離婚するする詐欺の慰謝料はいくら?
●教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」29
B子:A子、お疲れ様。
A子:B子さん、お疲れ様、実はちょっと相談したいことがあって。
B子:その顔はまた恋愛トラブルね? 今度はどうしたの?
A子:今回は私じゃなくて私の部下のD子ちゃんのことなのよ。
B子:D子ちゃんて大人しくてかわいい子よね。何があったの?
A子:実はD子ちゃん、立ち飲み屋でナンパしてきた男と付き合い始めたの。最初はその男、独身だって言っていたのよ。でも深い関係になってから既婚者で奥さんがいると告白されたのよ。
B子:そういう関係になってから告白するなんてずるい男ね。
A子:でも、D子ちゃんはその男から「奥さんと離婚してD子ちゃんと結婚するから待っててくれ」と言われて、半年くらい交際していたのよ。
B子:うんうん、それで最後はどうなったの?
A子:最後までその男は奥さんと離婚しなかったのよ。どうも最初から離婚する気はなくて、D子ちゃんとはカラダ目当てで交際していたみたいなのよ。
B子:離婚するする詐欺ね。あんなかわいいD子ちゃんをもてあそぶなんて許せないわね!
A子:そうでしょ、だから私もD子ちゃんにその男に慰謝料を請求してやれってアドバイスしたのよ。
B子:そうね。A子にしては正しい判断ね。
A子:でもD子には心配があるらしいの。最初は確かにその男のことを独身だと思っていたけど、既婚者であると告白されてからは不倫状態だって認識していたから、慰謝料なんて請求できるのかっていうことなのよ。
B子:確かに最初から最後まで独身だと騙されていたならともかく、途中からはその男が既婚者と知って自分の意思で不倫していたわけだからね。
A子:そうなのよ、だからこういう場合でも相手の男に慰謝料が請求できるのか、B子に教えてもらいたかったのよ。
B子:実は以前、同じような事件があったの。裁判所は「被告の行為は原告に被告が独身であると思わせ性交渉を持ち、その後は妻と離婚して原告と結婚すると信じさせて交際を継続させたものであり、原告の性的自由を侵害するものであり、不法行為を構成するものというべきである」と判定して、慰謝料請求が認められたのよ(東京地裁平成30年1月19日判決を簡略化しています)。
A子:よかった~。性的自由の侵害ということで慰謝料請求できるのね。ちなみに不倫だと知って自分の意思で交際していた点は、やはり不利に評価されちゃうのかしら?
B子:そうね。さっきの裁判例でも「原告は被告が既婚者であることを認識しながら自分の意思で交際を継続した」といった事情も考慮して、慰謝料の金額は20万円とされたのよ。
A子:最初から最後まで独身だと騙されていた場合よりは少なくなっちゃうのね。
B子:不倫と知って交際を継続していた以上は自分でもリスクを取れってことかしら。
A子:とにかくありがとう、D子ちゃんにも教えてあげるわ。
B子:A子、たまには飲みに行こうよ。
A子:いいわよ、じゃあ、D子ちゃんがナンパされたっていう立ち飲み屋に行きましょう♪
B子:A子ったら(笑)
■澤井康生先生のプロフィールはこちら
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書『捜査本部というすごい仕組み』(マイナビ新書)など。