サッカーでも社会人でも一流目指す!女子サッカー「FCふじざくら」の働き方改革

なでしこジャパンの活躍などで、すっかりメジャーになった女子サッカー。「プロのサッカー選手として活躍したい」と夢を持つ女性も増えたのでは。でも、現役時代の収入や引退後のキャリアを考えると、まだまだ厳しいのが現実だといいます。そんな現状を打破しようと、女性アスリートの「働き方改革」を掲げて立ち上がった女子サッカーチームがあります。

女子アスリート育成のロールモデル目指す

富士山のふもと・山梨県鳴沢村を本拠地に昨年11月、誕生した女子サッカーチーム「FCふじざくら」。同県のチームで初となる「なでしこリーグ1部昇格」を目指すとともに、選手のキャリアサポートにも力を入れ、女性アスリートの新しいロールモデルを目指しています。

チームのスポンサーである富士観光開発株式会社(富士河口湖町)は選手全員を正社員として雇用する方針。引退後も、社員として雇用し続けるといいます。さらに、整備されたグラウンドや体を休めるための温泉施設、トレーニング施設もついた女子寮も完備するなど、選手のコンディション維持のための環境を整備しているのが特徴です。

半数以上の女性アスリートは年収200万円以下

社会では「働き方改革」に注目が集まり、さまざまなところで変化が生まれています。ユニ・チャームやコニカミノルタ、ソフトバンクが副業を解禁するなど、大手企業も積極的に改革を推進しています。にもかかわらず、あまり変化がないのがアスリートの世界。

スポーツ庁による「実態に即した女性アスリート支援のための調査研究」の報告書(2016年)によると、JOC(日本オリンピック委員会)やその加盟競技団体に所属する女子の強化指定選手のうち、年収200万円以下が50%以上という結果が出ています。

現役時代は選手としての活動を優先させるため現役引退後のセカンドキャリアについても定まらないことが多く、こうした状況が女性がスポーツの道へ進むハードルを上げてしまっていると考えられます。

選手は全員、正社員。

「FCふじざくら」記者会見にて。左から五十嵐雅彦GM補佐、志村和也代表理事、金子智弘GM

「FCふじざくら」は、そんな女子アスリートの世界にも「働き方改革」を起こそうと立ち上がったといいます。

チームの代表理事を務める富士観光開発の志村和也社長はもともとスポーツを核とした観光事業であるスポーツツーリズムをビジネスに取り入れようと女子サッカーをリサーチしていたところ、現状の女子サッカー界の問題点に気づいたといいます。2017年11月に行われたチーム立ち上げの発表会では、志村社長は次のように語っていました。

「オリンピックに出場して1次リーグで活躍した選手であっても十分な収入がないため、生活に不安がありアルバイトをしている。これは社会で変えていかなければいけない問題です」

この問題を解決するため、志村社長が打ち出したのが選手を正社員として雇用することでした。

「FCふじざくらは、全員正社員として雇用することで選手に安定した生活を保証します。職場でさまざまな経験を積むことで、一般社会人としての成長、キャリアサポートも全力で行いたい」(志村社長)

アスリートをサポートすることで恩返しがしたい

なぜ、女性アスリートのキャリア問題に力を注ぐことになったのか。志村社長はこう語ります。

「これまで色々なスポーツを見続けてきましたが、そのたびに勇気や感動をもらいました。そのようなアスリートになることを夢見て努力する若者を全力でサポートすることで、恩返しがしたいと思っています。企業に就職してキャリアを積むことは、現役時代よりもはるかに長いであろう引退後の人生において、必ず役立つと信じています」(志村社長)

山梨県鳴沢村にある総合スポーツ宿泊施設「フジビレッジ」がホームグラウンドとなる

チームのゼネラルマネージャー(GM)である金子智弘さんもこう語ります。

「女性アスリートのセカンドキャリアの問題を解決することは急務です。選手が全力を尽くせる環境を提供することはもちろんのこと、チームコンセプトでもある『世界でも通用するプレイングワーカーを育てるチームになる』を実現するため、女性アスリートのキャリアサポートを同時に行い、新しいアスリートのロールモデルを目指します。本チームから世界というフィールドで選手として戦いながらも、社会人としても一流の人材が輩出することを目標に活動していきます」

選手引退後も社員としてキャリアを築ける

FCふじざくらによると、チームは18歳以上のサッカー経験者を選手として募集。セレクションを通過した選手は一般社団法人ふじざくらスポーツクラブと1年更新の選手契約を結び、4月から富士観光開発会社と正社員契約をかわすことになります。

選手としての活動を終えても、同じ会社で働き続けることができる。将来のセカンドキャリアの心配をしなくていいぶん、サッカーにも仕事にも安心して全力で取り組めそうです。

世界で戦えるプレイングワーカーを育成しながら、引退後のセカンドキャリアもサポートする。FCふじざくらのように選手のセカンドキャリアをサポートする企業が増えれば増えるほど、女性アスリートの活躍の場が広がっていくのではないでしょうか。

明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
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