マルチクリエーター・パントビスコさん『少し○○な芸術祭』を開催。「それぞれが作品の意味を勝手に考えていい」

telling,の人気連載「返り討ちかるた」でもおなじみのマルチクリエーター・パントビスコさんが、東急プラザ表参道原宿で『少し〇〇な芸術祭』を開催しています(2021年11月18日まで)。さまざまなフロアに新作や描き下ろしイラストを含む約 10 作品が展示され、パントビスコさん独自の世界観を体感することができます。パントビスコさんにこの芸術祭に込めた思いを聞きました。

さまざまな仕掛けを込めた「少し〇〇な芸術祭」

――現在、東急プラザ表参道原宿で「少し〇〇な芸術祭」が開催されています。タイトルもユニークですね。パントビスコさんのどのような思いが込められているのですか?

パントビスコさん(以下、パントビスコ): まず、パントビスコを知らない人にも興味を持ってもらいたいという思いが発想の起点になっています。人って固有名詞を出さずに、「〇〇」とか「Aさん」、「B市」と表現する方が興味を惹きつけられるものだと思っています。なので、「〇〇」とすることで、作品のシリーズにバリエーションを持たせようとしました。

館内で10種類ほどのさまざまな作品を展示しているのですが、それぞれ「〇〇な芸術」とテーマを分けています。例えば、「バッサリな芸術」「お告げ的な芸術」など、私からテーマを指し示してはいますが、見る人が決めていいと思っています。へんてこだなと感じたら、「へんてこな芸術」でもいい。作品を見た時に、それぞれの人が思ったことを「○○」で表現してほしいな、と。

――「少し」という言葉にも興味を引かれますね。

パントビスコ: これも言葉の妙というか……「少し」には、謙遜の意味もありますよね。なので、パントビスコの「〇〇な芸術祭」よりも、「少し」で引っかかってほしいと思っています。「少しってどのくらいなんだろう」と見る人に考えてもらう仕掛けです。「すごくおもしろい芸術祭だよ」というよりも、「少しおもしろいんだよ」と言われたほうが、何となく引かれませんか? 「少し」でハードルを下げつつ、実際見てみたら、「けっこうおもしろかった」と感じていただけたらうれしいです。

作品の余白の意味は、それぞれが考えればいい

――今回は、エントランスから6階まで、さまざまな場所にパントビスコさんの作品が展示されています。それぞれの作品について教えていただけますか?

パントビスコ: 4フロアで好きなことをやらせてもらいました。まずエントランスの階段は、パントビスコにまったく関心がない人、通りすがりの人が見る可能性が高いので、私の大きな顔写真があります。それ以外に何を表現しようかなと思った時に、修学旅行では集合写真を階段で撮影するのを思い出して、私のキャラクターを全員登場させました。

3階はメイン会場です。telling, で連載をしている「返り討ちかるた」を始め、人気シリーズ、人気キャラクターを随所にちりばめた展示になっています。4階では、存分に写真を撮っていただきたいので、巨大フォトスポットを2つ用意しました。人気キャラクターのぺろちと、ほめ言葉が降っているような壁で楽しんでもらおうと作ったものです。アイディア次第でおもしろい写真も撮れるので、ぜひSNSでシェアしてほしいですね。

ーーほめ言葉というのがおもしろいですね。

パントビスコ: 以前、LINEスタンプで同じようなものを出したのですが、思った以上にダウンロードされたんです。SNSを使ってほめたり、ほめられたりすることを気持ちよく感じるんだということがわかったので、それをリアルに体感できるように作りました(笑)。

人間関係のすれ違いやギスギスした部分はできたら解消したほうがいいし、円満に過ごすことが1番いいですよね。人間関係のなかで、ポジティブな言葉を発信しあうことが大事ですよねという思いも込められています。

――とはいえ、ほめすぎたほめ言葉には少し毒も……。そこにパントビスコさんらしさを感じます。

パントビスコ: 過度に褒めすぎるとバカにされてるんじゃないかと感じる人もいます。どう感じるかは、その人次第。「ファビュラス」と言われて素直にうれしいと感じる人もいれば、なんだよと感じる人もいる。実は、これは私の作品全てにおいて、言えることなんです。

「100%受け取ってください」ではなくて、余白を残したうえで、「残りはみなさんが考えていいですよ」という部分。そこが「〇〇な芸術祭」の「〇〇」にかかっています。それぞれが作品の意味を勝手に考えていい。

telling, の人気連載「返り討ちかるた」の展示。本邦初公開の新作も!

作品の価値は、共感してもらうことで高まる

――会場にも新作が展示されている「返り討ちかるた」には、世相がダイレクトに表されています。「返り討ちかるた」を通して伝えたいことや読者への思いを教えてください。

パントビスコ: 日頃から私は結構ものを言いたがりです。でもクリエイターなので、「これってどうなんだろう」と思うことを、作品にマイルドにして落とし込むことができます。みなさんが日々感じるイライラ、モヤモヤなど行き場のない気持ちを和らげられたらいいなと思いながら、作品を描いています。

つまり、返り討ちを実践してほしいワケではなく、同じ気持ちなったり、こんなことを言ってやりたかったと思ってくれたりしたら、私の作品の価値が出てくると思うのです。

だって、返り討ちかるたをそのまま実践したら、大半は怒られるし、人間関係を悪化させてしまいますよね(笑)。

――「返り討ちかるた」は恋愛、仕事、家族関係の3つが大きなテーマになっています。連載を始めた頃と今とで、変化を感じますか?

パントビスコ: 2020年始めにコロナの感染が広まり、以前より人間関係がより窮屈になったと感じます。物理的距離が離れた分、SNSやネットがあれば、いつでもどこでも会話も通話もでき、よりバーチャルな時間が増えました。

でも、それで追い詰められている人も多いのではないでしょうか。そんなテーマが増えたと感じます。現実ではできないけれど、イラストの中で返り討ちをして気持ちが落ち着くと言ってもらえたらうれしいですね。

――ぱっと読めて、心がすかっとするのも「返り討ちかるた」の特徴ですね。

パントビスコ: 私もそうなのですが、長文を読むとエネルギーを使ってしまうと感じる人も多いのでは。「返り討ちかるた」の発想の起点は、ぱっと見てわかる作品を作りたいという思い。私にはSNSで培った見せ方のノウハウがあるので、それをいかしています。1分でさくっと読める。私の連載のなかでも、クリック数が多いというデータもあり、共感してくれたり、興味を持ってくれる人が多いのはうれしいですね。

今回の裏テーマは、「SNSで作品を共有すること」

――会場内で、パントビスコさんが一番見てほしい作品はどれですか?

パントビスコ: 一番見てほしいのは、「返り討ちかるた」はもちろんですが、4階のフォトスポットでしょうか。いっしょにたくさん写真を撮ってほしいですね。

あと、3階はすごくバラエティーに富んでいて、作品も多いのですが、意外と見落としがちなのがタイトルをプリントしたエントランスバナーです。
ただの飾りのように思われていますが、SNSでいいね!がたくさんついた作品を私が厳選しました。

――作品が凝縮されているので、写真に撮って家でじっくり見るのもいいですね。

パントビスコ: ありですね。私がこれまでに描いた約1万点の作品の中から厳選して選んだ150作品を配置しています。作品のなかには、50万いいね!がついたものもあるので、総いいね!数は500万を超えるのでは。

感染者数が減ったとはいえ、コロナ禍でもあり、会場に来たいけれど来られない人もたくさんいます。今回、この会場に来ることができる方は、作品を写真に撮って、みんなに拡散して、よろこびを共有してほしいです。まだまだ人の多い原宿に行くのは怖いという人もいて当然なので。企画の段階から、写真をSNSにアップしたり、友達にLINEを送ったり、作品を共有することが今回の裏テーマになっているんです。

――実際にさまざまな方がSNSに写真を共有しています。パントビスコさんご自身が実際にそれを見て、新たな発見はありましたか?

パントビスコ: 今回は思った以上に、新しく描いた、文字がないポップアート風の作品をアップしてくださる方が多いと感じました。そういう意味では、これまでは言葉を武器にしていたものの、キャラクターだったり、ビジュアルだけだったりしても伝えることができると確信しました。

最近、アートに興味を持つ方が増えた気がします。そんな今だからこそ、私も新しいものを仕掛けていきたいと思っています。実はこれから、文字のないイラスト絵画作品などのアート活動にスイッチしていこうと考えていたところです。これから、ますます言葉がそぎ落とされていく可能性があるかもしれません。

パントビスコ×東急プラザ表参道原宿「少し〇〇な芸術祭」

期間:2021年10月15日(金)~ 11 月18日(⽊)
時間:11:00~20:00
※状況により開催期間、開場時間が予告なく変更される場合があります
※施設の営業時間に準じます
場所:東急プラザ表参道原宿
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telling, 編集長。女性誌編集、WEBディレクター、PR、フリーランス編集・ライターを経て、2020年3月より現職。年間70回以上コンサートに通うクラオタ。国内外のコレクションをチェックするのも好き。美容に命とお金をかけている。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。