知っておきたい!定額減税のポイント
ノートで学ぶマネーの「常識」 FP fumicoの“Live colorfully”#55

【FP fumico】定額減税スタート。気をつけるべきポイントとは?

6月から始まった定額減税。「手取りが増える」とは聞くものの、実際どんな仕組みなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか? 「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で主に20~40代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさんが、基本的なポイントをご紹介! インスタでもお馴染みの手書きのノートとともに解説します。
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物価高で家計の負担軽減。課題も

知っておきたい!定額減税のポイント

定額減税については、家計の負担が減って助かるとの声を聞く一方で、効果の割に企業や自治体の事務負担が大きいといった批判的な意見もよく耳にします。
今回、政府は給与明細に減税した額を記載することを義務付けています。日本では所得税・住民税が源泉徴収されているので、良くも悪くも税金の負担を感じづらい。減税の効果を実感してもらおうとの考えですが、準備するエネルギーは膨大です。しかも、定額減税は今年限りの制度。税金の負担は軽くなっても、そのために人件費やシステム改修費など大きな負担が生じることとなり、不満の声が上がっているのです。
とはいえ、物価高が続く中で手取りが増えるのはありがたいもの。基本的なポイントを押さえておきましょう。

6月分の給与から天引き額に変化が

知っておきたい!定額減税のポイント

定額減税の対象者の判断基準は、「合計所得」という聞き慣れないモノ。簡単にいうと、給与所得だけでなく、退職金や自宅を売却した際に生じた所得も含めます。telling,読者の世代にはあまり影響がないかもしれませんが、注意したいのは親世代や住み替えを検討中の方。今年、定年退職を迎え退職金を受け取る・自宅を売却して利益が出そうといった場合、合計所得が大きくなり、所得税の定額減税の対象外となってしまう可能性があります。
なお、給与収入のみの場合は年収2,000万円以下とノートに書きましたが、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用を受ける場合は、同2,015万円以下となります。

扶養家族の要件は、生計を同じくし、2024年の合計所得が48万円以下(給与収入のみであれば、年収103万円以下。住民税については23年で判断)の配偶者と子どもや親となっています。
所得税の定額減税は、本人と扶養されている妻・子ども1人の3人家族なら3万円×3人=9万円なので、一気にこれだけの手取りが増えると思っている方もおられるかもしれませんが、そうではありません。毎月のお給料から天引きされる所得税額を減らしていくため、減税効果は月数千円という場合も。

住民税については、6月分は天引きしないので手取りが増えたことを実感しやすいものの、単身者や共働き世帯であれば、7月以降の住民税額はかえって昨年より増える方も出てくるかと思います。
今回、例としてご説明しているのは会社員・公務員などお勤めの場合。自営業の方や年金収入のみの方の場合は減税方法などが異なります。

家族構成や働き方に変化があると……

知っておきたい!定額減税のポイント

気を付けたいのは所得税・住民税が“いつ”を基準とするかの違い。住民税は、昨年末が基準となるので、定額減税の対象となる人や額が既に確定しています。一方、所得税は今年の年末が基準。毎月のお給料から減税をしている時点では、対象者が確定していません。
たとえば7月に子どもが生まれた場合、所得税の定額減税の対象となるものの、毎月のお給料からは減税されず、年末にまとめて減税されることに。逆に9月から配偶者が仕事を始め、扶養の対象外となった場合でも毎月のお給料からの減税は続き、年末に精算(徴収)されることになります。この場合、配偶者は年末調整等で定額減税を受けることになるため、世帯全体で確認する必要があります。

定額減税は「今年限り」の制度。このため、24年末時点で引ききれない分があっても、翌年以降に繰り越すことができません。引ききれない差額を自治体が「調整給付金」として支給しますが、事務手続きを簡素化し、なるべく早く減税効果を国民に実感してもらいたいとの考えから「1万円単位に切り上げて支給」することに。
つまり、引ききれない額が100円だとしても、切り上げて1万円支給される。定額減税の原資は、元はといえば私たちが納めた税金ですから、ここまで“どんぶり勘定”で支給されると批判が出てもやむを得ません。

複雑な新制度だからこそ詐欺にも注意

知っておきたい!定額減税のポイント

例年、6月分の給与明細については住民税が新年度になるためチェックしておく必要がありますが、今年については、住民税が0となっていること、所得税の減税額の記載があることを確認するようにしましょう。
合わせて、お勤め先から受け取った住民税決定通知書の摘要欄に、「個人住民税減税控除済額」の記載があるかも確認してくださいね。

以前からさまざまな詐欺がありましたが、最近ではSNSを使った投資詐欺が急増しています。
23年のSNS型投資詐欺の認知件数は2,271件、被害額は約278億円ですが、今年1~3月の認知件数は1,700件で被害額約219億円(警察庁資料より)。
定額減税は新しい制度で仕組みも複雑なため、まさに詐欺の餌食になりやすい。重要なのは、SNSやネット上の情報を鵜呑みにしないこと。定額減税について不明点があれば、所得税はお勤め先や最寄りの税務署、住民税は自治体の税金担当課に確認して下さいね。

詐欺といえば、7月3日には新紙幣も発行されます。「旧紙幣が使えなくなる」といった誤情報でお金をだまし取られないよう気を付けましょう。

今年の6、7月については、定額減税とボーナス支給で手取りが増えることを実感する方も多いでしょう。
増えたお金の一部を自己投資にまわすなど、有意義に使いたいですね。

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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、7月26日に公開の予定です。

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CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。