三吉彩花さん「人生観に大きな変化があったのは20歳の頃。今は焦らず自分のペースでひとつひとつ大切に丁寧にやっていきたい」

ふたりの自立した女性のルームシェア生活を舞台に、妊娠、出産、キャリアなど女性が直面するさまざまなターニングポイントを美しい映像で描いた映画『Daughters(ドーターズ)』(9/18より全国順次公開)。主演のひとりをつとめる女優の三吉彩花さん(24)に、ご自身の友情の捉え方や、30代に向けての思いをうかがいました。

「ただいま〜」と現場へ入るぐらい、自然に

小春(三吉彩花)と彩乃(阿部純子)は、東京・中目黒でルームシェアをしながら、仕事もプライベートも充実し自立した暮らしを送っています。その暮らしを一変させたのが、親友の妊娠とシングルマザーという選択。女性の揺れ動く気持ちを繊細かつナチュラルに切り取った映画『Daughters』で、主役のひとり・小春を演じた三吉彩花さん自身は「私と親友の関係は、周りが驚くほどドライ」と語ります。

――マンションの1室をシェアする女性たちを演じるにあたって、阿部純子さんとはどのような関係を築いていきましたか?

三吉彩花さん(以下、三吉): 撮影の前の衣装合わせも、作品の舞台となるシェアハウスで行いました。台本読みなどもすべてあの部屋で。
クランクインする前に一度、ふたりきりでご飯を買ってきて、半日ほどお部屋で過ごしたのはとても大切な時間になりました。
何気ない話をしたり、ゴロゴロしたり、本当の自分たちの家のように時間を共有することで、お互いの人間性を知ることができました。
ルームシェアの設定なので、部屋も家具も使い慣れた感じを出すのも大事ですが、多くの時間をあの部屋で過ごせたので、自然と身体に染みついていって。
クランクアップするころには、自宅のように「ただいま〜」と現場を訪れるようになっていました。

(C) 「Daughters」製作委員会

――彩乃に突然の妊娠を告白された小春。気持ちの揺れが大きい役どころでしたがどのように演じましたか?

三吉: 今回の作品ではポジティブな意味で「役作り」というものをほとんどしていないんです。とにかく自然体でした。
逆に、彩乃の方が妊娠・出産して家族ができてという、阿部さん自身が経験したことのないことをリアルに演じなくてはいけないため、現場でも丁寧に役と向き合っていました。
私は横でずっと見守りながら、小春として彩乃のことを心配しているのか、私自身として阿部さんのことを心配しているのか、よくわからないような感覚になっていったくらい。
ですが、それぐらい「役」と自分の感覚がどんどん近くなっていって、悩みながら生まれた彩乃という役を受け止めていたら、自然と小春ができていったという感じです。

親友の人生は尊重したい

――もし、実際に三吉さんの親友が劇中のように突然の妊娠とシングルマザーへの決意を告白したらどうされますか?

三吉: それはもう、本人が決めたことなので「大変だったら言ってね」とさらっと言うくらいかなと思います。劇中の小春みたいに感情的になったり、経緯を根掘り葉掘り聞いたりもしないと思いますね。

――いい意味でドライな関係性なんですね!

三吉: 私にも幼い頃からの親友がいるのですが、その関係性は端からみるとすごく変わっていると言われることがあるんです。
簡単に言うと「親友だからといって、干渉しすぎない点」を不思議がられます。
お互いの全てを知っていることが重要なのではなくて、お互いの幸せを心から願い合う関係というのが私には合っていると感じます。
そこに「こうあってほしい」「この子はこうでいてほしい」みたいな、自分たちの欲はいらないんです。

――相手が相手らしくいてくれることが大事、ということでしょうか。

三吉: もしかすると端から見るとドライな友情関係に見えるかもしれません。彼女とは10年以上の付き合いですが、お互いリアルタイムで全てのことを報告しているわけではありません。その子が誰といようと、どこへ行こうと嫉妬することもなく、彼女が楽しく過ごしていればそれでいいと思っています。
極端な話「どうでもいい」とも言えちゃうくらい(笑)。ですが、悩んだ時には相談するし、助けて欲しい時には気づいたらお互いに寄り添いあっているような関係です。
相手の全てを知りすぎていると、だんだんそれが執着に変わっていく感じが私にとっては苦しいので、ある程度の距離感がほしいです。

(C) 「Daughters」製作委員会

30代に向けて、怖さはありません

――年齢を重ねていくうちに、結婚や出産、キャリアチェンジなど、さまざまなライフイベントを迎えます。友人と比べて、どこか「取り残された」気分になることもありますよね。劇中のふたりのように、三吉さんも葛藤を抱えることはありますか?

三吉: 悩むことはもちろんあります。私にとってはここ3年くらいでしょうか。周りの人たちとキャリアのスピードに差が出てきたり、違う道に進む人がいたりというタイミングで、悩みを抱くこともありました。

ただ最近は、あまり他の人のことを気にしないようになりました。比較すると気になってしまって、自分がどんどん置いていかれているような気持ちになるもの。会社員の方もきっと同じだと思いますが、同時期に入ったのに、昇格のペースが違うとか、評価が違うとか……。私の方がはじめはできていたのに……と焦ることもありますよね。
私はあまりそういう感情はない方だと思っていましたが、それでもやっぱりジェラシーを感じたりするんだなぁと、ここ3年間ぐらいで気づいて。ですが、それはすごく新鮮な「発見」でもありました。

焦ってもいいことはないと思います。花開くのが早い方がいいという仕事も早さが重要ではないという仕事もあるので一概には言えませんが。
私自身はこの仕事でいろいろな方に出会って、今は自分のペースでひとつひとつ大切に丁寧にやっていくことが、「花開くスピード」よりも大事だと思うようになりました。
そこはあまり悩まないようにしようと意識的に考えるようにしています。
気にしてもしょうがないですからね。

――30代に向けて、怖さのようなものはあったりしますか?

三吉: ないです! はやく30代になりたい! 年上の知人が口を揃えて「20代より30代の方が楽しいよ!」と言っているので、とても楽しみです。
20代の今は、がむしゃらにがんばっているイメージですが、30代になったらもっと自分の行く道を自分で選択して、いいと思ったものをクリエイティブできるようになっていくんじゃないかと想像して、ワクワクしています。

20歳の時に、自分の仕事観というか、人生観がすごく変わって、より自分はどうありたいかを考えていくようになりました。
お仕事をする上で、たくさんのクリエーターや監督、プロフェッショナルな方々とお会いしているので、そういう人と人とのつながりに感動をするようになりました。

新しい作品に出会うたびにときめいていますし、これからもっとモデルや女優としてだけでなく、表現者としていろいろな可能性を冒険してみたいという気持ちが、ふくらんでいます。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。