SILENT SIREN梅村妃奈子が保護猫活動にかける思い「思ってるだけじゃ変わらないけど、思ってなくちゃ変わらない」

4人組のガールズバンド「SILENT SIREN(サイレントサイレン)」のドラマーとして、音楽活動を続けてきた梅村妃奈子さん。アーティストの顔を持つ一方で、犬・猫の保護団体と協力し、猫の一時預かりをしています。動物保護に興味を持ったきっかけや、活動への思いについてうかがいました。

ペットショップでの1匹の猫との出会い

――さまざまな事情で飼い主を失った「保護猫」を自宅で一時的に預かり、世話や病気のケアをされているそうですね。

梅村妃奈子(以下、梅村): 今は家に7匹の保護猫がいます。里親が見つかるまで期限なく預かり続けます。引き取り手が見つかるまでに数カ月かかることも。
愛着が湧かないように名前もつけず、「白スコ!(スコティッシュフォールド)」とか「マンチ!(マンチカン)」とか、種類で呼ぶようにしています。でもやっぱり可愛いので、見つからなかったら引き取る覚悟でいます。

――どのようなきっかけで動物の保護に興味を持つようになったのですか。

梅村: 子どもの頃に実家で初めて飼ったのが、保護猫サイトで出会った猫でした。元々動物への親しみや命に対する意識が高い家庭で育ったと思います。
そんな中、大学の卒論テーマで、ペットショップや動物の殺処分について研究することにしたんです。

大学生だった頃、渋谷センター街の真ん中にペットショップがありました。同じように新宿歌舞伎町や、六本木ミッドタウンの近くにもあって、繁華街にペットショップがあることに違和感を抱きました。
どんな人に向けてそうした場所にペットショップを作るのか、売れ残ってしまった動物たちはどこへ行くのか。そんな些細な疑問から、猫カフェや、動物用フード・衣類の過剰な充実などペットの「エンターテイメント化」と殺処分の関係について、研究することにしました。

――きっかけは大学の卒論だったのですね。

梅村: 研究を進める中で、1匹の猫との出会いがありました。
六本木のペットショップで20万円で売られていたのと同じ誕生日の猫が、二週間後に「大特価5万円」の触れ込みで姉妹店で売られているのを見かけたんです。
ちょうど生後5カ月すぎ。この「生後5カ月」というのは、ペットを赤ちゃんの時から飼いたい消費者にとって年齢のボーダーラインだと考える人もいるのです。
その猫は、生後5カ月を過ぎたため値下げされ、他店に送られてきたのでした。

そのあまりにも理不尽で身勝手な考え方が、女性の若さを価値と捉える風潮と重なりました。生きているだけで価値が下がるなんておかしい。腹が立ち、その子を飼うことを決意しました。

エサ代は自己負担、時には点滴を打って看病することも

――保護猫を引き取る活動は大学卒業後すぐはじめたのでしょうか。

梅村: 音楽の仕事が忙しくて、動物保護の活動はできませんでした。休みも少なくて、自分のことで精一杯だったため当時は一人暮らしの家ではペットを飼うこともできないくらい。
ようやく自分に余裕がでてきた昨年から、本格的に活動に参加するようになりました。

お手伝いしている犬猫の保護団体の元に保護されてきた猫を預かり、お世話をしています。必ずしもみんなが健康な状態でやってくるわけではなく、風邪をひいていたり、もっと重い病気を患っていることも。基本的な世話に加え、通院や、時には私が点滴を打って看病もします。

猫たちのエサ代などは自己負担。医療費は団体が提携している病院があり、寄付金からまかなっています。学生時代から猫の世話には慣れているので、団体の代表の方からは「猫のお世話はひなちゃんに安心して任せられる」と言ってもらえるようになりました。

自分だからできる、ブランドコラボや発信という支援の形

――音楽活動を続けながら保護猫を預かることは大変ではないですか。

梅村: 7匹もの保護猫を預かることができているのは、新型コロナの影響でライブなどが減り、家にいる時間が十分にある今だからです。仕事でツアーを回る時などは一切預かりはやらず、別の形で協力しようと考えています。その一つが、アパレルブランド「the par_k store(パークストア)」とのコラボプロジェクトです。

友人の紹介でアパレルのデザインをするお話を頂きました。話自体はありがたいと思いつつ、ただ自分の着たい服を作って売るだけということにしっくりこなかったんです。せっかくやらせてもらうなら、アパレルプロデュースで完結しない形になればと思い、売り上げの一部を動物の保護団体に寄付することにしました。

――アーティストの梅村さんだからこそできることですね。

梅村: このプロジェクト名は「HORS MIC(オーミック)」、フランス語で「オフ マイク」という意味です。いつもはドラマーとして音楽で自分の思いを届けている私ですが、“音楽じゃない部分で自分のやりたいことをお伝えする場“という意味を込めてこの名前にしました。

――ブログやInstagramでも保護活動について発信されていますが、勇気がいりそうです。

梅村: はじめは公表するつもりはありませんでした。自分がボランティア活動をしているということをファンの方に報告することに、意味がないと考えていたからです。
でも、関わっている保護団体の方々の真摯な姿勢を見て、自分なりに力になりたいと思うようになりました。
また、私自身、保護犬や保護猫と接することで温かい感情が芽生えるということを感じています。
私が発信することで、動物の保護に興味を持ってくださるファンの方がいるかもしれないし、その方たちも動物に触れることで心が動くかもしれない。それが動物たちを救うことにつながるのではないかと考え、自分の言葉で話そうと決めました。

「動物業界を変えます!」という強い意志を持った活動家になりたいわけではありません。ただ、自分のできる範囲のことをしていきたい。
活動について発信することで「本当にちゃんと看てるの?」という反応がくる怖さもありました。でも、私は私の周りの人が幸せになってくれれば何を言われてもいいと思っています。「良いことをしている人だ」と思われたくてやっているわけではないから。

思い続けたからこそ、動き出すことができた

――自分の問題意識から、行動に移せるのはすごいですね。

梅村: 私もtelling,読者のみなさんと同じ世代の29歳。仕事でもプライベートでもあれこれ悩んで踏みとどまりそうになる気持ちはよくわかります。
きっと私は、自分が見ていない景色を自分の力で見たいという思いが強いんだと思います。
高校生の頃、人気者のクラスメイトがハイブランドのバッグを持っていて、みんなから憧れられていました。でもその頃私は家族と離れて一人暮らしでバイトづくめ。毎日必死でした。その時、「欲しいものは自分のお金で買えるようになるまでは持ちたくない」と思ったんですよね。
好きなものは自分で買う、家賃も自分で払う、やりたいことを夢中で成し遂げていく、そういう生き方をしていきたいんです。

――やりたいことがあっても、限られた時間とお金のなかで、踏み出せない人も多いはず。実行している梅村さんからメッセージがあればお願いします。

梅村: 何かやりたいことがあるなら、始めるためにどうすればいいか、とことん考えることが大事だと思います。
よく「思ってるだけじゃ何も変わらない」と言われるけど、「思っていなきゃ変わらない」とも思います。私も保護猫の活動についてはずっと「思っているだけ」でした。でも、思い続けたからこそ、自分が好きなファッションを繋げたら活動のためになることに気づき、動き出すことができました。
自分がやりたいこととずっと向き合っていたら、きっとハッピーな人生になると思いますよ。

●梅村妃奈子さんプロフィール
東京出身、インドネシア育ち。2012年、シングル「Sweet Pop!」でメジャーデビューし、2020年に結成10周年を迎えたガールズバンド「SILENT SIREN」のリーダー兼ドラム担当。「ひなんちゅ」の愛称で親しまれている。好きなものは猫、天下一品、海外、サウナ、都市伝説。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。