福地桃子さん、連ドラ2本に出演中。役と自分との共通点を探して
ドラマの空気を作れるような存在になりたい
――会社の「知的財産部」を舞台にしたドラマ「それってパクリじゃないですか?」の脚本を読まれた感想はいかがでしたか。
福地桃子さん(以下、福地): 主人公の亜季(芳根京子)を始め、登場人物が皆、愛らしい作品です。一人ひとりの個性でお話の流れやリズムができているのを感じるので、私の演じているゆみも、その場の空気を作れるような存在になれたらいいなと思っています。ゆみはカフェで働きながら、ハンドメイドブランドを運営しているのですが、ある時、自分の手がけた商品がトラブルに巻き込まれてしまいます。知的財産について知識がない状態から始まるので、視聴者の皆さんにとってはより近い目線で見られるキャラクターじゃないかなと思いますし、私自身も親近感を覚えました。実は身近なところにある知的財産の問題について意識を広げてもらえると嬉(うれ)しいですね。
――第2話の「パクリとパロディ」では、亜季は自分が勤める月夜野ドリンクの商品『緑のお茶屋さん』に似た『緑のオチアイさん』を発売した落合製菓に対しては「悪意のないパロディだから見逃してあげられないか」と葛藤しました。一方、ゆみに対しては毅然とした態度で「デザインをパクられたのだから闘うべき」と助言します。立つ視点によって意見が変わる、とても共感できるシーンでした。
福地: 亜季がルールに従おうとする思いと、人としての情が出てしまう優しさの間で揺れ動いてしまうところが可愛らしいなと思いました。まさに落合製菓の場面は「悪意はないけれど起こってしまった」ことなので、私もこれにはなかなか答えが出せないなと考えましたね。ただその後、月夜野ドリンクが落合製菓とOEM(業務委託:相手ブランドによる生産)という形で一緒に商品を作る展開になったときは、そんなアイデアがあるのか!と驚きました。トラブルに巻き込まれたことがきっかけで、みんなを仲間にする輪の広げ方がとても素敵な描写だし、ドラマとしても好きな部分です。
人に何かをしてあげる「自己満足」もいい
――福地さん自身は、ダメなことはダメときっぱり言えるタイプですか?
福地: 嘘をつくのが苦手なので、嫌とかダメと思うと、何となく顔に出てしまうタイプかも。ゆみの、何か気が付いたことを見逃せないというキャラクターを、監督が「近所のおばちゃんがお節介でやってくる感覚」と説明してくれたのですが、とても分かりやすい表現でした。私も親しい人が困っていたら、手伝えることは協力したいし、頼まれていないことも気になってしまってお節介を焼いてしまうかもしれません。ただ、これまでを振り返ると、「この人は、今こういうことを言われたいわけじゃないのかも」と後々気づいたこともあります。だから基本的には思っていることを相手に伝えるけど、相手の状態に合わせて声をかけられる人でいたいなとは思いますね。
――そのさじ加減って難しいですよね。
福地: 見返りを求めていないつもりでも、人に何かをしてあげたら、ありがとうって言葉が返ってくると想像しているから、その言葉がないと落ち込むこともありますよね。でも何かをやらずにいて、「あの時ああすればよかった」って心残りになると、その気持ちってなかなか消化できないと思うんです。だったら「やるだけやった」って自己満足にしてしまってもいいのかもしれないですね。以前、地方のコンビニで何げなくゴミを拾ったら、遠くで見ていた店員さんに、あとで褒めていただいたことがあって。褒めてもらいたくてやったわけではないし、いつもゴミ拾いをしているわけでもないけれど、気づいていないところで誰かが見てくれた喜びって、うれしいですよね。
演じていくうちにキャラクターの魅力を発見
――「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」では一転、複雑な家庭環境にある役柄を演じましたね。
福地: 河合優実さん演じる岸本七実と私が演じる天ヶ瀬環は、普通に会話をしているつもりなんだけど、独特の間があって不思議な空気が流れている。監督がモニターで見て笑ってくれると「良かった!」と思います。2人の関係性も成長するにつれて変わっていきますし、七実が家族といる時には見せない一面が、環と一緒にいるときには表れています。
――ドラマでのオリジナルキャラクターということで、どのように役作りに臨みましたか。
福地: 演じるキャラクターと自分との共通点を探すこともあるのですが、環に関しては演じていくにつれ、どんどん魅力に気づいていって、気持ちや動きがそこについていった感じです。決して協調性があるわけではないけれど、自分が落ち着くテンポやリズム、こだわりを持っている子です。七実への愛を熱弁するシーンは、好きなものに対する熱量が溢れていてすごく素敵だなと演じながら思っていました。また、環は多才で、全10話ある中で、色んな特技を披露していくので、そこに向けて頑張って準備しました。とてもやりがいのある役をいただけたのは光栄です。
――きょうだい、家族の物語でもありますが、ご自身の家族への思いは?
福地: 私は5人きょうだいなんですけど、きょうだいって距離が近い分、離れたいと思う瞬間もある。どうしても友人とは距離感も異なりますし。でも常にどこかで気にしているし、きょうだいが頑張っていると嬉しくなる。励まし合うこともできる。私にとっては、とても心強い存在ですね。
●福地桃子(ふくち・ももこ)さんのプロフィール
1997年生まれ、東京都出身。2019年、連続テレビ小説『なつぞら』に夕見子役で出演。2022年は映画『あの娘は知らない』(井樫彩監督)、『サバカン SABAKAN』(金沢知樹監督)、ドラマ『消しゴムをくれた女子を好きになった』(日本テレビ)、『鎌倉殿の13人』などに出演。2023年はドラマ『舞妓さんちのまかないさん』(Netflixシリーズ)、『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)に出演している。今後も複数の映像作品に出演予定。
出演:芳根京子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、渡辺大知、福地桃子、朝倉あき、野間口徹、ともさかりえ、田辺誠一、常盤貴子ほか
脚本:丑尾健太郎、佃良太
製作著作:日本テレビ
制作協力:AX-ON、アバンズゲート
毎週水曜夜10:00~
■NHKプレミアムドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
出演:河合優実、坂井真紀、吉田葵、福地桃子、奥野瑛太/林遣都、古舘寛治、山田真歩/錦戸亮、美保純ほか
原作:岸田奈美
脚本・演出:大九明子
脚本:市之瀬浩子、鈴木史子
制作統括:坂部康二(NHK エンタープライズ)伊藤太一(AOI Pro.)訓覇圭(NHK)
毎週日曜夜10:00~10:50(BSプレミアム・BS4K)