中で、開催を強行すべきなのか……。全世界のアスリートが、平等に、同じ環境で臨めるというのが五輪の醍醐味。日本だけの問題ではなく、世界で環境が整わない限り、開催が難しいことも理解しています。

2016年、東京五輪の追加競技に空手が決まった直後の清水希容選手

東京五輪、“出るからには絶対に金メダル”

——東京五輪から正式種目となった空手ですが、次回大会では実施されないことが既に決まっています。

清水: 空手にとっては最初で最後の五輪かもしれない。出場したい気持ちはすごく強いですし、出るからには金メダルを絶対に獲りたいんですけど、こればっかりは自分たちで決められることではありませんから。

——コロナでの、自粛期間中などはどのような練習をしていたのでしょうか。

清水: 自粛期間はいっさい外に出ず、週に一度ぐらい、太陽を浴びに外に出かけるだけでした。幸いにして、私の自宅には空手の練習ができる「縦6㍍、横4㍍」の部屋があり、緊急事態宣言下も部屋に籠もって稽古ができました。空手はひとりでも、どこででも、練習ができますが、他の競技は広いスペースがないとできなかったり、道具を使う必要があったり……私はまだ、恵まれていると思いました。時には新潟にいる古川哲也コーチにリモートで指導してもらうこともできたが、画面越しだとコーチには平面的な動きしか見えないし、タイムラグも生まれてしまう。その点は難しかったですね。

——自粛期間中に新たな発見はありましたか。

清水: 他競技の選手と話す機会が増えましたね。陸上の飯塚翔太選手(16年リオデジャネイロ五輪男子4×100mリレー銀メダリスト)や、女子ラグビー、フェンシングの選手たちと一度ほど、リモートで意見交換をするようになりました。本当は直接、会って話したいんですけど……。既に五輪出場の経験がある選手に五輪のことを聞くこともありますが、この状況でいかにモチベーションを保ち、どんな練習を、どうアレンジして取り組んでいるのか。そうした話題が中心になっていますね。

ミキハウス提供

オフは「体力回復」、空手漬けの日々!

――拠点は大阪ですが、出稽古も再開されていますか。

清水: 基本は所属先(ミキハウス)の道場で練習していて、時々、新潟の古川コーチのところに足を運んだり、東京でトレーニングしたりしていますね。

――1週間のスケジュールを教えてください。

清水: 基本的に練習は週に6日、平均して5〜6時間はやっています。コーチと一緒に練習できる日は、12時間近くやることもある。昨年は試合が多すぎて、自分と向き合う時間が少なかったです。コロナの感染拡大で、のきなみ大会が中止となっている今の時期は、基本練習ばかりで、形の稽古は少ないですね。見ていると、地味な練習ばかりかもしれませんがとても大切です。さらに週に2回ほどは、ウエイトトレーニングなどを入れる日を設けています。その日は空手の練習時間を短くすることもありますね。

——オフの日は何をして過ごすことが多いですか。

清水: 昔から、オフの日は自宅でゆっくりすることがほとんどですね。DVDで映画を観ることもありますが、基本的には体力を回復させるために時間を使っています。

——まさに空手漬けの日々ですね。

清水: はい(笑)。

●清水希容(しみず・きよう)さんのプロフィール
1993年生まれ。大阪府出身。兄の影響で小学3年から空手を始める。東大阪大敬愛高、関西大学文学部卒。現在はミキハウス所属。2013年の全日本選手権で史上最年少の20歳で優勝し、昨年まで7連覇。14年と16年の世界選手権女子形では優勝し、18年は2位。五輪での世界王者奪還を目指す。

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