【2020年】女性の薄毛研究最前線、結局のところ何をすべき?

薄毛はいまや男性だけの悩みではありません。女性ホルモンが減少する40代だけでなく、30歳前後のtelling,世代にも、悩みを抱えている人が多くいます。そこで今回は、telling,でもおなじみの工学博士であり生粋の理系男子である“尾池博士”が女性の薄毛を研究し、薄毛に関する最新情報を解説してくれました。

女性の薄毛研究最前線

最近、髪に悩む女性の声に応えたケア製品を多く見かけるようになりました。一昔前までは薄毛といえば男性の悩みと思われがちでしたが、女性特有の薄毛とされる「びまん性脱毛症」という言葉まで聞くようになりました。

薄毛のメカニズムは最新の研究で解明されつつあり、効果のある育毛剤も開発されています。しかしそれだけでは根本的な解決になりにくいような気がします。育毛剤による成分の「足し算」に、髪と頭皮の環境問題的な「引き算」を組み合わせ、「いまできること」を整理しました。

共通する症状は毛髪が細くなる「軟毛化」

「男性型脱毛症」(AGA)に対し、女性の「びまん性脱毛症」は女性ホルモンの減少から頭頂部の皮脂の分泌が減少し、つむじ周辺の広範囲で脱毛が進むこと、とされています。ある研究で太さ0.04mm以上の「硬毛」の本数を追跡調査したところ、女性は40代以降に頭頂部の硬毛が急に減る(毛髪が細くなる)ケースが多いことが分かりました。たしかに40代以降は女性ホルモンが変化する年代です。

また、びまん性脱毛症は女性ホルモンの減少によらないケースもあることが分かっています。20〜30代であっても栄養バランスの乱れやストレス、過度なダイエットによって毛髪が細くなる「軟毛化」の症状が現れることもあるため、その傾向が感じられた場合は早めの対策が必要です。

軟毛化は「毛包(もうほう)のミニチュア化」が原因です。毛包とは毛穴や毛母細胞などの毛を生やす器官全体ですが、実際に毛を生やす毛包幹細胞が紫外線やストレスによって損傷を受けると活動が弱まり、その結果毛包全体のサイズが小さくなり、毛髪が細くなりはじめます。

このミニチュア化がさらに進行すると最終的に脱毛が起きるため、薄毛対策は育毛だけでなく、ミニチュア化の原因を取り除くことが重要になります。

毛包のミニチュア化が進行する3つの原因を取り除く

ミニチュア化の進行は【紫外線】【ストレス】【シャンプー】が原因だと考えています。

紫外線については「美白の塔のラプンツェル」で触れましたが、毛髪が細くなるとメラニン量も減ります。細くなった毛髪をすり抜けて頭皮に届く紫外線量が増えます。しかも頭頂部は紫外線が垂直に当たるためダメージも大きくなります。曇りの日も日傘や帽子でしっかり対策します。

ストレスは毛細血管を収縮させます。その結果、血流がとぎれる「ゴースト血管」が増え、毛包幹細胞への栄養補給がとぎれはじめ、ミニチュア化がさらに進行します。

そして、シャンプーは特に重大な問題を抱えています。

頭皮の毛穴は特別に大きく、産毛の約10倍で、大きなものでは0.1mmもあります。もし頭皮に刺激の強いヘアケア成分が接触すると毛穴に浸透しやすくなります。

・育毛成分を邪魔する成分の増加
・頭皮のインフラである毛細血管のゴースト血管化
・頭皮のオゾン層とも言うべき毛髪の軟毛化による紫外線の増加

洗髪料・整髪料の成分はこの40年で大きく変わりました。便利にも高機能にもなりましたが、頭皮に直接つけないように注意書きがあります。毛髪量が多い場合は毛髪に先に吸着してくれますが、毛髪が細くなると紫外線のように頭皮に届く量が増えます。だから、しっかり洗い流せるシャンプーが重要なのです。

正しいシャンプーのすすぎ時間

じゃまな成分を頭皮に残さないようにすすぎはシャンプー時間の2~3倍は必要です。シャンプーに1分かけるとすれば、すすぎは2~3分、鼻歌を一曲歌うくらいは必要です。

すすぎの際のシャワーの使い方はネット上などで「10~20cm離して」と表現されていますが、シャワーのタイプや強さにもよるので、頭皮の感覚を信じたほうが正解です。

あるレポートで、指による手櫛ですすぐ場合と、手の平をお椀のようにしてシャワーのお湯をためながらもむようにして洗う場合とですすぎ効果を比較したところ、手のひらをお椀のようにした方がより良くすすげていることが分かりました。

また別のレポートでは指を前後左右にこすりつける動かし方と、押し当ててもむように動かす方法によるマッサージ効果が比較されました。その結果、押し当ててもむ場合の方がより高いマッサージ効果が得られることが分かりました。

毛細血管も45歳を境に「ゴースト血管化」が進むことが分かっています。肌や毛髪の曲がり角である40代との一致は偶然ではないでしょう。すすぎマッサージでゴースト血管化を抑制し、毛細血管の血行を促せば、育毛剤の効果を助けます。

信用できる育毛剤は成分をチェック!

そして育毛剤の使用をご検討でしたら、現在のところ発毛メカニズムに直接効果のある成分のうち女性が使用できるのは「ミノキシジル」「パントスチン」「パントガール」の3つです。

ミノキシジル(外用薬)がもっとも有名で効果も確かですが、成分が母乳中に移行するため、授乳する乳児がいる場合は使用できません。パントスチン(外用薬)は副作用が少なく、女性も安心して使用できます。パントガール(内服薬)は主にパントテン酸カルシウムやケラチン、シスチンといった栄養素からできています。

これらの効果は、よく洗浄された頭皮で試験されたものです。育毛成分の働きを妨げるような成分を残さないようにシャワーでしっかりすすぎ、マッサージで血行を促進、そしてタオルドライ後のもっとも浸透しやすい状態で育毛成分を塗布します。最後に頭皮につけないように「流さないトリートメント」で仕上げを行います。

そういえばシャワーは英語でにわか雨の意味もありました。雨シャワーで頭皮の環境をリセットして、栄養をいきわたらせて、次の発芽を待つのだとしたら、頭はもうひとつの地球ということになります。Save the Head.

工学博士/1972年生まれ。九州工業大学卒。FILTOM研究所長。FLOWRATE代表。2007年、ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。2009年、PD膜分離技術開発に参画。2014年、北九州学術研究都市にてFILTOM設立。2018年、常温常圧海水淡水化技術開発のためFLOWRATE.org設立。
イラストレーター・エディター。新潟県生まれ。緩いイラストと「プロの初心者」をモットーに記事を書くライターも。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。