村雨辰剛・筋肉庭師「スウェーデン出身の僕が日本で庭師になったわけとは」
とにかく日本に行きたかった!
―――スウェーデン出身の村雨さん。日本で庭師になったきっかけは何だったのでしょうか?
村雨: 庭師は、今は天職だと思っていますが、元々は庭師を目指して日本にきたわけではありません。中学生の時に、日本の文化や歴史を知り、日本に興味を持ちました。将来は日本に住みたい!どんな仕事がしたいかより、まずは日本に行きたい!というのが先でした。
高校生の時に日本にホームステイをして、19歳で日本にやってきました。語学学校の教師として働き始め、契約が切れるタイミングで、たまたま造園業の募集で庭師の仕事を知ったんです。日本の伝統文化でもあるし、昔ながらの徒弟制度もある。募集していた造園会社でアルバイトとしてワンシーズン働いた後、そこが新たな弟子はとっていなかったこともあり、ご縁をいただいた愛知県西尾市の加藤造園の親方のところに弟子入りしました。
徒弟制度はホワイト企業なんです
―――徒弟制度とは、親方がいて、技術を教えてもらうために弟子入りすることですよね。仕事も精神的にもハードそうです。
村雨: 徒弟制度はもしかしたら皆さんの印象とは違うのかもしれない。意外とホワイト企業なんですよ。残業もないし休日もちゃんとある。休憩時間もお茶が出てきたり、あ、僕だけ気を遣われてアップルジュースだったりしますけど(笑)
仕事は、親方から直接、技術を学べることが大きいですね。センスや感覚的なものは近くで見た方が伝わりやすいですから。かと言って手取り足取り教えてくれるわけはではなく、自分から見聞きして覚えていくスタイル。積極性は養われますね。僕自身は住み込みではなく通いでしたが、それでも一緒にいさせてもらえる時間が長いので、仕事を超えてプライベートなことを相談したり、親子関係と近いです。
何かを学ぶためにお金までもらって、技術が手に入る。僕にとってはメリットの方が多いですよ。
もちろん、人によってはデメリットと捉えることもあります。自分の希望どおりには休めないですし、給料も望むようなものではないかもしれない。仕事とプライベートを別にしたい人もいますからね。
―――その後26歳という若さで日本人に帰化。相当な勇気だったのではないですか?
村雨: 19歳で日本に来た時から帰化について考えていたし、20代のうちに結論を出したかったんです。早い段階で決めた分、自分が住む国に社会貢献出来るし、何か良い影響を残せるかもしれない。その為には早く一人前になって責任を持てるようになりたい。大きな決断をするときに、やって後悔するかやらないで後悔するか選んだとき、僕は完全に前者なんです。実際、帰化して良かったと思っています。
日本の美意識や美徳を残せる仕事を選んでいく
―――最近は筋肉体操やバラエティ番組、ナレーターとしてもご活躍ですが、今後どのような活動していきたいですか。
村雨: 庭師は僕にとって天職です。一生関わっていきたいと思うからこそ、自分のこだわりは貫きたいと思っています。今、残念なことに造園業界では日本庭園をつぶして洋風庭園にしてほしいといった依頼が多いんです。でも僕は、日本庭園の美意識や美徳といったものは国内だけでなく海外にも伝えたいし、日本で生まれ育った文化は残していきたい。だから今後は、仕事は選んでいくと思います。自分がしたいことだけを優先したい。それに収入の軸は庭師にしなくてもいいと思っているんですよ。
―――庭師は専業の方が多いイメージがありますが、村雨さんなりのスタイルで進めていくと?
村雨: そうですね、庭師の仕事はもっと極めたいと思っています。ただ、今庭師だけ続けていても造園業界の流れを変えることは出来ないですし、自分も流されてしまうかもしれない。それならバラエティ番組に出たり、ナレーションの仕事をしながら自分の視野を広げてみる。慣れない仕事でストレスもかかるし不安もありますがそれ以上にやりがいも感じます。このインタビューも日本庭園について知ってもらえるチャンスですしね。こうやって活動を広げながら、結果的に日本庭園にもいい影響が出せたらと思っています。
●村雨辰剛(むらさめ・たつまさ)さん
1988年、スウェーデン生まれ。中学時代の世界史の授業をきっかけに日本独自の文化に興味を持つ。高校時代にホームステイを経験した後、19歳で日本に移住。23歳で造園業の庭師に弟子入り。26歳で日本国籍を取得、村雨辰剛に改名する。造園業のかたわらタレントとしても活動し、2018年のNHK「みんなで筋肉体操」出演は大きな話題に。日本語、スウェーデン語、英語を話すトライリンガル。趣味は肉体改造と盆栽。
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