黒木華

黒木華さん「人生の中で、好きなことを見つけられたから」

確かな演技力で、映画にドラマ、舞台と出演作の絶えない黒木華さん。11月1日公開の映画「アイミタガイ」では、かけがえのない親友を失い、立ち止まってしまう主人公を演じています。現在34歳の黒木さんに、年を重ねて感じる心身の変化や理想の将来像、さらにはご自身にとっての「人生一番の選択」などについて伺いました。
黒木華さん「人は人によって成長する」 映画「アイミタガイ」に主演 【画像】黒木華さんの撮り下ろし写真

30代の体の変化に「本当にそうなんだな」

――30代になって、体や心の変化を感じることはありますか? 

黒木華さん(以下、黒木): 以前よりも体力が落ちましたね。20代の頃は先輩方に飲みに連れて行ってもらっても朝まで元気でしたが、今はすぐに眠くなってしまったり、翌朝は起きられなかったり(苦笑)。

あとは腰回りのお肉が取れにくくなりました。私は舞台にずっと立ちたいと思っているので、健康で動ける体を作らねばと思うようになり、最近はランニングやプランクなどの筋トレを少しずつやるようにしています。

――食生活で何か気をつけていることは?

黒木: 冷たい飲み物はあまり飲まなくなりました。体温が1℃下がるだけで免疫力が落ちるそうです。私は普段、あまり風邪などひかない方なのですが、30代になってより気をつけるようになりました。ちょっと風邪をひきそうだなと思った時は、プロポリスの原液を喉に直接ぬることも。20代の時は体力の衰えや不調なんてよく分からなかったけど「本当にそうなんだな」と実感しています。

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酸いも甘いも経験した上で出る「大人の余裕」

――映画「アイミタガイ」で、ある過去を抱える孤高の高齢婦人・こみちを演じた草笛光子さんは御年91歳! 女優として、また人生の大先輩との共演はいかがでしたか。

黒木: 草笛さんはとてもチャーミングな方で、セリフの言葉が詰まってしまったとしても、私たちからは全然そう見えないのに「ごめんなさい!」と、周囲を和ませてくださるんです。

草笛さんがピアノを演奏するシーンがあるのですが、その時に着るドレスも「ピアニストだったらこういう服はどうだろう」とご自身の服を持ってきて、草野(翔吾)監督と相談される姿もとても素敵で。私が言うのもおこがましいですが、これまで様々な役を経験された上で出てくるものがあると感じましたし、きっと素敵な年齢の重ね方をされていらっしゃるのだなと思いました。

――黒木さんが思う素敵な年齢の重ね方とは?

黒木: 自由に生きている方は素敵だなと思います。きっと、酸いも甘いも色々な経験をした上で大人の余裕というものが出てくると思うので、そういう年齢の重ね方ができたらいいなと思います。

私も今の草笛さんの年齢まで女優をやっていたいかは、今は分からないですけど。引退しているかもしれないし、まだ続けているかもしれない。その時はその時だと思うので、今はあまり考えていないのですが、素敵なおばあちゃんになるってことだけは決めているんですよ。それが役者としてなのか、孫に囲まれているのか、はたまたどこかに1人で暮らしているのかは分かりませんが、「生涯女優」といったこだわりはあまりないんです。その時の自分が、自由に楽しく生きていたら最高ですね。大変なことやつらいこと、人生色々あるからこそ、楽しく生きたいなと思います。

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「年を取るって最高だよ!」と言ってくれる先輩たち

――年齢を重ねていくことを、つい後ろ向きに考えてしまうこともありますが、黒木さんはそんな時どうされていますか?

黒木: 50代、60代の先輩たちの中には「50代になるとすごく楽しいよ」とか「年を取るって最高だよ!」と仰る方が多いんです。それが私の中で割と刷り込みのようになっているので、「どうすれば楽しくなるんだろうな」ということを考えます。

もちろん悩むこともありますよ。例えば、私は子どもが欲しいと思っているのですが、「産めない年齢になってしまった時はどうしよう」と思うこともあります。でも、子どもがいなくても幸せな方たちは周りにたくさんいるし、「今あれこれ悩んだとて」となるべく前向きに考えるようにしています。先のことを悩むよりも、今は体力をつけて健康な体を作りたいです。

――黒木さんが思い描く「将来の楽しい自分」はどんな姿でしょうか。

黒木: やっぱり自由なことですかね。以前、ある先輩女優さんが、キャリア的にも安定して、ある程度お金も持っていて、休みも自分で決められるし、「もう好きなことしかしない!」と仰っていたのですが、そこに至るまでには、きっとその方がこれまで積み重ねてきたものがあるからこそだと思うんです。

――将来自由でいるために、今やっておきたいことはありますか?

黒木: 色々な国に行ってみたいですね。私はイギリスのロンドンが好きで、よく舞台を観に行くのですが、舞台だと難しい単語や表現もあってよく理解しきれないところがあるので、今は英語の勉強をしています。そういうものをなくしたらもっと世界が広がるし、楽しい趣味も増えると思うので、これからも色々な経験をしていきたいです。

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失敗もいつか絶対自分の糧になる

――仕事や結婚と、人生の選択に悩む女性を演じられましたが、ご自身は「これを選んだから今がある」と思えるものはありますか?

黒木: 私は自分の好きなことを見つけられたことが大きいですね。「お芝居」という何だかよく分からないものを好きになり、それを職業にすることができたのは幸運だなと思っています。

今は選択肢が多すぎて「自分は何になりたいのか」、「やりたいことが分からない」という人もきっとたくさんいると思います。その中で私は「これが好き」と思うものを見つけられたし、そのための行動ができた。その結果、野田(秀樹)さんの舞台のオーディションに受かって事務所に入ることになった。そういう偶然や人との繋がりで今の私があるので、好きなことを見つけられたことが自分の人生の中で一番大きいことです。

――「好きなものの見つけ方が分からない」という人に、ぜひアドバイスをお願いします!

黒木: きっと色々なものを見ないと、何が自分に合っているか、自分がどんなものを好きかなんて分からないと思うので、なんでもやってみた方がいいんじゃないかな。やってみて合う、合わないが分かることもあると思います。何事も経験しないよりはした方がいいです。失敗もいつかは絶対自分の糧になりますから!

黒木華さん「人は人によって成長する」 映画「アイミタガイ」に主演 【画像】黒木華さんの撮り下ろし写真

●黒木華(くろき・はる)さんのプロフィール

1990年、大阪府出身。2010年、NODA・MAP 番外公演「表に出ろいっ! 」でデビュー。『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞を日本人最年少で受賞。近年の主な出演作に大河ドラマ「光る君へ」、舞台「ふくすけ」、映画『八犬伝』などがある。

■映画「アイミタガイ」

監督: 草野翔吾
脚本: 市井昌秀、佐々部清、草野翔吾
原作:『アイミタガイ』(中條てい著、幻冬舎文庫刊)
出演:黒木華、中村蒼、藤間爽子、田口トモロヲ、西田尚美、風吹ジュン/草笛光子ら
11月1日(金)より公開
© 2024「アイミタガイ」製作委員会

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
出版社写真部、東京都広報課写真担当を経て独立。日本写真芸術専門学校講師。 第1回キヤノンフォトグラファーズセッション最優秀賞受賞 。第19回写真「1_WALL」ファイナリスト。 2013年より写真作品の発表場として写真誌『WOMB』を制作・発行。 2021年東京恵比寿にKoma galleryを共同設立。主な写真集に『海へ』(Trace)。