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【グラデセダイ34 / かずえちゃん】家族ってなんですか?……

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回はYouTubeを通してLGBTQのことを発信している人気YouTuber、かずえちゃんのコラムをお届けします。

●グラデセダイ34

「あなたの家族は?」

……と聞かれた独身の僕がまず思い浮かべるのは「父と母、そして妹2人」だろう。
しかし、もし僕が結婚していたら……僕はなんと答えるだろうか?
今日はそんな「カゾク」の話をお届けしたいと思う。

子どもの頃、家族とは「お父さんがいて、お母さんがいて、兄弟姉妹がいるもの」だと思っていた。
思っていたというか、学校の友達との話やTVを見ていても兄弟姉妹がいる、いない、はあっても、「お父さんとお母さんがいる」ということは共通していたから、自分の家族のようなカタチが「普通」なのだと思っていた。

僕が最初に知った自分の家族とは違う「家族のカタチ」は、母子家庭だった。

お母さんが亡くなり、父子家庭で育った友達もいた。
お母さんは一緒だけど、お父さんが違う妹がいる友達もいた。
お父さんもお母さんもいなくて、おじいちゃんとおばあちゃんと暮らしている友達もいた。

だからなんとなく、自分の家族とは違うカタチの家族もあるんだなってことは子どもながらに感じていた。

Xジェンダーのこーちゃんとバイセクシャルのまーくんカップル

僕は2013年から約3年半をカナダのバンクーバーで過ごした。
この地で僕はいろんなカタチの家族と出会った。
2005年に世界で4番目に同性婚が認められたカナダには、多くの同性カップルが暮らしていた。

僕は、カナダで暮らす日本人のゲイ夫夫(ふうふ)と仲良くなった。
彼らの家には、結婚式の写真や新婚旅行の写真がたくさん飾ってあった。
男性2人とワンちゃん1匹の「家族のカタチ」がそこにはあった。

日本人とスウェーデン人の男性2人で子育てしている友達もいる。
スウェーデンは2009年に同性同士の結婚が認められた。(世界で7番目)
彼らも「結婚」し、サロガシー(代理母出産)で子どもを授かった。
パパ2人と息子くんの「家族のカタチ」がそこにはあった。

性別適合手術を受け「女性」から「男性」に戸籍を変えた潤さんとゆかさんカップル。2020年2月に結婚式を挙げた

生まれたときの性別は「女性」、しかし性自認(自分が生きたいと思う性)は「男性」、GID(性同一性障害)の診断をされた彼は、性別適合手術を行ない戸籍を男性に戻した(変えた)。
※2019年5月26日 WHO(世界保健機関)にて性同一性障害は「精神障害」の分類から除外された。
その彼は、今年2月に約10年付き合った彼女と結婚した。
自分の生きたいと思う性を生きる彼と彼女の新しい「家族のカタチ」がそこにはあった。

突然、旦那だと思っていた彼から「女性として生きたい」とカミングアウトされた夫婦もいる。
また彼(旦那)も生まれたときの性別(カラダの性)と自認する性別(こころの性)が一致しないトランスジェンダーだった。
今でこそインターネットが普及し、自分が知りたい情報を知ることは容易になった。
しかし、性同一性障害に関しての情報が少なかった時代、そして2019年までは性同一性障害が「精神障害」と分類されていたことを考えれば、とても辛い時代だったんだろうなと想像がつく。
突然の告白を受け入れられるまでに数年かかったと話す妻と、やっと本当の自分の姿で生活できると話す彼女(夫)の2人だけの「家族のカタチ」がそこにはあった。

一度、男性と結婚して子どもを持ったが、現在は離婚し、同性のパートナーと一緒に暮らしているカップルもいる。
これまで男女のカップルや男女の家族しか周りにはいなかった。
だから自分が「こういう婦婦(ふうふ)になりたい」とイメージすることが一切できなかったと話していた。
母2人と子ども3人の「家族のカタチ」がそこにはあった。

人工授精で子どもを授かり、女性2人で子育てしているカップルもいる。
娘にカミングアウトされたとき両親はこう思ったらしい。
「もう孫を見ることはないんだろうな……だから彼女たちが子どもをもつ選択をしたときは本当にうれしかった」と……。
お母さん2人と息子くん1人、そして孫を心待ちにしていたおじいちゃんとおばあちゃんの「家族のカタチ」がそこにはあった。

2015年に関西レインボーパレードで結婚式を挙げた、ひとみさん・じゅんさんカップル

最近読んだ本には、
「不妊治療を繰り返すも子どもに恵まれなかった夫婦」と「自分が出産した子どもを特別養子(特別養子縁組)に出す選択をせざるを得なかった母親」の姿があった。
生みの母と育ての母、そして育ての父と子どもの「家族のカタチ」がそこにはあった。

この世界には、僕が子どものときは知らなかった「家族のカタチ」がたくさんある。

「男性と女性」でつくる家族がある。
「男性と男性」でつくる家族がある。
「女性と女性」でつくる家族がある。

約20年間ともに暮らした男性同士のカップルがいる。
6年前、突然パートナーを殺された。
犯罪被害にあわれた遺族に支払われる「犯罪被害者給付金」というものがある。
現行では法的に結婚していない「事実婚」の関係であっても受け取ることができるとされている。

2020年6月4日 名古屋地裁は、
「今の日本において、同性の共同生活関係を婚姻関係とみる社会通念は形成されておらず事実婚と認めることはできない」として犯罪被害給付金を不支給とした。

判決を聞いたとき、
「何十年ともに暮らそうが……同性同士というだけで……君たちは家族になることはできない……社会は認めない……」と言われた気がして怒りと悲しみで胸がいっぱいになった。

同性同士で家族をつくっている人がいる。
家族をつくりたいと思っている人がいる。

最後にみなさんに伝えたい。

これは、決してマイノリティの人たちだけの話ではないということ。
これは、マイノリティへの差別がまかり通る社会に生きている私たち全員の問題なのでということ。
そして、自分たちが生きるこの社会を変えるためにも「声」を挙げることを恐れないでほしいということ。

「家族ってなんですか……?」

タイトルイラスト:オザキエミ

1982年福井県生まれ。高校卒業後、ウエディングプランナーとして働く。その後24歳で転職。仕事の休みを利用しながら色々な国へ。「いつか海外で生活したい」という思いから、30歳でカナダへ語学留学。同性婚が認められているカナダで約3年間生活した。「LGBTQがもっと暮らしやすい日本にしたい」という思いから、帰国後2016年からYouTubeで動画配信を始める。現在アドレスホッパーとして生活中。 Youtubeチャンネル登録者数7.8万人(2019.9月現在)
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