婚約破棄した元カレとまさかの元さや婚。アプリに相談所、婚活5年で見つけたファイナルアンサー。
【今回の大人婚】Kさん 結婚時の年齢:35歳
関西在住、会社員のKさんは41歳。二つ年上の夫・Mさんと二人の子どもの4人家族で、毎日賑やかに暮らしている。Mさんとの付き合いはかれこれ20年を超えた。
20歳で交際、8年後に婚約のはずが……
KさんがMさんと出会ったのは、19歳の時。飲食店のバイト仲間だった。Kさん、Mさん、そしてもう一組の男女4人で仲良くなって、プライベートでもよく遊ぶように。
「大学生のときの2個上って、すごく大人に見えませんか。Mは実家が会社をやっていて、いわゆるぼんぼんで、そういうところも余裕があってかっこよく見えたのかな。見た目は今も昔も全然タイプじゃないんですけど(笑)、話がとにかく面白くて、気が付いたら好きになっていました」
当時、Mさんは恋人と同棲中。しばらくKさんの片思いだったけれど、ある日いつもの4人で旅行に行った際、堪えきれなくなり、泣きながら告白。Mさんも彼女がいる手前、友達付き合いをしていたけれどじつはKさんに惹かれていた。その後、時間をかけて同棲を解消し、1年後、二人は正式に付き合うことになった。
彼は家業の会社で働き、Kさんもやがて大学を卒業し、派遣社員に。忙しい彼に合わせて、仕事終わりに彼の家へ行き、夕食をつくり、半同棲状態に。最初の数年間は幸せだったけれど……。
「Mは仕事人間で、仕事に役立つと思ったらなんでも手を出してしまうんです。あるとき、パン屋の経営に興味を持って、会社の仕事の前に始発でパン屋に修行しに行って、会社のあとは公認会計士の勉強をして、三足のわらじ状態に。せっかく会いに行っても、彼はずっと仕事か勉強をしていて。私を優先してもらえないことに、虚しさを感じるようになりました」
そんなとき、中学の同窓会で地元の男友達と再会。彼からちょくちょく遊びに誘われるようになり、心は揺れた。28歳だった。
「そのタイミングでなんとMがプロポーズしてきたんです。しかも、全然ロマンティックなプロポーズじゃなくて、家で二人でいるときに指輪をぽーんと投げてきて、『結婚する?』みたいな。なにそれ? なんで今?って、渡し方も含めて、一気に心が冷めてしまいました」
両親との顔合わせで失敗
それでも20歳から8年も付き合った人。残念なプロポーズも照れ隠しなのはわかっていた。彼が「いつ親御さんに会わしてくれるん?」と熱心に言うので、このまま流れで結婚するのかな、とKさんも思うようになった。が、両親との顔合わせでもMさんはやらかしてしまう。それは食事の合間にKさんのお父さんとMさんが喫煙所に行ったときのこと。
「当時、Mは家業を継いですでに社長として働いていました。うちの父に仕事の話をする流れで『今、新しくもう1店舗出そうと思っていて、それがうまくいかなかったら諦めます』って話したらしいんです。〈私との結婚を諦める〉という意味だと思った両親は、私が彼に大切にされていないのではと怒ってしまいました。あとから彼に聞くと〈出店を諦める〉という意味だったらしいんですけど……。彼って、いつも言葉足らずなんです」
誤解は解けたものの、「Kちゃんを本当に大切にしてくれるの?」という両親からの心配は胸に刺さった。Kさんは結婚への踏ん切りがついていないのに、Mさんは見切り発車でマンションを購入。「二人の家になるんやから、家電とか照明とかKも一緒に決めよう」と言われたけれど、Kさんは悩んでしまった。
「ほんまに結婚するんやったら、自分の意見をちゃんと言ったほうがいいけど、もし破談になったら申し訳ない、と中途半端にしか口出しできなくて。そうすると、Mがデザイナーズブランドのものすごく高い照明とか買ってしまったり、私にとっては使いにくい家電を選んだりして、フラストレーションがたまっていって。あの時が20年の中でも一番ケンカしました」
お互い、忙しい仕事の合間を縫って会っているのに、いつも結局けんかで終わり、何のために二人でいるのかわからなくなったKさんはMさんに別れを告げた。30歳だった。
1000人に「いいね」はもらったけれど
10年ぶりのフリー。Kさんは婚活に没頭した。
「まず、二つのマッチングアプリに登録しました。元々まめな性格なんで、いろんな人とメッセージをやりとりしてるうちに、気づいたら〈いいね〉が1000を超えて、めでたいんだか、めでたくないんだか微妙な気持ちになったことも(笑)。ただ、男性を信用するまでに結構時間がかかるタイプなので、実際に会ったのは数えるほど。たとえば、生命保険会社勤務で、イケメンで高身長で話も面白くって、ていう理想の人がいたのですが、USJに一緒に行った帰りに、もう電車なくなったからホテル行こうって言い出したんです。なんとかなだめたら、今度は車で家まで送っていくよ、って。散々お酒を飲んだあとだったのに。ドン引きでした」
相席居酒屋や婚活パーティも友達と一緒に行った。でもなかなか真剣に付き合えるような相手とは出会えない。遊び相手じゃなくて、結婚相手がほしい、と結婚相談所に入会した。
「結婚相談所のいいところは、やっぱり身元がしっかりしていて、遊び目的の人がいないところですよね。そういう意味では安心できたけれど、今度は男性として惹かれる人が全然いなくって……。異性としての魅力とまじめを両立してる人ってどこにいるん⁉って思いました」
そうこうしているうちに、34歳になった。
「私、ずっと子どもが欲しかったんです。だから婚活も頑張っていて。でも全然実らないから、先に体のメンテナンスをしておこうと思って、婦人科にいきました。ホルモンの値のチェックや卵管が通っているかどうかの検査もして。特定の相手がいなくても検査はできるので、皆さんにもおすすめしたいです。私の場合はそこで多嚢胞性卵巣症候群であることがわかり、定期的にホルモンの注射をして治療することになりました」
その治療がKさんに奇跡を起こす。
婦人科で排卵日を告げられて
「ある日、治療に行ったら『今日、タイミングとるといいですよ』と先生に言われて、なんとなく、冗談でMに『今日、排卵日らしい』とメールを送ったんです。そしたら、その日に会うことになって」
じつは、婚約解消してからもMさんとは連絡を取り合っていた。MさんはずっとKさんとの復縁を望んでいたのだ。
「私も婚活で色んな人と会いながらも、いつもMと比べてしまっていました。Mよりかっこいい人や、気が利く人はいたけれど、Mのように何でも遠慮せず話し合って、笑い合える人はいませんでした。ライブのチケットが当たったりすると、婚活で出会った人じゃなくてMを誘いたくなるんです」
1000人から〈いいね〉されても、恋人ができなかったのは、結局、Mさんのことが忘れられなかったのだろう。
数カ月後、KさんはMさんとの赤ちゃんを授かったことを知った。
「妊娠がわかったときは喜びよりも動揺が大きくて。今まで友達も巻き込んで新しい相手を探して婚活頑張ってきたのに、元さや&授かり婚って……。それよりなにより両親になんて言ったらいいんやろうと、もう話をする前から泣き始めてしまって。でも、両親は『結婚するんやろ、先のことを考えなあかんからMくんを連れておいで』と優しく言ってくれました」
ちなみに、Mさんに妊娠を告げたときは、驚きすぎたのか、ぽかんとした顔で「おめでとうございます」と言われ、その反応にまたイライラしたそうだ(笑)。
大人婚は必然だった
長年二人を見守ってきた友人たちは、みんな驚きながらも祝福してくれた。妊娠6カ月のときに結婚式を挙げ、その後、無事出産。二人目も授かり、今は4人で、あの大喧嘩の元となったマンションで暮らしている。
「この人は私を幸せにしてくれるのか?と迷って、迷って、遠回りしてしまいましたが、今はまあまあ幸せかな。何より子どもたちと毎日一緒にいられるのが本当に楽しくて、子どもを授かってよかったなってしみじみ思います。もちろん、相変わらずMは言葉足らずで仕事人間で、ロマンティックとは程遠いし、口喧嘩は絶えないですけど(笑)。結婚してみて、意外だったのは、子ども好きだったこと。先日、私が盲腸になって1週間入院したのですが、ちゃんと二人のために早く家に帰ってご飯食べさせてくれて、安心して任せられました。子どもたちは二人ともパパが大好きです」
大人婚をしてよかったと思いますか?
「図らずも元さや婚になりましたが、心配性で慎重派の私は、こうなるのが運命だったのかなって思います。Mが思い続けてくれなかったら、そして、赤ちゃんが来てくれなかったら、今も婚活をして〈ここがイマイチ〉〈ここが心配〉って結局誰とも付き合わずに一生独りでいたかもしれない。この人と一生添い遂げたいと決心できるなんて、優柔不断な私からしたら、ほぼ奇跡。年齢というプレッシャーがあったから、掴めた奇跡だと思います。私が大人婚だったのは、必然でした」